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なぜいま読書会?みんなで読むと景色が変わる 04 アドルノの読書会(仕事文脈vol.21)

30年以上続けてようやく8分の5読み終わらない哲学の読書会/アドルノの読書会 藤野寛さん

 アドルノ(1903〜1969)は哲学や芸術について数々の著作を残したドイツの哲学者。そのテキストは非常に難解なものとして知られる。國學院大學の藤野寛教授はアドルノの読書会を主宰しているが、アドルノについて「ドイツの哲学者の中でも何を言うてるのか、最もわからん哲学者の一人」と苦笑する。「ドイツ人でもスラスラは読めない。だから我々の勉強会もいつまで経っても終わらない」。

 藤野さんがアドルノの主著『否定弁証法』の読書会を始めたのは1985年のこと。当時大学院生だった藤野さんと、先輩の西村誠さんの二人でひっそりと。「当時、日本にはアドルノ研究と呼べるものはまだほとんどなかった。だから興味があったら、自分でやるしかない。ところがアドルノは難しいので、一人で読もうとしても到底手に負えないし歯が立たない。だから、まあ二人でやろうかという話になったわけです」。中断を挟みつつ二人で30年以上読書会を続けてきたが、読み終わったのはこの本のようやく8分の5ほどだという。

 いったいどんな読書会なのだろうか? 藤野さんは、「我々のやっている読書会は、大学教員とか大学院生とか、勉強することが本来の仕事であるような人間がやっている読書会なので、他に仕事を持っている人が仕事の合間を縫って頑張ってやっておられる読書会とは、ちょっと性質が違うのではないか」と前置きしながら、読書会について話してくれた。

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