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7/19〜7/24の日記

7月19日(火)
週末開催のBOOK MARKET 2022の会場に事前送付する書籍のピックアップ。前もって、前回(3年前=2019年)の搬入数・売り上げ数を参考にリストを作成し、宮川さんにチェックしてもらった。「お試しセット」なるものは、それだけで1000円ぐらいするサコッシュに、返品などで少し傷みのあるB本を3冊入れて1500円という破格の値段設定だ。中に入れる書籍の組み合わせも、前回を参考に金額的なバラツキがでないようにエクセルで計算して、これも前もってチェックしてもらった数を箱に入れた。結局大きめの箱3つになったので、郵便局に持ち込むのを椋本さんに手伝ってもらう。
新刊『何卒宜しくお願いいたします』の書店さんからの注文がどんどん来ていたので、一覧表に転記をしたり、その数が間違っていないか確認をしたりして来週の発送の準備。

 
7月20日(水)
昨日まとめて販売用書籍を送ったけれど、別途、自分で持参する新刊書籍のカバー写真のA3大パネルを作成した。前に勤めていた出版社ではKinko'sなどの印刷会社にパネルを外注していたので、パネルというのは結構お金がかかるものだと思い込んでいたけれど、タバブックスでは、職場のプリンターで綺麗に印刷してパネルに貼る形式で、それでも結構きれいにできるものだなと感心する。販売書籍のリストを再度チェックして、入れ忘れたものや事務用品などをまとめると大きなカバン2つで結構な量になった。
雑誌『ランバーロール』の紹介記事が『イラストレーター 2022年9月号』(玄光社)に掲載されたので、メディア掲載情報をまとめているファイルにコピーを入れたり、Instagramにポストをしたりした。

先週のお金に関する3冊に引き続き、ジェンダー関連の既刊本3冊の注文書の作成。レイアウトしてもらったものをチェックして、取次へ送った。
雑談回数80回ほどに及ぶ、長かった「雑談本」のためのテープ起こしも残り数本になったので、一覧表を更新し、字数や内容などをチェックしてから、残りのテープ起こしにとりかかる。20分ほどの録音の文字起こしを一気に終わらせた。
 
7月21日(木)
朝、事務所に一人だったので軽く掃除機をかけて、それから書店さんからご注文いただいた書籍を発送した。週末にBOOK MARKET 2022ならびにB&Bさんの10周年イベントがあるので、その前にと思い、書籍別の表に今月の売り上げ数を転記していく。おかげさまで、直接販売のイベントではお買い上げいただく冊数や種類も多いため、イベント後、書籍別の売り上げ数を記入するのに時間がかかる。イベントが終わったらすぐ月末なので粛々と転記を進め、残った時間でタバブックスnet storeからの個人のお客様からの新刊の予約注文の発送準備をする。
 
7月22日(金)
家の近くのバス停から浅草には直行のバスがあり、1時間ぐらいかかるけれども、BOOK MARKET 2022の会場である台東館の真ん前まで楽に移動できる。両側に大きな荷物を抱えて家からバス停に向かう途中、家を出たときには晴れていた空からぽつぽつと、気のせいかなと思うぐらいの雨が落ちはじめ、(手がふさがって傘をさすのに時間がかかるので)早めに折りたたみ傘を出すと、そのとたんにバケツをひっくり返したかのような豪雨になり、雷すら鳴っていた。荷物の中には本も入っていたので濡れていないか不安になったが、包んでいた茶紙のおかげで無事だったよかった。
そうやって乗り込んだバスで、BOOK MARKET 2022の会場へブースの設営に行く。地下から机や椅子を運ぶのが大変なので朝一番で来た方がよいと教えてもらったので10時に着くように向かったが、豪雨の影響でバスが遅れ10分遅れで会場に着くとすでに机が並べられはじめていた。他社さんと協力しながら机や椅子を配置し、それから荷物を待つ間に、両手に抱えてきたパネルなどの荷物をブースに配置した(ヤマト運輸の荷物は朝一番で会場に届けられていて、郵便の荷物は11時過ぎに届いた)。ヤマト運輸で書籍を受け取った他社さんが帰った頃にタバブックスの荷物が来て、お昼過ぎまでかかって大きな机2つのブースに並べた。
会場を出ると朝の豪雨が嘘のような快晴で、地下鉄の駅に行くまでの間、あまりに暑いので、芋ようかんで有名な舟和の「芋ようかんソフトクリーム」を買って食べた。食べ歩きは禁止されているのでお店の軒先で黙って食べる。会社に戻ってこられたのは3時前で、そこから新刊を書店さんに送る準備をする。

7月23日(土)
台東館で3年ぶりのBOOK MARKET開催。お客さんに『仕事文脈』について聞かれて、企画会議のことなどを話すと、面白がって何冊か買ってくださったりした。やはり新刊の『何卒よろしくお願いいたします』がたくさん売れていて、SNSで先行販売を知って、それを目当てにご来場したとおっしゃる人も何人もいた。
そんな風にお客さんがどんどんいらっしゃって対応をしているうちに、3年ほど会っていない出版業界で働く友人たちが、次々と挨拶にサッと立ち寄ってくれたりして嬉しくなる。ちゃんと挨拶できなかった人も多かったけれども、「また近いうちに飲もうね!」という気持ちでいる。

