キャットウーマン
結婚して何かのバラエティ番組で『ドラマでありがちな台詞を言われたことがある人』というアンケートで、【100人に2人が『この、泥棒猫!』と言われたことがある】
という統計にオトメは笑いながら
「そんな奴ぁいないよ〜」
と言ったので
「私は、あるよ」
とHEROの田中要次さんばりのええ声で言った。
オトメはマスオさんのように大げさにえええええっっ?!と言った後に「マジで?!」という反応。そりゃそうだ。そんな人本当探したってなかなか出てこないよね。
ざっくり説明すると、半ば押し売りのように販売していた販社さんの商品を泣く泣く返品にきたお客様の話を聞き、じっくりお聞きした上で別の気に入った商品の説明をして売り場としてはプラマイ0でむしろプラスがついた状態で、件の販社Mさんは翌朝この件に物申してきたが上司と説明してその場は収まったように思えたが、昼間一番人の多い時間帯にやられた。その件で大きな恨みを買ってしまった。
「この、泥棒猫!」
と言われた後にビンタまでされて(痛くはなかった)それまで他の販社さんをターゲットにネチネチと嫌がらせをしていたがこの件できっぱりスッパリ『敵=私』に替わったという経緯がある。お客様も販売員も全員の目が私と販社のMさんに集まった。
売り場としては穏便に、とは言うが、販社さんとのキャットファイト(一方的に販社さんが貶し脅し罵る)に棒読みで返していたので更に恨みを買った模様。
『泥棒猫』
なんて昭和の大映ドラマの響きでしょう(棒読み)。あまりのことに口ポカーンだった。
昼ドラの惚れた腫れたで必ず主人公が意地の悪いライバルか、主人公より全てのスペックに秀でたライバルが許婚を取られた時に吐き棄てられるように言われる台詞。さらに100歩譲って最近の夜の嬢ドラマで主人公に鞍替えした上客を前にライバルがキャットファイトを…以下略。
その後もMさんは【私は悲劇のヒロインよ!】と言わんばかりにトゥシューズに画鋲を入れるような小さな嫌がらせを次々とかましてくれた。実際画鋲が何度か職場で履く靴に入ってたがそれはMさんかは分からず。
腹立たしかったが憎めなかったのはそのキャラが際立っていたところだろうか。
素晴らしく自分を挙げ、他人特に私を貶し落とす。題材が無くなるとMさん娘まで引き合いに出してMさん娘挙げ、私下げ。
そしてもう1人いる息子の存在はいつ聞いても「うちのボクちゃん」という。こんな姑がいたら間違いなく嫁は苦労確定する。
そんな販社のMさんも最初は儚さを全面に押し出していてMさんと仕事をして一週間で
「実は…私、A社のOさんとB社のSさんに意地悪されてるの」
と相談を受けた。他の販社さんにお客を取られるということだ。どういうことだろう?と確認し調べてみたら意地悪をしているのはその「意地悪されてるの」と言っていたMさんだった。Mさんは他の販社さんにすれ違いざま『ブス!』『消えろ!』という小声の攻撃はまだ序の口、上司へのアピールはMさん挙げ他の人下げを怠らない。今でいうマウンティングが激しい人で、B社Sさんの他の百貨店の同僚さんリサーチではかなり他の販社さんに嫌がらせをして自分の居場所を無くし転々としているとのことだった。
そのMさん、結局とあることで売り場を去るのだが、販社さん上司としては売り上げに貢献する人なので残ってもらいたい、と営業に回った。営業に回った後も売り場に立ち寄ってはネチネチと溜飲を勝手に下げていたようで、結局私が退社する時には
**
「あなたずっとヘラヘラしてるんだから少しは殴られるような苦労を味わったらいいのよ」**
…といって高らかな笑いと共に去っていった。本当に「オーホッホッホ」という笑い声をドップラー効果で聞いたのは後にも先にもMさんだけでキャラが立って実にドラマティックだった。
際立ったMさんのエピソードはその後も続き、営業先で販売してる時にお客さまにグーパンチで殴られた。経緯を尋ねると100%Mさんが悪く、転職してから他の販社さんが聞いてー、と遊びに行った時私に教えてくれた。腫れが引かず数日休んだらしい。本来なら警察が介入してもおかしくないが、結局百貨店側かどちらかが示談で済ませたようでその後は聞いていない。私よりもMさんが人生の大一番で殴られてしまって、「やー、殴られちゃいましたね☆」とかひと昔前のネットで見た「ねえ、どんな気持ち?」というAAを当てはめればさらにファイヤな事態を起こしかねないのでどうコメントしていいか複雑だったのは記憶している。
Mさん、今も高らかな笑い声と共にマウンティングしているんだろうか。あの時40後半だったからもうそろそろ引退してるとは思うが、販売に良い意味で貪欲な人だったので続けていそうな気もする。今ならシルバーバックと名付けてみたい。多分よく燃えると思う。
その話をした後、オトメ他の友人にも大笑いしながら
「【キャットウーマン】だ!」
という有難くも嬉しくない二つ名を賜った。
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