note見出し画像_辻本

「聞く」という仕事 :第1回 「一回性を楽しむ」/辻本力

ライター・編集者に必要なスキル「人の話を聞く」ことにフォーカスした連載。自分を「ことさら社交的でもなければ、口が立つ方でもない」とする辻本さんが日々どんな風に仕事をしているのか。ライター・編集者志望なら必読!今回は、vol.14掲載の第1回をお届けします。

 フリーのライター・編集者という自分の仕事を分解してみると、大きく「読む/見る/聴く」「書く」、そして「人の話を聞く」の三つに分類することができそうである。本連載では、三つめの「人の話を聞く」ということについて考えてみたいと思う。

 取材をもとに文章を書くことの多い私は、自ずと面識のない人と話をする機会も多い。小説家、漫画家、ミュージシャン、俳優、芸人、学者、企業のCEOや広報……等々、その対象は多岐に渡る。ゆえに取材が集中している時期は頭の切り替えが難しく大変だが、さまざまな意見、レアな裏話などをたくさん聞けるのは、刺激的出し、なにより楽しい。

 人の話を聞くのが仕事です--なんて書くと、さぞやコミュニケーション上手と思われるかもしれないが、残念ながらそういうわけでもない。私はことさら社交的でもなければ、口が立つ方でもない。どちらかと言えば、人と話すことを少々苦手としてきた。じゃあ、なんでそんな仕事をしているのかと言えば、書いたり編集したりする上で必要不可欠だからである。人から話を聞かなければ取材記事は書けないし、著者と打合せをしなければ本や雑誌は作れない。それでも、どんなことでも繰り返しやっているうちに、多少は慣れてくるものである。人と話すことも例外ではない(あくまで「多少は」ではあるが)。あるいは、仕事という目的や口実があるから、ビビリながらも何とかやれているのかもしれない。

ここから先は

1,627字

¥ 100

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!