見出し画像

UKロックダウン日記/楠本まき

UKロックダウン15日目
2020/04/07

―感染者数が急増している日本が state of emergency を宣言した。しかしそれは多くの国がとっているロックダウンではない。

10秒ほどのニュース。

家にこもる生活の強制に伴い、世界中でDV被害が増加している。夜中にテレビをつけていると、相談先の情報の公共広告が流れた。ウェブサイトには、見ているページも閲覧履歴もワンプッシュで消去できるボタンがついているというので、試しにアクセスしてボタンに触れた途端、全て消えた。

ロンドン市長サディク・カーンが、「広めてください:英国籍でない人も、英国民と同様の診断と治療を受けられます。あなたが知っている英国以外の国民に共有してください。」とツイート。
ちなみにイギリスではもともと国籍にかかわらず、居住者の医療費は無料(プライヴェイトクリニックなどは自費)なのだが、このページには、「これは全ての人、許可なく英国に住んでいる人にも当てはまる」と明記してあり、グっときた。ヴィザがないことがわかって強制送還される、というようなことにはしないから安心して相談しろ、ということだ。

UKロックダウン24日目
2020/04/16

今、世界のまったく違う場所で、境遇も職業も信条も異なるお互いなんの関係もない人々が、同時に日記を書き始めたと考える。

それは何か生き残りゲームの開始のようだ。
そのうち書き手の中にも感染者が出るかもしれない。
感染したら日記が止まる。闘病日記になって続くかもしれないし、そのまま終わるかもしれない。そのまま終わるというのにはいくつかのパターンが考えられる。

ポストコード・ロッタリー(郵便番号宝くじ)という言葉がある。郵便番号=住む場所によって医療、公共サービス、通える学校の質などが変わるという意味だ。
日記の書き手がドイツ在住なら、罹患して重症化しても病院で手当てしてもらえそうだ。生存率も高い。NZに住んでいたら、ほぼ死なない。イギリスであれば、とりあえずもしあなたがボリス・ジョンソンなら生き残れるということは証明された。

8時から4回目の#ClapForOurCarers。花火が上がったり、週を追うごとに大きくなってきている。一方、手を叩いてくれるのはありがたいが、PPEを早く届けてくれ、という現場の声も聞かれるようになった。

楠本まき(くすもと・まき)
漫画家。英国在住。1984年、高校1年の春休み『週刊マーガレット』でデビュー。86年お茶の水女子大学入学とともに上京。21世紀になった頃、昼夜逆転と〆切に追われる生活形式に限界を感じ、ロンドンに3ヶ月住んでみることに。その後、1年の半分ほどをロンドン残りを東京で暮らしていたが、いつの間にか移住者となり今日に至る。2020年7月『赤白つるばみ・裏 / 火星は錆でできていて赤いのだ』(集英社)上梓。



お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!