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青い毛布

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生きているうちの中で最も感情が揺れるその瞬間 その一瞬を、小説と言う器の中に閉じ込めて永遠にしました。
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#小説

青い毛布(3)

青い毛布(3)

ある朝、宮島信吾は会社に行く途中、駅のホームで丸々と肥った男に突然声をかけられた。

見覚えのない相手の顔を、判然としないままにしばらく見つめ続けていると、相手は親しげに「高校の…」とか「陸上部が…」などの身に覚えのある話をし始めて、そしてその口から共通の友人の名前が幾つか挙がった所で、ようやく信吾は目の前の男が高校時代の同級生であり、陸上部の同期である事に気が付いた。

 いくら声が変わらないと

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