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詩集:どこにもいけない

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行き場もなく日々わだかまる言葉達は、詩の中以外はどこにも行けない
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2019年10月の記事一覧

詩:ふゆのひかり

詩:ふゆのひかり

沈黙。

ためいき。

寝息。

夜。

空白。

瞬き。

地上。

くるしみ。

涙。

それから。

暗闇と

暗闇のあいだ

てのひらの中で

ふるえ朽ちかける

リュウゼツラン

塩の結晶のようだった

幾千もの星たち

そこまでには

たくさんの距離があって 

届くまでに

全てが消えてしまって

望むものは結局

手に入らない

それでもあなたは 

無垢なる光であり

柔らかな毛

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詩:ついによこたわる木

詩:ついによこたわる木

ついに横たわる老木

虚ろな目を開いて

何を見るともなく見る

無気力は墨を染み込ませたように広がって

今に始まったことではないと呟く

冷たい地面に耳をつけていると

なつかしいほど遠くから

あたたかい足音が響いてくる

眠れぬ夜は幾日と続いて

白い花びらがちらちらと

なぐさめのように降りそそいだ

ついに横たわる老木

小鳥はさえずり

太陽がのぼり

雲がながれて

恋人たちにも別

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