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体調が悪い時にはスープを

匠海は父親が好きでは無い。未だに好きになれない。こんな大人にはなりたくないと思っている。
でも、未だに連絡は取るしなんだかんだで似たもの同士なのかもしれないと思う時がある。


父親との思い出はあまりいい思い出はない。
アルコールを飲んで自分が分からず、家族に酷い事をする父親の記憶が8割。
熱を出した時に父親なりに一生懸命料理してくれた記憶が2割だ。

匠海が熱を出した時兄と姉は学校、母親は仕事で家に居るのは匠海と父親だけの事が殆どだった。
父親は酒を飲みいつもの様にテレビを見て文句を言う。自分を保ててないから言いたい放題。「どうせ忘れるんだろ」と思っていた。

今でも覚えている出来事がある。

あのクソの塊みたいな父親が、2・3度熱を出した匠海に料理を振舞ってくれたことがある。熱を出しながらも「食える料理作るのか?」と思った。
見事に変な味だった。味が濃すぎたり、しょっぱかったり。食えるもんじゃなかった。しかし、何故か食ってた匠海がいた。

料理する後ろ姿も覚えている。どうすれば食べてくれるか大きな背中を小さく丸め必死で作っていた後ろ姿を覚えている。【匠海の為】に作ってくれている父親が、父親らしく見えたんだろうな。
食ってる時「美味いか?」としつこく、くそウザイ位聞いてきてくれる事が...嬉しかったんだろうな。嬉しかったんだ。

匠海はたまに、父親が使っていたスープの素を買ってスープを作る時がある。けどあのクソ濃い食えたもんじゃないスープは作れない。何入れたんだあのジジイ。

そのスープを作る時は、大体気分や体調が悪い時だ。ああ、結局嫌いにはなれないんじゃないか。矛盾してるよ、お前。

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