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第1回 Tos.study結果報告「摂食嚥下障害とカルテの記録」

こんにちは奥住啓祐です。

ちょっと時間がたってしまいましたが第1回 Tos.studyの結果を公開したいと思います。

T(think)o(output)s(Share)の略でTos.studyでした。

LT大会や今後行っていくオンラインでの症例検討会。または口腔機能探求部など、いきなりオンライン上でのアウトプットに抵抗を感じる方にも、自分の意見をまとめてアウトプットして頂き、皆さんのアイディアをシェアする目的で始めました。


アウトプット学習





言語聴覚士オンライン今後の予定
10月24日   第3回 口腔機能探求部(オーラルハンドリング)
・10月31日 第3回 口腔機能探求部(補講)
11月7日  第3回LT大会(発表エントリー募集中)





第1回のテーマは「摂食嚥下障害とカルテの記録」でした。

エピソード:ある日、あなたは新人STのAさんが「嚥下調整食を練習した後、カルテに摂取量だけ記載」しているのを見つけました。


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STマガジンのカルテの書き方特集でもカルテを書く意義を皆さんと共有しました。



今回は「摂取量のみカルテに記載していた新人さん」の事例を使って、皆さんにいくつか考えて頂きました。

新しい試みでしたが、各設問に対して、様々な視点からのアイディアを投稿頂きありがとうございました。早速、頂いたアイディアを一緒にみていきましょう。




【回答が間に合わなかった方へ】
ぜひ下記のリンクから各設問に対するご自分の意見を投稿されてから、以下のまとめをご覧ください(所要時間:5分程)。
https://forms.gle/B9XKpno93B1wRpha9





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問1:今回の記録内容は、今後どの様な問題に繋がる可能性があると考えますか?


さて、最初の質問は「嚥下調整食を練習した後、カルテに摂取量だけ記載」したことによる「想定される将来のリスク」についてでした。

もしかしたら事例の新人さんは、自分がカルテを書いているときに、そのことが将来どのようなリスクに繋がるか分からなかったのかもしれません。

まずは皆さんから頂いたアイディアを集計し、回答頻度の高かった単語を出してみます。

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将来のリスクとして画像中央に大きく「誤嚥」と表示されています。細かい内容まではこの画像から分かりませんが、皆さんが考えられた「将来のリスク」がこの一枚からも想像できますね。

次に単語同士の関係をつなげていきます。一緒に出現する頻度が高い単語同士でグループ分けすると、もう少し内容の詳細が見えてきます。

共起

右下は「病態の経時的な変化がわからない」という解答が複数あったことから同じグループに分けられたと考えます。

「リハビリ」「返礼」というグループもありますね。誤嚥性肺炎のみでなく、カルテの記載不足が原因で返礼の可能性が生じることを指摘して頂いた方も複数いらっしゃいました。

画像の左にあるように「プロセス」や「経過」が分からないという意見もありました。

日々積み重なっていく「カルテなどの記録」。なぜそれらの記録が必要なのか、そしてどの様な記録内容が必要なのか。想定される様々な将来のリスクを共有することで、記録の重要性が理解できる新人さんもいるでしょう。

【実際に頂いたアイディア】
・何らかの所見の有無、誤嚥徴候の有無の記載なしでは、誤嚥性肺炎発症時のリスク回避が困難。
・他STや看護師等、今後患者の食事場面に関わるであろう人達が、どのような設定であれば安全に食べられるのか把握できなくなる。
・問題点、経時的変化が分からず、病態変化した際の対策が曖昧になってしまう可能性がある。

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問2:食事摂取量以外にどの様な内容をカルテに記録すべきでしょう。


皆さんのおかげで、生じうるリスクを新人のAさんと共有できました。それでは実際に「摂取量」以外にどの様な内容を記録すべきか考えて頂きました。

早速、皆さんのご意見をみていきましょう。

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先ほどと同様、回答頻度が高い単語が大きく表示されています。この結果は皆さんも日頃カルテに書かれているものが多いのではないでしょうか。

