入院中の話
入院中医師や入院してる患者さんのご家族以外は女性ばかりなので気兼ねなくて、その上部屋も端っこなのでいろいろのびのびさせてもらってました。
その病棟の患者さんのお一人、私のいた部屋の奥は非常口。
その非常口の扉前にしょっちゅう来ては看護師さんと何やら話して促されて帰るを繰り返すおばあさん。
どうやら毎回「死なせてくれ」「非常口を開けてくれ」と言ってるのが漏れ聞こえてきた。
1日に何度もあちこちの非常口をガチャガチャ。
死なせてくれ、楽にしてくれ。
リアルでこれを聞いてると本当怖い。
術後すぐの夜中、2時過ぎだったろうか。4人部屋を1人点滴と心電図とドレーンの管と仰々しい設備なのと麻酔が抜けきっておらず微熱でボンヤリしているところにそのおばあさんと目が合った。
空いてるベッドのそばの窓があるもんだから勝手に入ってきてガチャガチャ。
怖くてナースコールを押した。だってその時麻酔切れたとはいえ動けなかったし。
すぐ看護師さんが来ておばあさんを連れて行ってくれましたが、また来るかもしれないので結局痛みとあの怖さに眠れずまんじりと朝を迎え。
翌朝は空きベッドに患者さんが入り、夜勤の看護師さんが交代前に昨夜はごめんなさいねー、と言ってきた。
今日はもう点滴も外れて動けるのでなんとか大丈夫です、とは答えた。
しかしビックリした。
あれは体験した人でしかわからんよなー。空き部屋ということもあって窓側のカーテン開けてたもんだからおばあさんと目が合っちゃって、おばあさんは外の街の光で白目がうっすら蛍光色っぽく光ってんの。
よく声出さなかったな、私。
そして翌日の消灯後。点滴やドレーンチューブ以外の管やらコードやらが外れて身体は動かせるようになったものの、切った箇所の痛みや眠りの浅さで何度も目覚めて身体動かして深呼吸してたんですが、件の自殺願望のあるおばあさんの部屋からドカッという大きな音がして
「あああああああああ!!!」
「誰かー、誰かぁぁぁぁ!!」
と何度も叫ぶおばあさんの声。どうやらベッドから落ちたようでした。
たまたま起きていたので看護師さんに伝え急いでやってきた看護師さん。
幸いおばあさんの身長に合わせてベッドを低くしていたので酷い状態ではなかったようで、応急処置で事なきを得たようで、安心したのと点滴が取れてから喉が渇いたので給湯にお茶を汲みに行った帰りにおばあさんの部屋を覗いたら看護師さんと夜勤のお医者さんに
「ああああああ」
「死ぬかと思ったぁぁぁぁぁぁ」
不謹慎かもしれないのですがおばあさんの本音だろうな、とついニヤリとしてしまいました。
翌日からおばあさんは雑談室で座って家族らしき人や違う部屋の患者さんらしき誰かと話しているのを給湯室に行く時に数度見かけたのですが、顔色は以前の死にたいと言ってた時より数段明るかったです。
帰り道退院で迎えにきたオトメにその話をしたらニヤニヤしながら「へなちょこはネタ持ってるなぁ〜」としみじみ言われました。
いや、あの顔夜中に見たらアカンよ!
非常口も窓も閉まってて良かったとしみじみ思ったよ。下手すりゃ私また別の意味で体験談語らないといけないのよ?!
やめてよー
「おばあさん、死にたかったんじゃなくて生きたかったんじゃないの?」とオトメ。
私もそう思う、とオトメに返した。こんな事がありました。
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