無職とIT/丹野未雪

 就業中、基本的に私語はせず、ずっとPCに向かい合って、仕事が終わったら皆すぐ帰るので、おもしろいと思う同僚もいない。そんな職場がいやで辞めたいと、IT系の仕事に就いて数カ月という女性がいった。彼女の話を聞くと、たしかにわざわざ同じ時間に同じ場所に集まりつづける意味あるのかなその仕事、と思うし、ITってそもそも一人で作業せざるをえないから、そうなると、無職とITは相性がいいじゃないかと思う。

 無職は基本的に一人なので、たまに私語(独り言)はするが、たいていPCかスマホに向かい合って、次の仕事を探したり考えたりしている。メールなどをひらいていると、5のつく日セールとか三日間15%オフとかポイント10倍とか14時からアウトレット発売とか新規入会20%還元とか、買うならいまですよ、といった情報がどんどん届く。無職はカネがないけれど、安く買うための情報とタイミングに好きなだけ身をさらすことができる。これはジレンマである。

 だがこのジレンマを解消しているニート女性がいた。昨年知り合った人の妹さんで、ある打ち上げの席でこんな話が出たのだった。

「同居している妹は働いていないけど、ポイントやクーポンを駆使して、ほとんどお金を使わずに外食しに行ってて。買物も情報をみきわめて、わたしのほしいものも安く買ってくれて、ほんと助かるんです」

 ニコニコ嬉しそうにその人がいって、わたしまで幸せな気持ちになった。その場にいた一同、声をそろえて羨んだ。いいな〜!!

 でもいったい、わたしたちは何を羨んだのだろう。

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