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【座談会】「右傾化した父を持っている」について問い続ける/前編(仕事文脈vol.22)

『ネット右翼になった父』(鈴木大介、講談社、2023)や『シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(古谷経衡、中央公論新社、2023)といった書籍が相次いで刊行され、周囲でも「差別的な発言が目立つようになった」「ネットで得た真偽不明な情報に影響を受けているようだ」など、父親の発言や行為に違和感を感じ始めた……という声が頻繁に聞こえてきます。論破とも近い印象の「ネトウヨ」といった言葉がはらむ複雑さにどう向き合うか、父と子だからできることはあるのかなど、3名の方と意見を交換しました。(取材・文:浪花朱音)

Aさん:30代半ば。デザイナー。
Bさん:40代前半。出版関係。
Cさん:50代前半。個人書店を経営。

いつ頃、気になるようになったのか

A 父の右傾化が気になり出したのは、コロナ以降だったと思います。コロナ対策の話から自然と政治の話にシフトしていったのですが、話の中で保守的な気配を感じたり、中国や韓国を批判して日本をたてるような言い方が増えたりしたんですね。それに対して「そんなことはないんじゃない?」とわたしが話すと激怒する…… というやり取りが増えてきたなと。わたしも知識を入れないと会話ができないので調べながら話すんですけど、父はYouTubeから情報を得ているようで。赤字で「実は◯◯だった!」みたいなサムネがいっぱい並んだサジェスト画面を見てしまった時、父はこういうのを見て話しているんだろうなって気づきました。

B 僕はたしか5年以上前ですね。父親から嫌韓本を渡されて。嫌だって言ったのに置いていかれたので、結局半年後ぐらいに捨てたんですけど。今思えば何が書いてあるのか知らないので、読むべきだったかなとちょっと思いました。帰省するたびに父の書斎をちらっと覗くんですけど、どんどん嫌韓本と呼ばれる書籍や雑誌が増えていく状況です。厳しいなと思いつつ、実家にも住んでいないのでほとんど会話をしていないですね。

C わたしは実家を離れて30年経つんですが、父は退職してからテレビを見る時間が多くなったようです。ネットはやらないんですけど、主にワイドショーから情報を得て、従軍慰安婦問題から韓国のことを悪く言うようになりました。同じ時期にわたしが韓国カルチャーにハマって旅行や仕事でよく行くようになったのですが、それにもかかわらず悪口を言ってくる。そこで一発喧嘩をしたんですが、父はその2年後に亡くなりました。

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