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目標の転換で前に進む

 産業医として実務を行っていると、得てして職場における様々な”問題”に対応することになるし、産業保健業務の構造・仕組み・体制などについても”問題”が山積みであることも少なくないのでその対応も必要になります。そんなときに必要な”目標の転換”について思うことを綴りたいと思います。

問題解決の手法

 「問題解決」のフレームワークでは、”なぜなぜ分析”などによる問題背景の掘り下げや、”4M5E分析(又は4M4E分析)”などによる網羅的な分類と解決策検討などの手法が用いられることがあります。特に事故・トラブルへの対応にあってはこれらのフレームワークは強力に機能します。

問題解決手法の限界

 一方で、中長期的な改善を目指したい場合などにおいてはしばしば「問題解決」のみでは不足することもあります。それは、”問題が網羅的に解決された姿は、ありたい姿になっているのか?”という問いかけで深ぼってみていただければと思います。”問題”にフォーカスすると、”問題ではないこと”が置き去りになることもありますよね。場合によっては一つの問題解決が他の問題の種になることもあります。局所的な問題解決は全体の構造において改悪になるという矛盾を生み出すこともあります(参照:ビールゲーム

 さらにいうと、あなた自身が「問題」を洗い出そう、見つけ出そうという視点を日常として繰り返していくと、物事の「問題」「欠陥」「負の要素」に着目することへの自動思考が習慣として形成されることもあります。
 人との関係や、出来事の負の要素に着目しがちな思考の癖になってしまうのはちょっと避けたいですよね。

解决志向型アプローチとは

 では、”問題”にフォーカスするばかりではない、”ありたい姿”を目指すフレームワークって何なの?ということですが、「Solution Focused Approach (SFA):解決志向型アプローチ」という考え方・手法があります。

 SFAでは、一つ一つの”問題”を掘り下げて”問題の解决”を図るのではなく、”ありたい姿(解决像)”という目標に転換し、”いま出来ていること”に着目し、現在地から”ありたい姿”に向けてアクションを積みあげていくという手法になります。

実務における「問題解決」/「解決志向」 

 産業医として複雑な背景・要因を含むケース支援(従業員の健康問題へのサポート)を行う場合、”職場の問題””本人の問題””人事対応の問題””治療方針の問題(主治医)の問題”などに視点が向きすぎてしまうと、本来関係者が連携して本人の主体的な健康管理を促したい場面で、関係者間の分断を生み解决を遠ざけ、結局のところ”問題意識”を持っている自分自身が苦しむというブーメランになってしまうこともあります。

 それぞれのケース支援において、”問題点”ではなく”ありたい姿(解决像・ゴール)”に目標を転換し、再設定することができれば、関係者が共有し、それぞれの役割へ落し込み、チームとして機能するという状況が導かれるのではないでしょうか。また、支援の対象となる従業員自身も、自分の欠点・弱みばかりに着目するのではなく、”いま出来ていること(強み)””これから取り組むこと(積み上げること)”に着目することで前を向き、前に進めるようになってほしいなと思っています。

「解决志向」への目標転換

 ケース支援に限らず、あらゆる職場の取り組みにおいてもこの「解决志向型アプローチ」が有効に機能するという実感があります。リーダーシップを発揮しなければならない場面においては特に、「問題解决」「解決志向」のどのパターンで行くかという選択は重要になります。
 中長期的に取り組んでいくこと、日々意識して取り組んでいくことにおいては、一人ひとりの意識・目標を”ありたい姿(解决像)”へと転換し、”いま出来ていること(強み)”に注目しながら、”これから取り組むこと(積み上げること)”を決めて取り組んでいく。そんな働き方やマインドセットを私は大事にしたいなと思っています。

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