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【商業BL感想】STAY GOLD(4) 秀良子

【旧ブログより】
2019年5月16日 (木)

1-3巻読んでなくてもOK♪
という宣伝文句につられて4巻から読む。

これは平日の昼休みとかに絶対読んだらダメなやつだ!!

ネタバレありでざっくり言うと、ノンケの親友・コウに10年間片思い中だった日高の、片想い卒業=失恋(?)という通過儀礼の話。(ちなみにこのCPはこの作品ではサブCP)

午後から仕事にならない。家に帰って布団をかぶって泣きたくなるやつ。
幸い私は最初は休みの日に読んだから良かったものの、このブログのために昼休みに読み返して今猛烈に後悔しているところ。


”この世界では気持ちの強さなんて何の役にも立たない”

そう言っていた日高が

”何も知らずに100年生きるより これでよかった”

そう言えるようになる素敵さったら。日高いいやつじゃないか。

もちろん強がりかもしれないし、そんな簡単に割り切れるものでもないだろうけれど、君は幸せになれる人だよと言ってやりたい。

私がもしモブおばさんなら、海辺で号泣する日高の隣で日高が引くくらい”もらい号泣”すると思う。

東京の離島に赴任した日高が、田舎の小さいコミュニティでゲイバレせず、周りからの"彼女作らないの?”という善意のプレッシャーを感じながら過ごすのはさぞかし大変だろうと思う。
でも数年後、全て吹っ切れて東京(本土)に戻ってきた時、日高には素敵な相手がきっと現れるとおもう(思いたい)。
願わくばそれがコウであったなら最高なのだろうけれど、おそらくそれはないのかなぁ。
(まだ未完なのでわからない…)

コウは振った側になるのだけれど、10年間思い続けた相手、10年間自分の全てだった相手から振られる喪失感より、10年間思い続けてくれた相手がいなくなる方が、実は地味にしんどかったりするのかもしれない。

日高の気持ちを受け入れてあげられなかった、傷つけてしまった罪悪感。
親友と離れてしまった寂しさ。

もちろんコウだって十分傷ついているはずだけれど、振られた方は意外と吹っ切れるものなので、わだかまりが残るとしたら多分コウの方なのかなぁ。

誰も悪くなくて、”性別というボタンをひとつ掛け違えただけ”(本当にそれだけなのかという疑問は残るが)っていうのがあまりに切ない。


BLの世界では『男が好きなんじゃなくてお前が好き』っていう便利な表現があって、逆に言うと『お前は好きだけど男は好きじゃない』ということになって、どちらも『お前が特別』って言う意味ではいい表現だと思うけれど、よく考えると脆い表現だと思う。別にこの表現が嫌いなわけじゃないので上手く言えないけど、ゲイとノンケの隘路(『俎上の鯉は二度跳ねる』より)という言葉を思い出してしまう。

ここではゲイとノンケの問題になっているけれど、どんなに歩み寄る気持ちがあっても、たとえ男女であっても、越えられない壁はある。

ではその壁は一体何なのかっていうと、社会とか、家族とか、本能とか、理由にできるものはいくらでもあるけれど、本当はそんな壁があるのかどうかも不確かで、結局それは自分の中に自分で勝手に作ったもので、第三者から見れば取り去ることが可能に見えるものだったりする。だからこそ一番厄介なのだろう。

これは日高の通過儀礼のお話で、コウが実際どう思って、日高の気持ちをどう受け止めて、どう悩んで、どう決断してっていう過程の部分の詳細を読者は知らされていない。

事細かく知りたいとは思うけれど、コウが日高に言った

「よりよき可能性のあるほうに賭けた」

という一言に尽きるのかもしれない。

真剣に考え尽くしたからこその答え。

だからこそ日高はコウの選択を受け入れるしかなかったし、読者はただ涙するしかない。

あーもう超いい話じゃないか!!!

何年か後に、このふたりがこのことを、お互い口には出さずとも良い思い出として大切に心にしまって、互いの幸せを祈れるなら最高だし、この先、たとえふたりの間に何も起きないとしても、二人きりの時、ふとした瞬間に流れるエロい雰囲気を想像するとまた最高だし、私の性癖に突き刺さりました。

1-3巻も読みましたが、本編はまだ続いているので完結したらまた感想を書きたいと思います。

コウと日高にも幸せな続きがあったらいいなぁ。

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