終日一人で店番だったので、午後になってから、マルジナリア書店の小林さんにブースの様子を見てもらうようにお願いして急いでトイレに行き、ついでに生活綴方さんのブースで欲しかった佐々木美佳監督の『タゴール・ソングス』(三輪舎)を買った。私がブースに来て0.5秒ぐらいで本を買ったので、驚いていらっしゃいましたが上記のような事情だったんです。


7月24日(日)
午後から台東館に行って、販売と撤収を手伝った。私が着いた午後3時の時点で、すでに『何卒よろしくお願いいたします』は残り数冊になっており、イベント終了まで残り数分となったときに、やっぱり読んでみたいからとブースに購入に来てくださった方がいてとても嬉しかった。椋本さんとげじまさんが作ってくれた無料配布の冊子もなくなってしまった。
同日に複数の大規模イベントがあり、なかなか貨物用のエレベーターが来ず地下へ机や椅子を撤収できずに困っていたところ、おいしそうで珍しい古来種野菜を販売していたwarmerwarmerさんの小学生のご子息が解決法を考えてくださって、たくさん手伝ってくださり、とても頼もしかった。おしゃべりもできて楽しかったです、ありがとうございました!
2日間、多くの方がマスク着用や手指の消毒などにご協力くださりながらご来場くださり、本を直接見ていただいたりお話ができて、非常に楽しいイベントだった。終了後、他社の営業の人が「来場客に女性が多いと聞いていたので、女性に売れそうな本を考えて持ってきた。確かに女性のお客さんが多いんだけど、手に取るのが歴史とか地理のコアな本が多いんだよね。予想と違ったな」と話していて、たしかに単なるもやもやしたイメージではなく、具体的に顔が見える読者の方から「こんな本を買っていた」「●●社の本も買っていた」「このぐらいの年齢で、誰と来ていた」「こんな服を着ていた」「こんな話をしていて、~に関心があるらしい」等々のたくさんの情報を受け取ることができた気がする。


今週読んだ本


清水晶子『フェミニズムってなんですか?』(文春文庫)

「政治的な手芸部」のバナー展示を見に行った、エトセトラブックスBOOKSHOPさんで購入。

政治的な手芸部のバナー「人権」(展示は7/30まで)


友人知人問わず、たまに「フェミニズムに興味があるんですが、最初に一冊読むなら何がいいですか」と問われて(男性から聞かれることも多い)、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(タバブックス)と答えたこともあったし、ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの』(エトセトラブックス)と答えたこともあった。


でも、そもそも私のフェミニズムの知識も十分ではないので、「なにか……パッと手渡せてわかりやすい本、ないかな……」とずっと思ってきたけれど、ピッタリな本が出たと思う。
 
そもそも雑誌の中では、読み物が充実している『VOGUE』や『ELLE』が好きなので、2016年に『ELLE』が「ネオ・フェミニズム」を打ち出した時はすぐさま購入して「おおおー!」と興奮したけれど(今では「ネオ・フェミニズム」という言葉には警戒感がある)、『VOGUE』での連載が元になった本書『フェミニズムってなんですか?』も非常に読みやすく、かつ情報量が多くてとても勉強になる。

新書という形で、フェミニズムの成立から第四波と言われる現在までの歴史や、例えば婚姻制度の問題などの個々のイシューの現状と問題がザっと俯瞰できるようになっていて、その書き口も簡潔だけれどもとても正確であると感じる。イシューによって対立がある場合にも、それぞれの立場について端的に説明されているので、フェミニズムの多様性や現在進行形の議論の構造についてもよく理解できた。特に私は、議論が起こるようなイシューに対し、周囲の友人に流されて「そちらが正しい方向だよね」と反射的に判断してしまいがちなので、改めて、別の側の主張を読むことで問題の本質はどこにあるんだろうとゆっくり考えることができた。
 
今から十数年前、大学3年生ぐらいのときにちょうどジェンダー学の授業が開講になって、友達と一緒に受けたことを覚えている。その後、仕事後にフェミニズムの勉強会に通っていたときもあったけれども、体系的にフェミニズム理論について学んだわけではないので、例えば「インターセクショナリティ」については大学の授業では当時聞いたことがなかったし、その後も個々のケースで「これってインターセクショナリティだよな」と漠然と思うにとどまり、たとえば黒人女性であれば、女性である差別のほかに黒人であるがゆえの差別にも遭うという風に理解していたので、今さらながら、彼女たちが直面するのがその二つの別々の差別ではなく「黒人女性」に向けられた差別なのだという端的な本書の説明にハッとし、きちんと勉強しようと思った。
 
(2019年に放送されたアニメ「シンプソンズ」のエピソードでも、いつも船長の恰好をしている住民がおもむろに「Yarr, activism means nothing, if it's not intersectional.(インターセクショナルでなければ、アクティビズムは意味がない)」と発言するシーンがあり、運動内におけるインターセクショナリティへの意識と気配りはアメリカではある程度常識になりつつあるのかなと想像する。)

 
そんな風に、現在の事象やイシューについて端的な説明を与えている本書だが、「第四派フェミニズム」については、現在進行形のものであって、こういう目標を掲げてこんな性格を持った運動だったという認識ができるまでは、もう少し時間がかかるだろうとも書いてあった。この本自体が貴重なアーカイブであるため、数十年経ってから「このときはこんな状況だったよね~」と思いながら読み直してみたい。その頃はもう少し社会がよくなっていることを切に願う。

(山口)

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