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床上げ/ 中岡祐介

四月一九日(日) 本屋の利益

 昨日の夕方から夜にかけて、こんなツイートをした。

ぼくは出版社であるけれど傍で書店を経営し店頭に立つ(実際には座っている)者として窮地に立つ書店にとって真に助けになる3つのことを出版社に対して提案したい。①卸正味を5%以上下げる/②支払いサイトの延長/③直接取引の受付。すぐにでも検討してほしい。とりあえず時限措置でも構わない。

 非常事態宣言が発令されて、大小を問わず、多くの書店が休業を余儀なくされている。営業できている店はかえって売上が上がっているところもあると聞くが、書店は補償の対象ではなく、休業すれば支払いが滞るため、無理に営業しているところもあると推測している。オンラインストアを活用して営業するためには、上の提案、とくに①は絶対に必須なのだ。

 ただでさえ二割ちょっとしか利益がないのに通販をやってアマゾン対抗で送料無料にすると利益はない。いろいろ見ていると一万円以上購入で無料にしているところが多いのだが、仮に一万円売れると粗利は二二〇〇円。発送費で千円、この時点での手残りは一二〇〇円。人件費や地代などを込みで考えたらほぼ赤字だろう。本屋がこんな構造のままでいいわけがない。利益をちゃんとだそうと思ったら諸経費を負担してくれる読者の「善意」に頼るしかない。それじゃおかしい。

 もともと時代に合っていなかった本屋の利益構造は、コロナ禍によってますます狂っている。なぜなら、オンラインショップで本を売ると、ただでさえ少ない粗利を、クレジットカード手数料やらECサイト運営手数料だとか送料だとか、発送資材などで利益をガシガシ持っていかれるのだ。読者がアマゾンではなく本屋を選んでたくさん買ってもらえれば済む問題ではなく、手数料はたいてい売上に比例した歩合で徴収される。根本的に構造が間違っているのだ。

 一方で、出版社がECサイトを始めたことが批判されていたりもする。ぼくはそのことじたいはいいと思う。アマゾンで買われるよりは出版社から直接買ってもらったほうがいい。でも、その前提となるのは、やはり掛率だ。何度も言うが、本屋のECはほとんど儲からない。取次経由で下げるのが無理なら、直接取引でいい。後生だから下げてほしい。「善意」ではなく、ビジネスとして。

中岡祐介(なかおか・ゆうすけ)
1982年、茨城県ひたちなか市生まれ。書店フランチャイズチェーン本部に八年間勤務したのち、自宅のある横浜にて出版社である三輪舎を創業。担当した書籍に『本を贈る』(若松英輔・島田潤一郎ほか)、『ロンドン・ジャングルブック』など。新刊『バウルを探して〈完全版〉』(川内有緒・中川彰)。19年より横浜・妙蓮寺の書店、石堂書店の2階に移転。またその姉妹店として本屋・生活綴方を開業。監修として、選書やイベントの企画・運営をおこなう。


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