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自分の人生をリスタートさせてくれた『本』というものに恩返しをしたい。

「象と小枝」という話をご存知でしょうか。インドでは子象が逃げ出さないように、太い木につないでおくのだそうです。子象がどんなに暴れても木はびくともしない。そのうちに子象はもう逃げられないと諦めてしまう。すると、象が大きくなっても、また、つないだ先がどんな小枝になったとしても、もう象は逃げ出そうとすらしなくなる、という話です。

この話を聞くと、自分が双子の子育てをしていた時のことを思い出します。私は若い頃から、妊娠出産しても働き続けたいと思っていました。フリーのカメラマンとして手に職をつけたのも、育児をしながらでも仕事ができると思ったことも理由のひとつです。しかし、妊娠したのが双子だと判明してからは、全てが想定外になっていきました。妊娠中はほとんど寝たきり。出産後、身内の不幸も重なり、ほぼワンオペで双子子育てをすることになり、仕事どころではありません。仕事をしたいと思い、もがいてはみるものの、子供の発熱、怪我など、トラブルの連続・・・。子供が小学校にあがる頃には「私はもう社会復帰はできないんだ」と、すっかり諦めた象になってました。

そんな私に、あなたが縛られているのは小枝だよ、と教えてくれたのが一冊の本でした。和田裕美さんの『こうして私は世界No.2セールスウーマンになった』(ダイヤモンド社)という本。元々雑誌の連載を持っていた和田さんに興味があったせいで、古本屋で手に取った本でした。この本は、実家に帰るお金すらないアパレル会社OLの20代の和田さんが、ブリタニカという英語教材を書店で販売する仕事で世界第二位の営業となるまでを物語風に書いたビジネス書です。何もない追い詰められた状況から、目標に期限を決めて前に向かっていくその姿に私はすっかり感化されました。

私が繋がれているのは小枝かもしれない。心がムクっと動いた瞬間でした。

そんなある朝、子供を学校に送り出して一息ついていると、ラジオから習い事のマッチングサイトの話が流れてきました。習いたい人とコーチと呼ばれるその道のプロをマッチングして、レッスンをするというサービス。調べるとカメラの分野もあります。これなら、私の知識を使えるかもしれない。丁度和田さんの本を読んだ直後ということもありました。和田さんも、父親から実家に帰ってこいという電話に「3ヶ月だけ頑張らせて!駄目だったら帰るから!」と自分の挑戦に期限をつけてブリタニカの営業の世界に飛び込んだとか。

私もそれにあやかって「3ヶ月で全国1位のコーチになる!」という目標を立てました。3ヶ月頑張って結果が出なかったら諦める。本気でそう決めました。3ヶ月で1位になるためにはどうしたら良いのか。逆算して考えて、ブログを書いたり、申し込んでくれた生徒さんには全力で向かい合いました。

果たしてコーチデビューから3か月後。私は全国で1位の成績を取ることができました。夕方のテレビ番組の写真を教えてもらおう、というコーナーに2回出演させてもらえたり、半年後には本社でグループレッスンを担当させてもらえ、1年後には写真教室を立ち上げることもできました。つい3ヶ月前までは、社会復帰はもうできないと自分の未来に夢を持てなかった私ですが、一冊の本との出会いで、ここまで道を開くことができたのです。

本というのは不思議です。この10万字という文字量を自分の中に取り込むことで、時として読んだ人の人生を根底から書き換えることができるからです。小枝に結ばれた象に「あなたが結び付けられているのは、ちょっと引っ張ればすぐに抜ける枝だよ」と気づかせてくれるのが本なのだと思います。

「情報」という意味で捉えると、ネット上にも情報は溢れています。調べて出てこない情報を探す方が難しいぐらいです。しかし、ネット上にある数千から1万字ぐらいの文字量を読んでも、知識こそ増えますが自分を根本から変化させる力はない気がします。

私は、本には単なる情報だけでなく、著者が人生で経験した知見、気づきが入っているから、人を変える力があるのだと思っています。情報だけでは人は動かせません。著者が悩み、試し、失敗し、その先にやっと見つけた知見や気付きだけが、誰かの壁を壊し新しい世界を見せる起爆剤になれるのだと思うのです。

私は今、誰もが写真を撮ることが楽しめる本を書きたいと思っています。2年半週末に写真学校に通った経験、広告カメラマンのアシスタントになった時に、その知識が全く役に立たなかった時の衝撃、アシスタンとして毎日フラフラになりながら、怒られ、悔し涙を流した経験。そこで気づいたプロとアマの差。自分の撮影現場での知見。そして、今まで3000人以上の方を教えてきたノウハウとそこで気づいた素人がやりがちなミスや悩み・・・。そんなことをベースにして、思ったように写真が撮れないと思っている人の壁を取り払ってあげたい。

私が和田さんの本を読んで、自分が結び付けられた先にあったのは小枝だと気がついたように、私も誰かの「写真をうまく撮れない」というのが「小枝」ぐらいの思い込みだということを教えてあげたい。そして、その先にあるワクワクした世界を見せてあげたい。

これが私の挑戦。1年以内には実現させる。頑張る。


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