選択的夫婦別姓の歴史について【小学生にもわかる政治講座】

こんにちは。
衆議院議員の高井たかしです。

noteでは、コロナ関連情報をはじめ、生活の支えになる補助金・助成金のご紹介、そして国会議論の中身や報道されない国会の裏話など、「政治のハナシ」を簡潔にお伝えしてゆきたいと思います。

第3回目のテーマは「選択的夫婦別姓の歴史」についてです。

選択的夫婦別姓に反対する人たちの意見を聞くと、「日本古来の歴史を守るべき」という方が多いのですが、その歴史を振り返ると、実はそれほど古くからある制度ではありません。

歴史を踏まえると、日本は慣習的に夫婦別姓であった期間のほうが長いのです。

明治31年に民法が制定され、その時に初めて夫婦同姓が決められました。

では、江戸時代より前はどうだったのでしょうか?

そもそも庶民には苗字はなく、武士は別姓だったり同姓だったりと、いろいろなパターンがあったようです。例えば、源頼朝の妻として知られる北条政子は、源姓を名乗っていません。いくつかの資料(※)によると、「氏姓は系統を示すものと考えられ、古来から女は結婚で夫の家に入ったとしても、生家の氏姓は捨てなかった。妻は言うなれば『異性の人』であり、夫婦は別氏であった」と記載されています。

そして、明治31年の民法制定から夫婦“同姓”になり、さらにその後、日本が太平洋戦争に敗戦し、昭和22年に民法大改正が行われました。

この大改正の根幹は、「家制度の廃止」です。

「家制度」とは、明治31年の民法で決まった制度で、夫婦は「家」を同じくすることにより、同じ姓を称することとされました。

この頃の日本では、「夫が家長で、家族は家長の命令に従わなければいけない。結婚は、家長の許可を得なければいけない。妻は家に入る」等が民法で規定されていました。

しかし、この制度が「時代遅れ」として昭和22年に改正されましたが、この時、夫婦同姓だけは改正されませんでした。

その後、変化のない状態が平成8年まで続きます。

この間、国連からも「日本の夫婦同姓は男女平等ではないため改正すべき」と勧告を受けました。

平成8年になり、ようやく法務省の法制審議会(法務省がいろいろな意見を聞く学者の方たちの集まり)が「日本も選択的夫婦別姓を導入すべき」との答申を出しました。通常、法制審で答申が出ると、そのまま法改正しますが、当時の自民党の中では反対する議員が多く、結局、選択的夫婦別姓の法案を提出することができませんでした。

その後も、法務省は何度か法案を出そうと試みますが、やはり反対意見が多く、法案の提出には至りませんでした。

そして、令和2年。
大きな出来事がありました。

当時の橋本聖子男女共同参画担当大臣が、第5次男女共同参画基本計画の中で、選択的夫婦別姓を前向きに検討する方針を掲げましたが、これもまた自民党反対派の意見が根強く、基本計画の文中から「選択的夫婦別姓(別氏)制度」の文言が削除され、流れは後退してしまいました。

その結果、夫婦同姓を義務付けている国は、世界の中で唯一日本だけになってしまいました。

私は、夫婦別姓に向けて何度も国会で議論を重ねてきましたが、その度、菅総理大臣と上川法務大臣は必ずこう言います。
「国民各層の意見を聞き、国会での議論を注視しつつ検討していきたい」と。

これは、検討を引き延ばしている言い訳にしか聞こえません。

政府は「まず国民各層の意見を聞き」と言いながら、平成29年の調査で反対意見が多かったことを現在の議論に持ち出しています。
しかし、令和2年に行われた朝日新聞社による最新のアンケートによると前回(平成29年)に行ったアンケート結果と比べ、賛成派が11ポイント増え、反対派が13ポイント減り、この4年間で国民の意見が変わっていることがわかりました。
私は、いますぐ最新の調査を行うべきと政府に訴えています。

それからもう一つ。
政府は「国会での議論を注視しつつ」と言いますが、政府が何もしなければ国会で議論なんて起こりません。

やはり、平成8年のように法務省がまず答申を出して、国会に議論を投げかける。そして、国会で賛成・反対をしっかり議論することが重要だと思います。

国会議員が「男女共同参画」を論じながら、姓の自己決定権を認めないというのは、時代に逆行していると言わざるを得ません。引き続き、私は選択的夫婦別姓を推進すべく、今後も政府に訴えてゆきたいと思います。

以上、「選択的夫婦別姓の歴史」について説明させていただきました。

今回の内容を動画にもしましたので、よろしければご覧ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



※資料
井戸田博史「夫婦の氏を考える」世界思想社 2004年
高柳真三「明治前期家族法の新装」有斐閣 1987年

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