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皆本夏樹「『活動家』でない『ただの市民』でも、政治的な活動はできるとわかった」|自分の力を信じる、 政治に参加する(仕事文脈 vol.21)

 2021年8月6日、小田急線の電車内で「幸せそうな女性を殺したい」という男が大学生の女性を刺した。性別を理由に女性が殺される「フェミサイド」の未遂事件。ふざけんなと思った。私はただの大学生で、デモに参加したことも、プラカードを掲げたこともなかった。それでも何か行動しなければならないと思った。そこで駅に「#StopFemicides」と書いたポストイットを貼りに行った。Change.org で署名キャンペーンも立ち上げた(※)。同じ頃、石川優実さんと菱山南帆子さんが企画した「#小田急フェミサイドに抗議します」デモのことを知った。

 私は最初、行くかどうか迷った。オンラインでさえ声を上げれば必ずクソリプが来るような社会で、誰が見ているかわからない場所に自分の身体で行って主張することが、怖くないわけがない。だけど一方で、民主主義の社会で市民がデモをすることは当たり前のはずだとも思った。

 ヨーロッパ留学中の2020年にBlack Lives Matter 運動が広まったとき、遠巻きに見に行ったデモで、私と同じような普通の大学生が友達同士でプラカードを持って声を上げていたのを思い出した。公園に散歩に行くように近所の家族連れが来ていたのも見た。政治的な意思を表明することは「ただの大学生」や「ただの市民」にとって、生活の一部みたいだった。むしろ日本でデモに対するハードルがこんなに高いのは、それだけ民主主義が制限されているってことなんだろう。

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