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日日京都映画雑記2020春 田中誠一

3月20日(金)

 「東京フィルメックス京都出張篇」9日間の全上映終了 全体の入り、いまひとつ。ホン・サンスは大入り。情勢が徐々に悪くなる傾向である今は仕方がない。大阪アジアン映画祭も舞台挨拶、イベント等はナシで上映のみ。
 フィルメックス事務局とやり取り。映画制作企画を公募する「New Director Award」の概要決定、進行。
 『ワンダーウォール 劇場版』イベント 渡辺あやさん、MC小柳帝さん 大入り盛況。
 『羅小黒戦記』『ジョジョ・ラビット』@出町座、連日盛況。
 『どこへ出しても恥かしい人』@名古屋シネマテーク、連日ひと桁。
 東京での興行が一区切りした後、作品が全国の劇場へと流れていく過程。この時点で中高年の客層が中心の本作などは如実に動員減少の影響がある。この後の京阪神公開も同様だろう。友川さんは3月からすべてのライブ予定がキャンセルになっている。渋谷ラママで予定していた友川さんのライブと『どこへ出しても恥かしい人』上映のイベントもキャンセル。もちろん、上映劇場への舞台挨拶も今は出来ない。ライブはいつになったらやれるようになるのだろうか。
 お客さんの流れができている作品以外は、来場者数がゆるやかに減少。
 中高年層の方が出控えを始めている印象。若者は普通に来る。
 劇場として複数作品の動向を見る。
 配給として各地の劇場の動向を見る。
 すでにイタリアを始めとするユーロッパは大変なことになっている。フランス等の閉館している映画館ではチケットの先売りをオンラインで発行しているとのこと。アメリカでは映画のオンライン配信実施、視聴の際に本来ならどこの映画館で観ていたかを選べる。
 欧米や他国の現在は少し先のココで起こること。クラウドファンディングを考える。
 4月から開始予定のシネマカレッジ京都の授業、脚本クラス、俳優クラス、ともに延期。講師、受講生に相談と通達。小中高、大学も休みなのだから仕方がない。出町座のシアターカーテンを縫ってくれたNの長女が小学校1年生とのこと。1年生の年にこれというのはなかなかにすさまじい。
 某氏とやり取りをしていて、実は感染者の濃厚接触者であるということを聞く。いま自宅待機中という。幸いなことに陽性ではないそうでホッとする。が、確実にこれは拡がっているのだという感覚が現実感を伴ってくる。


4月12日(日)

 高畑勲監督『セロ弾きのゴーシュ』才田俊次さんトーク→中止。
 4月23日(木)同志社大学寒梅館での高畑勲監督『じゃりン子チエ 劇場版』上映&小田部羊一さんトーク→中止決定。
 高畑監督企画、為す術がなくイベントを取りやめにしていかざるを得ない。
 東風の木下さんに「仮設の映画館」について電話。「形としては誰でも考えつくと思うんです。でも今やっておかないと。映画館にお客さんに戻ってきてもらうためにやるんです」映画屋としての矜持を感じる。これまでもいろいろな難局に直面して、くぐり抜けてきたのだ。
 『どこへ出しても恥かしい人』も仮設の映画館で上映(配信)させていただくことにする。正直、劇場上映がこの状態で止まってしまっている以上、制作費、配給宣伝費の回収もおぼつかないが、オンライン配信で回収できるとも思わない。だが今劇場にかけられないこの状態でも「映画を止めない」というスタンスを示す必要がある。オンライン配信の勉強と作業。各地の劇場に参加呼びかけ。


田中誠一 (たなか・せいいち)
1977年生まれ。いくつかの劇場スタッフや映写業務、宣伝業務をしながら、関西で自主上映を企画。映画祭運営、映画制作に携わる。映画『おそいひと』の配給・宣伝を経てシマフィルム入りし、『堀川中立売』(2010年)などの映画製作にも参加。映像制作ラボKyotoDUメンバーとしても活動。2013年より元・立誠小学校を拠点に立誠シネマプロジェクトを運営。2017年、映画×カフェ×書店and moreの文化複合施設として出町座を立ち上げ。出町座は2020年より東京フィルメックス理事。京都市在住、独身。ここ数年はほぼずっと出町座内で仕事をしている。飲み屋よりも映画館、本屋、喫茶店、銭湯によく行く。


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