大きくは今回の目的食事の際の条件(食形態、ポジショニングなど)評価内容今後の方針といったカテゴリーに分けられそうです。

一つ一つの項目に関して、記載すべき理由まで含めて新人さんと共有したいですね。

ちなみに中央に大きく「ムセ」とありますが、「どのような食形態でむせたか」「どのようにむせたか」といったプロセスの記録が重要というご意見も頂きました。

【実際に頂いたアイディア】
・その時に設定したポジショニングや嚥下調整食などの条件に対する効果判定、安全性はどうだったのか。それを踏まえて次回の条件設定に繋げていく。
・食欲、むせの有無(むせた形態、タイミング、疲労度、姿勢)と自分の考察、対応策。

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問3:新人さんの立場で考えてみましょう:なぜこのような記録になったのでしょう。


これまで「嚥下調整食を練習した後、カルテに摂取量だけ記載」したことによる将来のリスク、記載すべき事項を共有してきました。

しかし、今後他の職員も含めて同じような課題が繰り返される可能性もあるでしょう。その度に将来のリスクや記載すべき事項を共有するのも良いのですが、もしかしたら根本的な原因が他にある可能性もあります。

そこで、今回の事例に至ったそもそもの原因は何だったのか、皆さんに考えて頂きました。

実は、今回一番解答のバラツキが大きかったのが問3でした。

画像4

問3に関しては大きく本人の課題か組織の課題かに分かれていました。。

・本人の課題(認識不足・経験不足)
・組織の課題(悪い慣習・教育システムの問題・残業時間過多)

最初の画像に「認識不足」と大きく表示されていたように、新人さん自身の認識不足を指摘されている方は多かったです。

一方で

・「食事摂取量」が、所属しているチームの中で食事の良し悪しを決める判断基準になってしまっている。
・先輩などのカルテの書き方をマネした。
・教える人がいない。

など、チームとしての課題教育システムの課題であると捉えた方も複数いらっしゃいました。

「安定している状態が続いていた」「そもそもSTが入る必要性が低い、お元気な方であった」といったご意見もありました。

現場で生じた問題の背景が違えば「解決策」も変わってきます。もちろん、職場における自分の立場など、その時の状況によっても、選択できる解決策は変わってくるでしょう。

いずれにせよ日々の臨床と同様、現場で生じている課題の原因分析を丁寧に行う必要がありますね。

問4:あなただったらどの様な解決策を提案しますか。

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それでは解決策をみてみましょう。

最も多かったアイディアは、摂食嚥下の記録のフォーマット、ひな型を作るというというものでした。

僕自身、データ分析を行うようになり、記録内容の統一がとても大切だと分かるようになりました。

たとえば、実際にカルテに記載している単語をセラピスト毎に今回のような1枚の画像として可視化して比較すると、セラピストによる記録内容の違いや傾向が分かって面白いかもしれませんね。

その他にも「リハビリ実施の目標や目的などを見直す」というアイディアも頂きました。

問3でもお伝えしたように、効果的な解決策はそもそもの「原因」によって変わってきます。

【実際に頂いたアイディア】
・5期モデルに沿った問題点抽出等の嚥下訓練記録用フォーマットの作成。
・臨床場面とカルテ内容の両方を見てもらう。
・まずは何のためにリハビリ実施したのか、今後の目標をどこに置いているのかを確認。

取組み

アメリカSLPからもアイディアを

さて、Tos.study は皆さんがアウトプットして頂いたアイディアをシェアすることで学びが生まれます。

もともと1人職場や少人数での職場が多い言語聴覚士にとって、様々な言語聴覚士のアイディアを知れることには価値があるという考えがベースになっています。

日頃、摂食嚥下障害のある方を臨床では見ていないけどアイディアを出してみましたというメッセージはとても嬉しかったです。

さて、折角貴重なアイディアを提供して頂いたので、言語聴覚士オンラインとしても、もっと皆さんに還元したい。

2か月に1度開催しているLT大会ではアメリカやタイの言語聴覚士さんにも参加して頂いていますが、オンラインという環境だからこそ世界の言語聴覚士と繋がるために日々試行錯誤しています。

そこでTos.studyでもアメリカで活動されているSLPの方々からもアイディアを募集したいと考えています。

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アメリカSLPより頂いた貴重なご意見。原文と合わせて、こちらで翻訳した内容を記載します。


設問1:What kind of problems do you think these records could lead to in the future?

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