治療薬の有効性も統計学から

医療統計が、理工系で学ぶ統計学と大きく違う点は、対象が人であることによる各種の難しさがあります。今回は、それでも薬の有効性を判断するために使われているのは統計学、それにしても複雑で難しそうだ、という少し感想めいた話です。

新型コロナに感染した後、何が起きているのか、少しづですがわかって来たこともあるようです。この図は、とてもわかりやすいですね。

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ここに書かれているとおり、必要となる治療薬は感染のフェーズ毎に違い、①抗ウイルス薬・抗体薬、②免疫調整薬・免疫抑制薬、③抗凝固薬、④その他、があるそうです。

COVID-19では、発症後数日はウイルス増殖が、そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられている1]。したがって、発症早期には抗ウイルス薬または抗体薬、そして徐々に悪化のみられる発症7日前後以降の中等症・重症の病態では抗炎症薬の投与が重要となる2]。
現在日本でCOVID-19に対して適応のある薬剤はレムデシビルバリシチニブカシリビマブ(遺伝子組換え)/イムデビマブ(遺伝子組換え)の3薬剤である。デキサメタゾンは重症感染症に関しての適応がある。

中和抗体薬で有名な抗体カクテル療法で使われるのが、カシリビマブ(遺伝子組換え)/イムデビマブ(遺伝子組換え)。さらに最近は、経口のモルヌピラビルという薬も話題になっています。


いずれにしても薬が承認されるまでに、様々な治験が行われ、目的毎にその目的にあった被検者を集めたRCT(ランダム化比較実験)が行われるようです。ただしこれは、口で言うは易し。このような実験は、計画を先に立てなければなりません。条件にあった治験協力者を数多く集め、理解してもらうのは簡単ではないはずです。協力者はその治療を受けられたのか、プラセボ(偽薬)だったのか知らされない、これを理解してもらうだけでも大変でしょう。

そして統計処理に到着すれば、今度は仮説検定。

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「新薬と既存薬の効果に差はない」という帰無仮説をたてて、実際に起きた結果が起る確率を計算します。確率が、予め設定した値より低い場合、「新薬と既存薬の効果に差はない」が否定され、効果に差があると解釈されるわけです。(キーワードは、仮説検定、帰無仮説、対立仮説など)


但し、差があると解釈されても、薬なので有害事象も意識する必要がありますね。この点は、医療分野以外の統計学とは大きく違う部分です。

そして有害事象も、薬とワクチンでも扱いのレベルが大きく違います。薬は病気にすでになってしまった人へ投与されるもの。一方ワクチンは健康な人へ投与されるもの。当たり前ですが、薬とワクチン、その効果と副反応を考える時に絶対に意識すべきことだと思います。

(追記)もう1つ、データを見る時に注意すべきことがありました。特に薬。新薬の良すぎるデータには注意、です。薬害が後になって理解された事例はとても多いことを思い出したいものです。