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【寄稿】空白のビルボードを見つめて/小林美香(仕事文脈vol.22)

 通勤など移動中の電車内で広告観察を始めるようになったのは、2018年頃のこと。車内に溢れる脱毛広告の表現に気に障るものを感じたのがきっかけで、公共空間に東京五輪のスポンサー企業の広告やボランティア募集の広報が増えだした時期だった。ちょうどその頃更年期と軽度の抑鬱状態が重なってクリニックに通っていたこともあり、自分にとってどういうものや状況が心理的な負担を感じさせるのか、振り返る必要があると感じていた。心身の調子を崩すと、外部からの情報や刺激が負担としてのしかかってくるので、「電車内で広告を目にするだけで苛ついてしんどくなる」という感情を内側に抱え込むのではなく、「広告のこの表現が、私を苛つかせる」と、自分の感情に作用する要因を記述するために、写真を撮り、メモを書くようになった。こういう経緯に照らし合わせると、自己分析のために広告観察を始めたところもあるのだが、観察を重ねながら雑誌に寄稿するようになって、次第に広告とジェンダー表現に関する問題に意識が集中するようになってリサーチするようになり、現在『ジェンダー目線の広告観察』という本を執筆している(今年夏に刊行予定)。

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