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投資家パンクス /ヤマザキOKコンピュータ(仕事文脈vol.12)


とんかつDJが主人公の漫画が好きだった。

 渋谷のとんかつ屋のせがれが、とんかつ稼業とDJ稼業の狭間で自分のアイデンティティを確立していく、熱くて優しい話だだった。
 俺も以前は投資家とパンクスという二つの生き方を並行するように生きていたが、今はその二つがガッチリ噛み合って、自分の中に一つのスタイルが確立された。
 だからとんかつDJの悩みも喜びも、まるで自分のことのように入ってきた。あれは良い漫画だった。

投資を始めたのは22歳。特にきっかけはない。

 緑色の髪にボロボロの服を着て、日本のパンクスなら誰でも知っているであろうライブハウスでアルバイトをしていた。その頃は汗水たらして働くのが良いことで、投資で増やすのはズルいことのような気がしていたので、誰にも言わずにコソコソ始めた。 あれから7年。 いまだに髪は緑色だし、ズボンは前よりボロボロだけど、一応投資家として活動している。主な仕事は資産運用に関する記事の執筆。自己資金の運用も、それなりにうまくいっている。 はじめの頃はコソコソしていた投資活動だが、続けていく中で色々な人や本や考え方と出会い、自分の思想と理論をごちゃ混ぜにして煮詰めた結果、パンクと投資、相入れないと思っていた二つのアイデンティティは矛盾なく混ざり合う結果となった。 最近は堂々としたもので、パンクスの友達や先輩が見るFacebookにも投資の記事をシェアするし、取引先までボロ履いてスケボーで行くこともある。「やりたいこと」と「やらなきゃいけないこと」が一つになって、ここに全力を注げるようになった。

「パンク」というものは不思議なもので、音楽よりも生き方の割合が大きい。
 だからパンクロックバンドをやっていてもパンクじゃない人はたくさんいるし、バンドもやらないし音楽も聴かないのにどパンクな人だっている。別に良い悪いじゃなくて、そういうものなのだ。
 実際、俺も何年も前にパンクバンドは脱退して、今はジャンルで言うとダブに近いバンドで、割とゆっくりな音楽を演奏している。それでもあの頃こびりついたパンクには、一生背中を向けられない。なんだかずーっと見張られているような、そんな感じだ。
 パンクの解釈は人それぞれだけど、俺は「既成概念にとらわれず、自分の考えを強く信じて行動すること」だと思っている。自分の考えと社会の環境なんて、そうそう合致することはない。結果として多くのパンクスがシステムへの反対活動や、DIY生活に身をやつしていくわけだけど、俺は今、それよりも熱中できる信念を見つけ、行動している。

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