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川名潤「私の七年とギロチン」|政治×行動=仕事∞(仕事文脈 vol.21)

自宅から事務所までの通勤ルートのスタートである渋谷区富ヶ谷の交差点にひとつ。それと、ゴールの宇田川町の細い脇道にひとつ、アスファルトの上にステンシルと白いスプレーを用いて描かれたギロチンがある。ギロチンの絵とともに「END FASCISM」と文字が書かれている。バンクシーと同じ手法で描かれたこの絵と文字がこれ以上似合う場所は、他にちょっと思い当たらない。富ヶ谷と宇田川町を繋ぐ線の途中には、故・安倍晋三私邸があるからだ。歩く道すがら、これをはじめて見つけた時にiPhoneで撮った写真の保存ログを見てみると、二〇二〇年六月とある。たぶん、その前の月には描かれていなかった。

一瞬だけ、これを描いたのは私なんじゃないか、と思った。夢遊病かなにかで、描いたことを覚えていないんだろう。いや、違うか。昼夜逆転の生活をしているから、真っ昼間に人々の往来がある中、寝ぼけながらフラフラ行って描いたとしても、だれかに止められるか通報されるかしているだろう。交番も近い。とすると私じゃないな。いや、描きたい気持ちはあるけれども。あれ? まてよ、この感じ、前にも一度あったな。あれは五年前。そうか、五年もたつのか。その時は「日本国憲法の前文って、書いたの私だっけ?」と思ったのだ。

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