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映画「窮鼠はチーズの夢を見る」感想(ネタバレあり)

昨夜、映画「窮鼠はチーズの夢を見る」を見てきた。

きれいな映画だった。

MVみたいだったなぁというのが第一印象。

主役の二人の顔も裸体も、大画面に耐えられるほど美しく、原作の印象とはずいぶん違う空気感ではあったけれど、役者さんのファンが原作を知らずに見たとしてもOKな内容だと思う。

正直言うと、原作を知らずに見たかったなぁと思う。
原作「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」は私にとってのほぼBL初体験の作品だったので特に思い入れが強い。読後、しばらく立ち上がれないほどの印象を残した原作と、今作を比べるのは野暮というものだろう。でも原作を知っている以上、比べずに感想は書けない。

映画の大倉忠義さんが演じる恭一は、一言でいうとゲスそのもので、流されるという言う以前に感情が表に出てこない。(今ヶ瀬に)バレても不倫を続けたりとか、原作では未遂で終わった、たまきちゃん母との面会や婚約してからの別れ話など、本当にひどい。大倉君のクールで美しいお顔でゲスなこと連発されるとゲスさが際立つ。映画の恭一は本当に超クズだと思う。

この映画にはモノローグがない。
水城せとなの紡ぐ、容赦なく読者の心を抉ってくるセリフの応酬も、なつきと今ヶ瀬の対決場面以外ほとんどない。あくまでも映像で心情を描こうとしている。カールスバーグのくだりとか、ダイニングテーブルが増えてたりとか、要所での小物使いはきちんと押さえられていて、観客が見落としさえしなければ映像だけでわかるように作られている。ただ、原作内での既にその場面での登場人物の心情を知る立場としては、果たして見ている人に恭一の心情が伝わっているのだろうかと不安になりながら見ていた。観客に委ねすぎじゃない?大丈夫?という感じだった。

あぁ、原作読まないで見たかった…(2回目)

だって、映画だとたまきちゃんはただただゲイの痴話げんかに巻き込まれて傷つけられたかわいそうな被害者(しかも婚約までしている)だし、夏生も掘り下げがなかったのでただの気の強い女にみえてしまう。まあ、恭一のことを理解できているのは今ヶ瀬だけっていうのを強調したかったのかもしれないけれど、BLにおいて女は掘り下げる必要なしっていうような割と古めの価値観を持ち込まれたみたいに感じて残念。たまき実家の棚直したり、乳首あてゲームに割く時間があるくらいなら、女性たちと恭一の関係をもっと丁寧に描いても良かったのではと思う。

あと、ラストシーンは原作とは違う。私は原作のラストが好きだったので、たまきちゃんにではなく、今ヶ瀬に指輪を買ってあげて欲しかった。
ほんと、映画のたまきちゃんはかわいそう。

監督には、原作がどう見えたのだろう。あの原作を読んだ上で、きれいで切ない話として撮ろうと思ったのだろうか。それとも、きれいな男がじゃれあったり、裸で絡み合っているのを女性は見たいんだろう。って思って撮ったのだとしたら、なめたことしてくれたなと思ってしまう。こういう感じで撮りたいのであれば、そういう感じの名作はいくらでもあるのだから、なぜそちらを選ばなかったのだろう。どうしてこの原作を選んだのだろう。

原作を知らなければ、面白かったと思う。
主役の二人はきれいだし、ラブシーンはたっぷり割とリアルだし、ちゃんとリバしてるし。

好きとか嫌いとかうまく言えないけど、なんだか残念だった。期待値が高すぎたのかな。
ただ、原作未読の方にはお勧めできる。
観て損はないと思う。

私も、きっと何回か見ると良さがわかってくるのかな。
でも今はあら捜ししてしまいそうなのでやめておこうと思う。

最後に、成田凌くんの今ヶ瀬(ストーカー)は、根暗の小動物みたいでかわいかった。


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