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8/29〜9/2の日記

8月29日(月)
辻本力さんから「雑談本」のサンプル原稿が送られてきたので、縦書用に整理して、不明点がないかなどをざっと点検した。進行表を更新して、実際のボリュームや本文のイメージについてなど確認していく。追加のテープ起こしをして送った。

8月30日(火)
今日も引き続き「雑談本」の詳細について辻本さんに質問のメールを送ったり、打ち合わせの日程をセッティングしたりする。noteを更新した。

8月31日(水)
過去の見積もり表などを見比べて原価計算について勉強した。まもなくメールマガジンの送信時期なので、自分でできる箇所の準備を進める。まもなく閉幕のかこさとし展にどうしても行きたくて5時に早退。

9月1日(木)
メルマガの時期にいつも更新している、ホームページのメディア掲載情報のページを作成した。ご注文をいただいたお店や個人のお客様に書籍を発送。
倉庫からB本が届いたので、数が合っているか確認してから箱にしまっていく。企画書のテンプレートについて研究して、他社のお友達にも見せてもらったので、ずっと書いていた企画書を改良した。

9月2日(金)
出勤して、いつものルーティンワークを済ませ、準備をしてから辻本力さんの「雑談本」のデザインについてウェブ打ち合わせ。いろいろ考えなきゃいけないことが出てきて、話し合っているうちに2時間経過。久々に長時間のウェブ打ち合わせだったので、お昼にしっかりと休憩し、英気を養った。午後は企画書を書いたり、葛原さんがデザインしたオリジナルしおりのプレゼントキャンペーンをSNSで告知したりして、帰る前には事務所を掃除した。



今週読んだ本

原田マハ『楽園のカンヴァス』(新潮文庫)

本書が刊行されたのは10年前らしいが、ずっと未読だった。あらすじを読むと、国立近代美術館にもその絵があるフランスの画家、アンリ・ルソーをめぐる話らしい。私は前職でゴッホとフリーダ・カーロの本を担当したが、それでも美術本は(一部のベストセラーを除いて)なかなか売れないというのが定説だと思っていたので、「(ピカソ、ゴッホほどには有名ではない)アンリ・ルソーの創作小説が、どうしてこんなにベストセラーになったのかな?」と不思議に感じていた。読んで納得、とてつもなく面白いし、読み終える頃には、好きな画家を問われたら「ルソー!」と即答するほどに、日曜画家と揶揄されつづけたアンリ・ルソーの人生に魅せられた。

美術展に行くと、必ず会場には監視員がいる。作品が傷つかないように持ち回りで監視をするかれらは、実はキュレーターよりもじかんをかけ作品そのものを見つめている存在でもある。ときは2000年、広島県の大原美術館で監視員としてはたらく40代の主人公=早川織絵は、ある日突然、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の超有名キュレーター=ティム・ブラウンの指名で、MoMAが所蔵するアンリ・ルソー「夢」の日本への貸し出し交渉に関わることになる。時をさかのぼり、1983年、パリ大学の気鋭の研究者だった早川織絵とMoMAで下働きをしていたティム・ブラウンは、スイスの大富豪に招待され、「夢」に酷似する絵画「夢を見た」の真贋鑑定を依頼される。それも、鑑定の材料にできるのは、毎日一章ずつ読む機会を与えられる、小説なのか何なのかよくわからない文章。この文章は誰が書いたものなのか、そもそもなぜかれらは鑑定に呼ばれたのか。世界の美術マーケットの要人もひそかに介入しながら、両者の鑑定対決が続いていく。

キュレーターとして国内外で活躍してきた作者の豊富な知識や経験が反映されているためか、信じられないような話の連続なのに描写がリアルで、実際にあったかのように手に汗握りながら読み進めてしまう。そして登場人物ほぼ全員が美術を心から愛する気持ちを持っているため、私も登場する作品をスマホで検索しながら本を読んで「一刻も早く美術館に行きたい」という気持ちをおさえきれずにいた。

またまた息抜きのための、自分が読んで楽しい気持ちになるための読書が続いてしまったが、刊行から10年以上経ってもこんなにまで面白いままで、現実に引き戻されるような記述が一切ないことが驚きだった。「本って、話題になっていないときでも読んでいいんだ」と思った。最近の私はSNSなどを通して、好きな有名人や友人がよいと言っていた本を読む傾向にあり、周囲に取り残されないようにという圧を感じてきたが、個人的な読書は本来、自分のタイミングで何を読むのかを決めてよいんだなと思った。

とはいえ、年間7万点近い新刊が刊行されている中で、自分一人の力だけで本当に読みたい本にたどり着くのは至難の業だ。
数年前まで書店営業で通っていた老舗の本屋さんには、レジ脇のカウンターのところに必ず、毎回別のお客様が座っていた。お客様は書店員さんが持ってくる中から本を選び、10冊以上まとめて購入していく。書店員さんは棚から何十冊もピックアップしてはカウンターに並べ、お客様は積みあがった書籍をパラパラめくってはどれを購入するか決めていた。
今、タバブックスとお取引をしてくださっている全国のたくさんの書店さんの書棚には、新刊やベストセラーに限らず、お店の方がセレクトした書籍が並んでいる。そこからお客様が自分で本を選ぶのも、一種、上記の老舗書店さんと同じような選書のサービスだなと思う。私にとっても、書店員さんから「山口さんにおすすめ」と個人的に教えてもらったり自分で棚から選んだりと、選書によって出会って人生に欠かせなくなった本が何冊もある。こうした選書の力に改めて感謝しつつ、作り手としては、お店の方にセレクトされて書棚に置かれ、必要としてくれる人に届くような本を作っていきたい。
(山口)

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