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チサ/さようならアーティスト「愛についてわかったこと、または虹の彼方に。」|虹色眼鏡 13(仕事文脈 vol.21)

自転車を壊してしまった。また、だった。チェーンのギアを接続しているアタッチメントがタイヤの軌道よりも内側に入ってしまい、使い物にならなくなってしまった。チェーンを所定の突部にかけ直しても、3度ペダルを回すとだらしなく外れて回転部にぶら下がってしまう。こうなってしまったら器具ごと交換するほかに直す方法はない。終電の過ぎた下北沢で、友人と帰宅する途中のことだった。その日は秋雨前線の影響で深夜から明け方にかけて大雨が予想されていて、パラパラと雨が降り始めていた。度重なる寝不足と物事がうまくいかないフラストレーションもあり、私はかなり参ってしまったので「お手上げだ」と肩をすくめながら西口の踏切近くで大の字になって寝っ転がった。全部がダメになってしまうと私は結構寝っ転がってしまう。風は湿り気を帯びて少し冷たく、昼間の気温に油断して露出した肌をざわつかせた。東京には台風が近づいていた。

今も西側では戦争が続いている。戦争が始まったばかりの頃のショックも時間が経つと和らぎ、そのうち私は個人的なサイズの将来を憂いたり喜んだり、そういうことを繰り返していた。片側の国を応援する政治的な投稿が一時は多くみられたがそれも段々と数が少なくなり、SNSに流れてくるセンセーショナルな視覚情報も目に見えて減った気がする。タイムラインは服や音楽の話題に戻り、もう戦争の話を誰もしなくなった。たくさんの映画が公開されて、たくさんの映画がサブスクから消えたり入荷されたりした。街角には名前の知らないアイドルの広告が張り出され、その間にもたくさんの人間がこの世から消えた。

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