片対数グラフとは?

昔、方眼紙にグラフを書いていた時代がありました。方眼紙は、普通太く書かれた1㎝毎の線、5mm毎の中細の線、そして細い1㎜毎が、縦横に描かれたものです。勿論、すべてのマスが正方形です。なんの不思議もありません。

私が初めて片対数方眼紙を見たのは中学低学年だったと思います。まだ対数の概念を知らず、何に使うのだろうと不思議に思ったものでした。後に、両対数方眼紙や「正規確率紙」というものも知りました。一般的な方眼紙を含め、これらはすべて同じ考え方で作られています。

片対数グラフに戻りましょう。初めに一般的なグラフ。時系列グラフで考えれば、横軸は時間、縦軸はデータが示す値を意味します。もしも時間当たりのデータの増加が一定値(線形増加)であれは、グラフは直線(線形)になります。等差数列です。しかし、新型コロナ陽性者のように、一人から何人へ感染させるかを分析したい時は、グラフは指数関数になり、等比数列の議論になります。一般的なグラフで書くと、増加する人数はどんどん増えます。しかし増える率で考えると同じかも知れません。これを見極めるために、縦軸を対数(つまり指数関数の逆関数)にすると、あら不思議。指数関数的増加は直線のようになります。逆に線形増加だったデータは、あたかも対数グラフのように、段々と傾きが緩やかになってきます。

結局、指数関数的な動向を示すデータを解析するには、片対数グラフを使うと解析しやすくなります。片対数グラフで一定の傾きの直線になるならば、同じ傾向の等比数列であることがわかります。傾きが鈍くなれば、指数関数的な増加の傾向が少し緩和していると結論できます。(つまり片対数グラフで直線的な増加を示すものは、実際の数値で言えば指数関数的な増加)

一般的な線形軸のグラフを用いて線形的な変化をするデータの増加傾向を見るのと同じように、片対数グラフでは指数関数的な変化をするデータの増加傾向を見極めることができるわけです。指数関数と対数関数は逆関数の関係になっているので、むりやり縦軸の指数関数的増加を直線になるようにしたもの、と言えます。そして片対数グラフで傾きが異なる2つの直線がある場合、傾きが大きい方が増加の傾向が強いことは言うまでもありません。

新型コロナウイルスの陽性者が広がる様は、何もしなければ指数関数的(等比数列)になるので、この状態を見極めることが重要になります。そして片対数グラフで増加の傾向を見ていると、実際の感染者数が少ない時でも指数関数的増加の予兆を読み解くことができる訳です。

以下のグラフは、7月28日の実効再生産数から予測した1週間後の感染者の増加です(4日を基準と想定)。実効再生産数は、片対数グラフの増加の変化(1次微分)に対応します。7月28日を1として、日本では4日後に1.72倍になるように計算しました。線形増加は4日後には1.72倍になるような等差数列を示しています。イギリスは実効再生産数が1より小さいので減少中です(後に増加に転じました)。上は通常の線形軸、下が片対数軸であること以外は、全く同じグラフです。

指数関数7日

短期間ではわかりにくいので、同じグラフを30日に広げてみました。

指数関数30日

このグラフを見比べることで、片対数グラフで直線的に増加すると、実数では指数関数的に増加することが良くわかると思います。日本で言えば、この傾向が続くと4日で1.72倍ですが、30日後には50倍を軽く超えます。(式で書くと、4日後はexp(ln(1.72)*4/4)=exp(ln(1.72))=1.72、そして30日後はexp(ln(1.72)*30/4)となります。)

片対数グラフにしたものの傾き、傾きの変化を読み解くことで、このままの傾向で感染者数が増加したらどうなるかを推測することができるわけですね。

7月末の日本の実効再生産数はとても高い状態でした。7月28日から8月13日までずっと1.72のままだったら、この16日間に8.8倍になっていたはずです。7月末で1万人強程度でしたので、8月13日には9万人になってたはずです。しかし実際に発表されたのは2万人程度。本当にこの程度であればまだ良いのですが。。。(※)

いずれにしても、数値データを見て、最悪を予測できるようになっておくことは理系・文系に関わらずとても重要なことではないでしょうか。

https://ourworldindata.org/explorers/coronavirus-data-explorer


※:感染者数に信ぴょう性があるか、正確に把握できているかは、とても大事な視点です。(まだはっきりしませんが、特に8月以降の感染者数データには疑問があるようです)

(誤字修正しました。10/4)