詩:ぬるい光線
生活が水のないプールならば
僕達はそこに浮かぶ一つの火だ
そういったあなたが
私の口の中にひとすじの唾液を落として
寂しそうに微笑んでいるその最中に
部屋に浮かぶ半透明の蜘蛛は
見えない糸を手繰り寄せながら
音もなく上昇していく
彼もしくは彼女が
願っても永遠に辿り着けない穏やかな春の空を
氷でできた雲が儚くも薄く覆って
そこを飛行機が通り抜けたとき
機体が氷をはじいて
さーっと、音がした
眠りこけたあなたは
親とはぐれた子鹿みたいなさみしい横顔をしていて
枕元に置かれた眼鏡のレンズに反射した外の光が
緑色に燃えていた
私はそれをまるで蛍火のようだと思いながら
いつまでも
いつまでもじっと見つめていた
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