データを大切にすることがなぜ大事なのか

データを大切にすることは、事実を事実として把握すること。事実が捻じ曲げられなければ、その事実に基づいて判断できるようになるはず。だからデータを大切にしよう。
このnoteを始めるにあたり、これこそが考える根本的立ち位置であり、中心に据えるべきポイントだと考えました。

これを選んだ背景には、これまで多くの問題を見てきたからです。でもその全てにおいて政治的意図が見える、統計データの重要性を理解できない人たちの無理じいが捏造などが原因だ、と考えてきました。

しかしだからこそ今回のニュースは、かなりショックでした。きちんと統計学を学んできたはずの研究者の捏造と杜撰さ。これまで見てきた政治的なプレッシャーと同様、もしかしたら捏造には何かの圧力があったのかも知れません。しかし杜撰さという意味で、日本の技術力低下はもうずっと前からであり、すでに基礎研究でも始まってしまっていると感じざるを得ませんでした。

多くの人が目にしていると思いますが、記事はたとえば 「古川聡宇宙飛行士の宇宙医学実験、データ書き換え…ISS模した環境でのストレス評価」。

この記事を読むだけでは詳細がわかりません。もっと詳しい記事は「JAXAの宇宙におけるストレス研究で生じた不適切行為は何が問題だったのか」。そしてこの記事からJAXAの報告書へのリンクもあります。


悲しくなるくらい、ひどい内容ばかりが記載されています。

(1)存在しないデータが作成されていた
(2)研究データが数多く書き換えられており信頼性を損なった
(3)評価方法の科学的妥当性が確認されないまま研究が実施されていた
(4)データの信頼性を棄損させる行為があった
  ① データの収集及び管理の面で不足があった
  ② 研究ノートの作成が十分でなかった
(5)その他医学系指針に則って実施されていない行為があった
  ① モニタリングの不実施
  ② 研究機関の長の研究決定手続きの不存在
  ③ インフォームド・コンセントの一部に不備

https://www.jaxa.jp/press/2022/11/20221125-2.pdf

改竄は、データを書き換えること。何かの意図があって、それにあわない値を少し修正しようという考え方です。恐らく改竄する側は、データを書き換えているという認識があります。
しかしそもそものデータを作ってしまう、管理をおろそかにするという行為は、実験そのものを軽視する、もしくは意味を認めていないとも理解できるもので、科学的実験を根本から否定する行為です。古川宇宙飛行士は、医師でもあります。医師が人の命にかかわる可能性がある実験をおろそかにしているのです。

あまりにもひどい。
しかしだからこそ、データを大切にしていると判断するための材料が詰まっているのではないか。データを得る際に注意すべき事柄を、事例と共に理解できるのではないかと思いました。


報告書の項目の順番を変えながら、考えてみます。

(3)評価方法の科学的妥当性が確認されないまま研究が実施されていた
医学系の実験は、人の命にもかかわるので、論文として発表するために事前にその実験計画を説明しておく必要があるようです。国際的ガイドラインCONSORT声明というものがあり、少なくともアメリカでは研究開始前に症例数計算を含んだ研究計画を公開することが求められているそうです。
このようなことが起きたのならば、これは、およそ世の中にデータを発表しようとする姿勢がない、または能力がそもそも無いと理解できてしまいます。

(5)その他医学系指針に則って実施されていない行為があった  ① モニタリングの不実施  ② 研究機関の長の研究決定手続きの不存在  ③ インフォームド・コンセントの一部に不備
これも、(3)と同様、そもそもどこかにこの研究を発表しようとする意志がなかったと感じます。実験に協力した40人もの人の貴重な時間を2週間以上も使い、いったい何をやりたかったのか。。。


(2)研究データが数多く書き換えられており信頼性を損なった
(4)データの信頼性を棄損させる行為があった  ① データの収集及び管理の面で不足があった  ② 研究ノートの作成が十分でなかった
(1)存在しないデータが作成されていた
この3つは、科学的実験を行う時にあってはならない行為です。自分の都合の良いようにデータを作ってでも、改竄してでも得てしまおう。こんな意識だったのでしょう。

但し、これは最近の政治において良く目にする光景ですね。
・検査をしなければ把握できる感染者数は少なくなる
・オリンピックを開催するので、コロナはすぐに収まるはずだ
・日本の感染者数が多いのは、他国が検査をしていないから
・5類にするために、コロナは風邪だと言おう
・世の中が回らなくなるから、感染後の待機時間を短くしよう
・消費税増税を行うため、データを改ざんしてGDPを高く見せる
・安倍首相がやめなくて良いようにするために、公文書を改ざんする
もう少し遡れば、勝っていると主張するために、戦果の数字を盛ることが常習化した第2次世界大戦中の大本営発表。

目的のためにデータは作られるのだ、とさえ考えている人が多いのでしょう。そしてだからこそ、都合が悪いデータはとらない、またはすぐに消そうとする。情報が重要だと思っていない。(最近のオウム事件の裁判記録廃棄はその実例)


このような社会は長く続く訳がありません。続いて良いはずもありません。

データは集めなければ集まらない。
集めたデータは何があっても改竄しない、破棄しない。
修正があったらその修正事実を理由と共に記録しておけばいい。

そしてこれはデータだけでなくあらゆる情報に共通する。これが、人類が長年の経験で得てきたノウハウなのではないでしょうか。