見出し画像

未経験フリーランスはヤバいよというお話

最近Twitterのエンジニア界隈で話題になっている未経験フリーランスについて、未経験フリーランスの何がヤバイのかや、実際にキラキラフリーランスで働いているのはどんな人なのかの実情をお話しして、若いエンジニアを目指す人がいきなりフリーランスになって地獄を見ることが無いようにこのnoteを書きました!

筆者について

まず筆者である私について軽く自己紹介しておくと
新卒で行政向けの調査を行うコンサル会社に就職、官公庁向けのコンサルやシステム開発の業務を担当
5年ほど勤めたのち人材系の会社にデータサイエンティストとして転職
転職後9ヶ月で離職し、主に機械学習システム開発を行うフリーランスエンジニアとして2年間活動
現在は広告系のベンチャー企業で機械学習エンジニア(正社員)として勤務
IT業界への転職、フリーランス、フリーランスから正社員に戻るという経歴を経験してます。

未経験フリーランスとは

未経験フリーランスについて語る前に、未経験フリーランスの定義を明らかにしておきます。

まずここで話題にするフリーランスについては、ITフリーランスを話題にします。ITフリーランスは企業と雇用契約ではなく、企業と業務委託契約または請負契約を結び、システム開発やWEB制作を生業とする人を指します。
(イラストレーターやライターなどのIT系以外のフリーランスについては門外漢なので言及しません)

私は、未経験フリーランスについては以下の2つに大きく分類できると思っています。
1. 企業への就業経験がない、または新卒で入社した会社を1,2年で辞めて、フリーランスとして活動し始めた人(社会人未経験フリーランスと呼ぶ)
2. 企業への就業経験は数年あるが、エンジニアとしてキャリアチェンジするために、プログラミングスクールまたはその他の方法でプログラミングなどのITスキルを身に付け、IT企業への就業経験が無い状態でフリーランスとして活動を始めた人(エンジニア未経験フリーランスと呼ぶ)
未経験フリーランスの何がヤバいのかについて以下では書いていきます。

どちらも地獄だが社会人未経験フリーランスは特に地獄

まず、社会人未経験(または新卒1,2年での離職)でのフリーランスについては論外です。
・客なし
・ビジネスマナーなし
・スキルなし
で詰みます。

客なし
これはいうまでも無いですが、社会人未経験や新卒1,2年目の社員にお仕事を受注できるようなコネクションは無いですよね?
仮にあったとしても
・学生時代の交友
・怪しいベンチャー経営者
・怪しい個人事業主
など顧客の質としても低いものしかないでしょう。
「コネがなくてもクラウドソーシングのマッチングサイトやエージェント使えばいいじゃん」と思うかもしれませんが上記の経歴では採用されないかめちゃくちゃ単価の低い案件しか契約が取れません。
「自分が発注者の立場だったとして自分に発注するか」をよーく考えてみてください。

ビジネスマナーなし
フリーランスであれば、顧客との契約関係での折衝や契約書、請求書のやりとり、納品が必要であれば納品作業などが必要になってきます。
これらを行うためにはメールのやりとりやビジネス文書の作成といった基本的なビジネスマナーを身につけている必要があります。
社会人未経験や新卒1,2年目の人にそのような経験があることは稀なので、顧客とのやりとりやひいては信頼関係の構築にも苦労するでしょう。

スキルなし
上記の2つに加えて当然エンジニアとしての経験も浅いもしくはほとんどないのですから、お客さんが求める品質の成果を上げるスキルもありません。
これでは仮に契約を取れたとしても継続して受注することはできませんし、成果物の品質が低すぎる場合は損害賠償を請求されるリスクもあります。

そしてさらに追い討ちをかけるのがフリーランスから足を洗って正社員で就職しようと思っても転職市場での評価が著しく低いのです。正社員で就職しようとしても新卒で入れた会社から数ランク落とした会社に就職できるかどうかが関の山でしょう。(正社員で雇ってもらえずに契約社員や派遣社員といった非正規雇用になる可能性もあります。)

エンジニア未経験フリーランスについて

エンジニア未経験フリーランスの場合は、不可能ではないが立ち回りがめちゃくちゃ難しいです。以下の観点で考えて継続的に契約が受注できそうであればなるのもありですが可能であれば数年IT企業などで開発経験を積むのがいいと思います。

見込み顧客がいるか
まず売り上げが立ちそうかが一番大事になります。これまでの仕事のツテなどでお仕事を発注してくれそうな繋がりがあるかが重要になります。
フリーランスになるのであれば最初の数ヶ月間のお仕事や売り上げは確保した状態で臨みましょう。
社会人未経験フリーランスのようにクラウドソーシングやフリーランスエージェントを使いますというようではお先真っ暗です。

請負契約ではなく準委任契約でお仕事を受ける
こちらは契約形態の違いになります。エンジニア未経験でフリーランスになる場合は、請負契約は絶対に受けてはいけません
簡単に請負契約と準委任契約の違いについて説明すると、

請負契約→成果物を納品する義務がある、納品できない場合損害賠償を請求される可能性がある、納品した成果物に不具合があった場合無償で直す必要がある(契約不適合責任)

準委任契約→稼働時間に対して報酬が発生する。善管注意義務はあるが故意の損失を与えない限りは損害賠償を請求されることはまれ、スキル不足などで契約延長を打ち切られることはある

といった感じです。準委任契約であればスキルレベルに応じて稼働時間に対して報酬を得る感じになります。
スキル不足で契約を打ち切られることはあっても無償で直したり、損害賠償を請求されるといったことはほぼないので、うまくいけば未経験からでも開発経験を積むという意味では悪くないでしょう。

