人間ドックとPCR検査

まだ、PCR検査を無症状の人に実施しても意味がないとか、偽陽性が出るとか言う人(医師も)いるようです。PCR検査抑制論者の古い情報も残っていて、うんざり。直感的に理解するためは人間ドックと比較すると良いと思います。

そもそも人間ドックの目的は、病気と診断されていない人に対し病気である可能性をできるだけ見落としなく見つけ出すことです。多少の懸念がある人はピックアップし、精密検査で確定診断を下すことになるので、多少要検査が多くても問題になりません。(検査では、見落としを減らすなら病気でない人もピックアップしてしまうし、真に病気の人を見つけ出そうとすると見落とし増えてしまうのが普通です。)
ということで、人間ドックで何もなければ、ほぼ安心して良いはずと理解されます。そうでない場合も、いきなり入院はありえません。必ず精密検査に進み、それから医師が様々な結果を総合して診断します。

このような人間ドックにおいて、
   要精密検査になる人が多いから、そもそも人間ドックは不要だ!
と言いますか?


不思議の国日本で言われたPCR検査抑制論の主な主張は、感染していない不特定多数を検査をすると偽陽性が増える、それでも隔離するのか、医療崩壊を起こしてしまうではないか、という主張でした。

例えばこちら。たまたま見つけた山形市保健所長の1年前の文章です。

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少し古いですが、こんな主張がまだ堂々と掲載されています。

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偽陽性、偽陰性、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中立、というキーワードがちりばめられ、意味がわからないと煙に巻かれてしまうかも知れません。

数字の嘘の1つは、特異度が99%としている所。PCR検査の特異度はほぼ100%、偽陽性が出るのはコンタミと言われる検体の汚染か、またはPCRではなく抗原検査だと言われています。そしてたとえ特異度が99%で偽陽性が数多く出たとしても、人間ドックと同じ論理で再検査をすれば、全く問題になりません。この意味でも嘘があります。

この保険所長は、それでも何か思う所があったのでしょう。最後にこんないい訳をしています。

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しかし、確率において独立な事象が起きる確率は積になる、ということを思い出せば、たとえ1%=0.01の確率で偽陽性が起きたとしても、その検体をもう一度検査すれば0.0001=0.01%のエラーにまで減らせます。(ベイズの理論を持ち出す前に、独立性を考えるべき)

あとは、コンタミを起こすのは、ラボの恥であるため、極力出さないよう努力するはず、という心理と再検査も無視した言い分だと言えます。


そしてまだこんなことを言う医師がいる。。。2022/1/1のツイートです。

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「無症状でも希望者全員を無料で検査」することの無意味さ.市中の有病率を0.1%,PCRの感度50%(無症状期はこれでも高め),特異度99.9%(高めに設定)とすると,1万人検査して10人の感染者のうち5人を見つけ,5人を見落とすので感染拡大の防止は無理でしょう.また陽性的中率1/3で,2/3は濡れ衣です.

案の定、実態にあわないとかなり突っ込まれていますが。


すべての検査は、感度、特異度が詳細に検討され、その目的にあわせて閾値の設定が行われます。運用にあたっては、問題ができるだけ起きないように、幾つかの検査を組み合わせます。1つの検査だけですべて決まることはありません。そもそも検査だけで病気は確定しません。

感度、特異度などの数値はさておき、再検査をすればOK。
これが人間ドックからわかることです。