島根県知事の2/17記者会見を見て

島根県知事が2月17日に行った記者会見のニュースに興味を持ち、全部聞いてみました。今の日本の対策の問題点を見事に説明していると感じました。記事にはないが気が付いたことも含め概要をまとめてみます。

まず記事はこちら。BSS山陰放送です。蔓延防止等重点措置の延長を申請しない、20日で終わらせる、が発表事項。

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会見全体は47分です。リンクはこちら

最初の10分弱は、ほとんど原稿を読んでいました。最初の質問は、「初めての蔓延防止適用への所感と、効果をどのように感じているか」でした。答える前、憮然とした表情、しばらく間をおいて「今言ったとおり」と返事。しかしその後、効果をどう感じているか、ということを、延々と話し始めます。30分ほど話していますが、分析が中心で、この部分がとても興味深かったです。さらに別の質問への答えもリンクしていたので、エッセンスを紹介します。(一部理解解釈を含んでいます)


・オミクロン株の感染の主体は飲食店ではなかった。(飲食店への制限中心の蔓延防止等は効果が薄いとして、申請しなかった県はある。)蔓延防止等を申請したのはオミクロン株島根県最初の感染が飲食店だったから、効果はあった。今の感染は家庭からなので、措置の継続は希望しない。

・オミクロン株がインフルエンザや風邪と同じと考えるのは間違っている。医療が一人づつを症状として診る、つまりミクロで見るとそうかも知れないが、公衆衛生(社会全体)で考える時は違う。重症化率が1/10になったとしても、感染者数が20倍になったら重症化数は2倍になる。掛け算の片方しか見ていない。

・手洗い、うがい、マスクの徹底でインフルエンザは防げたが、オミクロン株は広がっている。感染力が違うものを、公衆衛生で同じように評価するのは完全な間違い。

・すでに一部で医療逼迫(医療崩壊)が起きている。

・経済を回す、という人がいるが、この状況で消費行動しますか?

・専門家は感染症の専門家かも知れないが、公衆衛生は素人。有効な処方箋が出てこない。平井知事がオブザーバーとして基本的対処方針の分科会に出ているが、構成メンバーではない。オブザーバー。陪席しても良い、という立場。意見を聞く相手を間違っている。

・エビデンスが十分あるかで議論すること自体が問題。戦う相手が毎回違うので、同じ方法でやってもダメ。

・感染状況のモニタリングの指標から感染者数を外そうとしていた。死亡者数を増やさないためには、重症病棟の使用率が重要だと考えた。しかし今、中等症が逼迫し、それで死者が増えてしまっている。誰もこれを反省していない。むしろ、感染者数がピークを越えたという、重視していなかった指標を持ち出して楽観視している。

・ピークを越えた、ということもおかしい。精度がわるい数字を足し合わせて評価しようとしている。さらに先週は祝日があって、統計上、感染者数が低く出ていたと推定されている。

・大学で統計学や社会調査の基本を勉強しなおす必要がある。教科書の最初の50ページに書いてあるレベル。今やっていることは合格点はもらえない。

・日本の教育では、自ら課題を捉えて解決をすることを重視していたはず。だが今、問題にしている人たちはそういう能力がない。課題を発見していない。見つけても無視、または見過ごしている。解決のアイディアも出せない。

・島根県では、感染の拡大は家庭。家庭から高齢者施設や学校に広がっている。今は症状が出たら、すぐに対応。問題は無症状の感染者。症状が出た所から押さえていくしかない。それでも何とかコントロールできている状態。


個人的な感想です。ものすごく勉強になりました。行政として行うべきは、公衆衛生。感染を広げないことが最優先。だから症状が出た人をすぐに見つけ出し、感染を広げないようにする。無症状の感染者は、症状が出た人を頼りに見つけ出す、という方針です。そしてこれは保健所が機能しているからできている。

言っている内容はごくごく当たり前、納得できることばかり。でもこれが言える首長がとても少ないのだと思います。しっかりした知事が采配を振るっている島根県がうらやましく思えてきました。そして国が全くできてないことがあまりにも多いことを実感する会見でした。

いや、何もできていない、より酷いかも。楽観論を広報し、PCR検査を貶め、ワクチン接種だけしか対策しない。あとは成り行き任せ。科学的な判断を軽視。社会を分断。(溜息)