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編集部座談会 「標準」の外から考える家族と仕事・後編(仕事文脈vol.20)

最近、多様な家族のかたちがどんどん見えるようになってきた。その中で私たちの意識も変わってきたけれど、まだまだ固定観念は根強く、仕事や国の制度の見直しは追いついていない。ケアラー、世帯、夫婦別姓、ステップファミリー、同性婚……家族をめぐるいろいろについて、編集部の宮川真紀、小沼理、浪花朱音が語りました。

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■父方の姓を名乗り続けることへの違和感


浪花 世帯の話で言うと、以前、私が住んでいる市に夫婦の世帯分離の申請をしたんですよ。うちはお互いフリーランスで仕事の会計も別々だし、保険料や税金の支払いが世帯主である夫宛にまとめて来るのが嫌だったので。その時に「夫婦は支え合うものと考えており、それはつまり一つの世帯ということなので分離はできません」と言われたんです。それって、そうした家族観を国以前に自治体が持っているということじゃないかなと思って。

宮川 それは何に基づいて言ってるんだろう? 今の憲法には書かれていないですもんね。

浪花 民法第752条に「夫婦は同居し、互いに扶助しなければならない」と書いてあるそうです。

宮川 え〜!そんな民法が!

浪花 介護費用の負担などの問題が関わってくるので、場合によっては世帯分離できる自治体でも、承認されないケースはあるみたいですが……ただ、それも家族に介護の責任を負わせることにつながっていそう。

小沼 民法にあるとはいえ、なんとなく情緒的で抵抗を感じるなあ。

宮川 家族ってそういうものでしょ? という常識が透けて見えますね。夫婦別姓に頑なに反対している人は、やっぱりこういう家族の結びつきにこだわりがあるのかな。

小沼 同じにしたい人は同じにできるわけで、別にしたい人の選択肢が増えるだけなのになんで駄目なのかなって思うけど……。お二人はどうですか?

宮川 私は結婚して変えたんですけど、というのも結局旧姓も父親の苗字じゃないですか。その時は父親がそんなに好きじゃなかったし、苗字がなくなることにためらいもなく、むしろ新しい名前になってもいいやみたいな。

浪花 私もそれに近いですね。浪花って苗字が好きじゃなかった。

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