神社の真向かいに住んでいた時の話(不思議だが怖くない話)
子どもの頃、稲荷神社の道路を挟んで真向かいに5年ほど住んでいました。
家は平屋の2軒長屋で、となりには大家さんが住んでいました。
道路側の部屋が居間にあたり、窓の正面には神社の鳥居がありました。
ここで、怪奇現象の数々でも披露できればよかったのですが、5年住んでみても、特に怖い思いをしたことはありません。
が、ただ一度だけ、なんだかよくわからない出来事がありました。
我が家がこの物件に越して来たときすでに、この長屋は築30年近くかもしくはそれ以上経っており、正直きれいとは言えませんでした。目の前の道路は、それほど広くないにもかかわらず、トラックの抜け道になっており、特に大型車が通ると、ガラスの扉や食器棚の食器がガタガタ鳴るくらいの揺れをいつも感じていました。
そんな我が家の玄関はちょうどこんな感じ(ネットの拾い画像です)。
木枠ですりガラス。この画像には左側に白っぽい小さなチャイムのボタンがついていますが、我が家にはチャイムがありませんでした。
なんだかよくわからない出来事とは、このチャイムにまつわる話です。
引っ越してきた当時、我が家には玄関チャイムがついていなかったのですが、大型車が通ると常に玄関がガタガタ鳴っていたため、訪問者がノックをしても、車の通った音と聞き分けられず、居留守状態になってしまうことが頻発したため、引っ越して1年ほど経った時、満を持して写真のような有線のチャイムを取り付けました。
当時(約30年前)は公共料金の集金や、母の友人の来客などが多かったため、来客チャイムは大いに役立ち、導入は成功したかに思えました。
設置から1週間ほど経ったある日の夜、チャイムが鳴りました。
誰だろうと玄関を見ても、人影がありません。
念のため玄関を開け、廻りを見回してみても、誰かが隠れているような様子もありません。
おかしいなぁと思いつつ、部屋に戻るとまたチャイムが鳴ります。
また見に行っても誰もいない。そして部屋に戻る。
繰り返すこと数分おきに数回。
この時のわたしは、この状況の怖さより、どうしてなのかという原因を突き止めたい衝動が勝っていて、興奮状態に陥っていました。
誰かがいたずらしているのなら、犯人をこの目で見てやりたい
そう思い、
「今日は玄関で寝袋で寝て見張る」
と母に告げると、母は突然血相を変え、なぜか私に対してブチ切れ、チャイムの乾電池を抜いてしましました。
ひとまず電池が抜かれたことでチャイムは鳴りやみ、事件はひと段落しました。
そして数日後の日曜。家で一人で留守番で、暇を持て余した私は「チャイムの謎を解明するには今しかない!」と思い、ブチ切れた母が電池を抜き取ってしまったチャイムに、新しい乾電池を入れなおしてみることにしました。
電池を入れてみると、特に何も起きず、自分でボタンを押して動作確認をすると『押せば鳴る』という正常な動作しか確認できず、どうにか先日の再現をしたい私は、チャイムボタンから室内の本体(音が鳴る)へとつながるコードを押したりねじったり色々としてみましたが音は鳴りません。
「直ったのかも!?」
と思い興味を失った私は、テレビを見始めました。
そして数時間が経過すると突然チャイムが鳴りました。
母が帰ってきました。
その時は忘れていたのですが、その時点で、私が電池を入れなおしたことを母は知りません。当然母の中ではチャイムは通電していない状態という認識なので、帰宅を知らせるためにチャイムのボタンを押してはいなかったのです。
しかしチャイムが鳴りました。私は母がチャイムを鳴らしたのだと思い込んでいましたが、実際は違いました。(後から押していないことを確認した)
帰宅した母に私は、チャイムが直ったことを告げました。
そしてその報告をしている最中にチャイムが鳴りました。
玄関先には誰もいません。
そして今度は、”ピンポンピンポンピンポン”と連続でチャイムが鳴りだしたのです。
すりガラスの玄関扉の内側で、母と私は誰もいない玄関先でチャイムが連続して鳴っているのを呆然と見つめていました。
そんなときでも私の心の中は
怖い<好奇心
であったので、外に出て確かめてみたくなりました。
しかし外に出ようとすると「出なくていい!」と一蹴され
「こんなもの切ってしまえばいいんだ」
と、母は台所から包丁を持ち出し、チャイムのコードを切ってしまったのです。
当然、音は鳴りやみました。
「そこまでしなくても…また電池抜けばよかったんじゃないの」
私がそう言うと、
「うちにはもうチャイムはいらないの!!」
と怒鳴られました。
どうして自分の母は、たかがチャイムの故障ごときで大声で喚き散らすのだろうとうんざりしました。
そこから数年その家に住みましたが、特に変わったことも起こらずでしたが、私がプチ登校拒否を起こしたり、母が家賃を滞納したり(うちは母子家庭)と、まああまり良いことがなかったのも事実です。
大人になってこのことを思い出し、ネットで調べてみたところ
どうやら温度差や虫などに反応し、チャイムの誤作動が起こることはよくあるのだと知りました。
なのでこの出来事は私の中では、母が単に機械の誤作動にブチ切れたエピソードであり、心霊とか不思議というカテゴリーの話ではありませんでした。
そして話は現代に戻り、先日私の一人暮らしの家のチャイムの電池が切れ、音が鳴らないという現象が発生しました。(電池交換ですぐ直った)
偶然にも母が訪ねてきたときにチャイムが鳴らないことが発覚したので、母の前で電池交換をする状況になりました。電池を交換してきちんと音が鳴るかを確認するため、実際にチャイムのボタンを押して動作確認をしていると、母が
「昔もこんなことあったねぇ」
と突然言い出しました。それまですっかり当時のことを忘れていましたが、上記のチャイムエピソードを思い出し、母が包丁で線を切ったのには驚いたという話をすると、
「あぁ、あそこではいろいろあったからねぇ」
と、意味深に言い出しました。
「え、でもあれは機械の故障でしょう?」
と私が言うと、
「あんたには言わなかったけど、あそこの家、チャイム以外にもいろいろあったんだよ」
と言われました。
そんなの初耳だったので、詳しく聞き返すと
「あんたは知らない方がいい」
何度食い下がっても、絶対に詳しくは教えてくれませんでした。
ただ、
「お稲荷さんの、しかも鳥居の正面っていうのはね、よくないってことだよね」
とだけ言い、この話は終わりました。
っていうか、自分から話し振っといてなんだよ!!
って思っているので、母が生きているうちに意地でも”私が知らなくていい話”を聞きだしてやろうと思います。
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