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8/17〜8/19の日記

8月17日(水)
お盆休み明け。どれぐらい仕事がたまっているだろう……と戦々恐々しながら出勤するも、実際には休み中に宮川さんが注文を取りまとめて納品書などを作成してくださっていたので、私はひたすら手を動かすのみだった。書類や宛先ラベルを印刷して、書籍を梱包して、郵便局に何度も運ぶ。gasi editorialの新刊ZINE『フェミサイドは、ある』も届いたので、事前にご注文のあった書店さんや個人のお客様宛にどんどん発送した。夕方、いつもより少し早めに職場を出て、同じ下北沢にある本屋B&BさんまでZINEの納品に行くと、「いまInstagramでZINEのこと見ていたんです!」と喜んでくださった上に、すぐに店頭に並べてくださって、とても嬉しい。

 
8月18日(木)
今日はげじまさんが出勤だったので、げじまさんが書籍を梱包してくださる間に、私は次の宛名を印刷したり書籍注文の一覧表を更新したりして、どんどん書籍の出荷準備をした。午後、二人で台車で荷物を郵便局に持ち込んで目下の発送は終了。その後はSNSで『何卒よろしくお願いいたします』の反応を調べたり、秋刊行予定の『仕事文脈 vol.21』の執筆・取材協力依頼メールを書いたりする。9月ごろからヨーロッパでは文学関係のイベントやブックフェアが始まるため、そろそろ各社のカタログが出つつある。よい本があるか目を通した。
 
8月19日(金)
昨日までのお祭りのような発送の連続が収まり、現在のZINEや特典の数を確認するところから仕事を開始。昨日送った『仕事文脈vol.21』の執筆・取材協力依頼への反応があったのでメールを送る。noteを更新したり、注文のあった書籍を出荷したり、原稿を読んだり、メールを書いたりしているうちに夕方に。げじまさんが忙しそうだったので、自分でお盆前後の書籍の売り上げ・在庫数を集計する。


今週読んだ本


マホムッド ジャケル著『パンツを脱いだあの日から――日本という国で生きる』(ごま書房新社)


東京でコンビニや居酒屋に行くと、必ずと言っていいほどそこで働く留学生たちを目にする(なぜ留学生というかというと、ビザの関係で労働の種類が限定されているからだ。詳しくは、芹澤健介『コンビニ外国人』新潮新書。2018年時点でコンビニで働く外国人は5万人以上、全国平均で全従業員の約7%)。街で見かけるような外国の出自を持つたくさんの人たちがどんな思いで日本に来たのか、大学で知り合った留学生を除けば、私はあまり深く知る機会がなかった。
 
書店さんでたまたま目にしたこの本の著者は、バングラデシュから来日して現在は大阪でサラリーマンとして働いている男性である。印象的なタイトルは、来日してすぐ、銭湯で番頭さんからパンツ(下着)を脱ぐように言われたことからつけられている。バングラデシュでは水浴びをするときに下着を脱ぐ習慣がなかったため、かなり抵抗感があったものの、著者は、日本での暮らしに溶け込むために思い切ってパンツを脱ぐ。そこから著者の日本での生活が始まったと言えるのだと思う。

バングラデシュは世界最貧国の一つで、著者も生まれてすぐには父親が不在で家が貧しく、お米と交換に売られそうになったこともあったという。その後に父親が戻り、実家の金銭的援助を受けて首都ダッカで大学受験にチャレンジするもかなわず、親戚のツテで、日本の大学を受験するという名目でビザを取得し、猛特訓を受けるもなかなか日本語が上達しない。その間に生活費を稼ぐためのバイト先では嫌がらせを受け、お皿洗いをしながらベンガル語の歌を大声でうたって、タゴールの詩を思い出しては自分を励ましたりする。不合格の連続の末になんとか日本の大学に合格した時の、周囲のバングラデシュ人たちの喜びようや、入学金をどう集めたかという証言は、感動するとともに興味深かった。
 
恋をしたり、裏切られたり、つらかったり悲しかったり、時には過度に調子に乗ってしまったり……いつわらずに書いているからこそ、著者がリアルな人間として感じられ、日本に暮らす外国の出自を持つ人たち一人一人にさまざまなライフストーリーがあるのだなという想像ができるようになった。いろんな人が、さまざまなきっかけや理由で日本に来て、それぞれに苦労をしていて、それでも日本で暮らす一員として地域に根を張りつつあるのだなと、この本を読んだ後ではずっとリアルに感じられる。だからこそ、機会があればじっくり話を聞いてみたいし、私たちが暮らす社会で制度としてかれらが不利になることがあれば、かれらの側に立ちたいと思う。
 
もう一つ、この本は、日本語での記述に不安を持つ著者が話した言葉を、視覚障がいを持つ西亀真さんという方が打ち込んで作られたものだということを記しておきたい。話し言葉だからなのか、とても読みやすくすぐに読み終えた。本のカバーの裏側には、西亀真さんと盲導犬の写真が収められている。著者は現在、在日バングラデシュ人や留学生の支援をしているというが、私もそのように自分が受けた恩を忘れずに、困っている人を助けたいなという風に思わされた。おすすめの一冊です。

(山口)

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