請負契約はまず無理です。
請負契約を結ぶ場合は、成果物をいつまでに作成してそれをいくらで請け負うかを顧客に提示し契約します。契約後、作成した成果物の品質が問題なければ報酬が振り込まれます。
未経験エンジニアの場合は、この請負契約において、
契約時の見積もり
成果物の品質担保
この2点が決定的にできずに
・めちゃくちゃ安い金額で受注していまい時給換算したらめちゃくちゃ安くなってしまった
・成果物の修正で作業時間が大幅にかかってしまった。成果物の品質が認められず報酬が得られなかった
ということになるリスクが非常に高いです。そしてこの
・見積もりをする
・成果物の品質を担保する(テストする)
といったノウハウは独学では身につけることが難しく、IT企業で数年開発経験を積まないと身に付かないスキルになります。

そのため、エンジニア未経験からフリーランスになるよりも、まずは企業に勤めて開発経験を積むことをお勧めします。
どうしてもエンジニアとしてのファーストキャリアとしてフリーランスを選択するのであれば、
・経験豊富な方をメンターについてもらう
・契約関連は弁護士などにリーガルチェックを依頼する
といった対策を行いましょう。

じゃあ今フリーランスでキラキラしてる人たちはどんな人たちなの?

よくTwitterなどで駆け出しの方がフリーランスを目指す動機としてあげられている。
・自由な働き方(フレックス、フルリモート)
・高年収(年収(年商)イッセンマン)
を実現している人たちはどんな人なのかを紹介します。
2つのパターンがあります。

新卒でSIerやSESのソフトハウスに就職→WEB系企業に転職→フリーランスのパターン

まずは新卒でSIerやSESのソフトハウスに就職して、のちにWEBサービス系の企業に転職してその後フリーランスというパターンです。
ちなみに私の経歴はこちらのパターンに近いものになります。
まずは新卒入社したSIer企業などの研修でシステム開発やプログラミングの研修を受けます。その後現場に配属されたり、受託の開発案件にアサインされて実際の開発経験を積んでいきます。
数年前まではSIer企業などは残業も多く、納期前はデスマーチになるなどのブラックの代名詞だったので、多少給料は下がってもワークライフバランスを重視したいという人がWEB系の会社に中途で転職して行きました。
その後は、勉強会や転職先やこれまでの勤務先のツテを活かしてフリーランスになる。または技術力があるのでエージェント経由で案件を探すという形でフリーランスになるというパターンです。

新卒でメガベンチャーに就職→WEB系企業を複数経験してフリーランスのパターン

2つ目は新卒でメガベンチャーに就職して、WEB系のベンチャーやメガベンチャーを渡り歩いた後にフリーランスになるというパターンです。
私が就職活動をした2013年前後はDeNAやGREEなどのメガベンチャーが高額な初任給を提示して東大生などの高学歴の新卒をこぞって採用してました。
そういったメガベンチャーに就職した人が、転職などを経てフリーランスになるというパターンです。
こういった人たちはそもそも高学歴でメガベンチャーでの勤務経験もあり、技術力(少なくとも技術力があると評価される)などのスペックが高いです。
キャリアの最初からキラキラベンチャーで働けて、フリーランスでキラキラできて羨ましいですね。
(でも彼ら高学歴でめちゃくちゃポテンシャル高いからねしょうがないね)

私が観測した範囲でキラキラフリーランスで年収イッセンマンをできてる人は上記の2パターンのどちらかですね。
・SIerでデスマーチを経験して地獄をみている
・新卒でメガベンチャーに入れるほどのハイポテンシャル
のどちらかという感じです。
開発経験も最低でも5年は経験しているという感じです。
この事例を知っていたら、オンラインサロンやプログラミングスクールで3ヶ月から半年学んだだけでは到底到達できるわけがないことは明らかです。

私が見た社会人未経験フリーランス

ほんとに未経験フリーランスは無理なの?という方もいらっしゃるでしょう。
結論から言うと不可能ではないです。私も現に2人社会人未経験からフリーランスをしている人を知っていますので、私が見た社会人未経験フリーランスがどのような方がご紹介します。

1人目

1人目は、大学の博士課程でCS(コンピューターサイエンス)の研究をしていて海外への留学経験もある方でした。確かに企業で働くのは不向きだなあとは思いましたが、自分でプログラミングのコミュニティを運営するなどのアグレッシブさがあり、海外の論文を読んでアルゴリズムを実装するなどの技術力も高くめちゃくちゃ頭がいい人でした。

2人目

2人目は、こちらも東大の現役の博士課程に在籍している人(専攻はCS)で研究の傍ら、学費を稼ぐためにフリーランスエンジニアとして働いていると言う方でした。
そもそも大学の研究でプログラミング言語自体を開発するような研究をしているレベルでした。癖はありますがめちゃくちゃ頭がいい人でした。

なので、めちゃくちゃ頭が良ければ社会人未経験でもフリーランスでやっていけると思います!

それでもフリーランスになるという人へ

ここまでを読んで、
・そもそも家庭の事情や持病があって週5フルタイムで働けない
・決定的に会社員に向いていない
・そもそも経歴的に正社員での就業が難しい
といった理由からフリーランスになるしかないと言う人もいるかもしれません。
その場合は、少なくとも以下の点については考えた上で、現状取りうる最善策と思えるのであれば止めません。
・当面の売上の目処は立っているか(顧客はいるか、受注の見込みはあるか)
・税金や契約などの事務手続きについて理解しているか
・売上が立たなかった場合のプランはあるか
この辺りについてはよく考えた上で体のいい無職(フリーランス)にならないようにしっかり事業計画を立てましょう!
可能であれば企業に就職して開発経験を積むことを強くオススメします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?