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やぐら投げ

こんにちは。
11月のシンガポール遠征記以来の投稿です。

試合後は大きくは変わらず基本的に練習と指導の繰り返しの日々を過ごしています。
去年くらいから力を入れて練習し始めたレスリングの勉強も継続して続けています。最近はカルペディエムにレスラーの方がよく練習に来てくださるので、そういった機会も利用しながら学びを続けています。

YouTubeでよくレスリングの動画も見るのですが日本人選手に限らず海外の選手の動画も見ます。というか日本人選手より海外選手の方が動画の数も多いし多種多様なレスリングを見れて非常に面白いです。

レスリングの強豪国としてはアメリカ、ロシア系、イランとかが強い印象、グレコローマンはヨーロッパとかが強い印象。アジア圏の選手も最近はよく調べて見ます。

そこで気になった選手をちょっと紹介します。

◾︎レスリング

キルギス共和国(旧キルギスタン)の Taiyrbek Zhumashbek 選手
読みとしては「タイルベク・ジュマシュベク」でしょうか?なじみがなさ過ぎて読むの難しい。

この選手はおそらくレスリングでは珍しい「やぐら投げ」の使い手です。やぐら投げとは相撲でもある投げ技で相手を正面に見たまま相手の股の間に踏み込み、片足を跳ね上げる勢いで持ち上げて投げる技です。
きれいに技が決まった時はとても豪快で相手を背中からしっかり落とせてビッグポイントを取りやすいです。
この選手の試合を見てるとタックルを打つことはほとんどなく、もろ差しからのやぐら投げで試合を極めています。

英語ですが細かく説明してくれています。

グレコローマンでよくある「そり投げ」に似てる感じがしますが、そり投げは捨て身になりながら強烈なブリッジ力で返してるのに対して、やぐら投げは相手を真上に跳ね上げ柔道の担ぎ技のようにしっかり相手をコントロールして投げている印象です。

このレスリング選手のスタイルはかなり珍しいタイプだとは思うのですが、やぐら投げ自体は他の格闘技でも割と見られるポピュラーな技です。

■相撲

やぐら(櫓)投げという名称ももともとは相撲での呼び名のようです。

櫓はもともと「矢倉」といい弓矢や刀などをしまう武器庫を意味していて、見晴らしのよい高い場所に作られていたもののようです。
おそらくやぐらのように相手を高く持ち上げる様からその名前の付いたのでしょう。

相撲の場合まわしを持って引き付けてから片足を股の間に入れて相手の体を持ち上げます。相撲の動画で何度が見たことがありますが、これを100キロ以上の力士がするのは圧巻です。

4分半あたり。少しうっちゃり気味ですが豪快!

ただやはり相撲でも珍しい決まり技のようである程度体格差がないと難しいようです。巨漢同士だから当たり前かな。

朝青竜の母国のモンゴル相撲にも同様の技があるようです。

■沖縄角力(おきなわずもう) 

※角力と書いてすもうと読む

沖縄で昔から行われている伝統的な格闘技である沖縄角力でも同様の技があります。よく決まる技であるようです。
※かつて相撲のことを角力と呼んでおり、「角」という文字には「動物の角」以外にも「力を比べる」「武力で勝敗を決する」の意味もある。相撲界のことを角界とよぶのもこれが由来のようです。

沖縄角力の特徴としては最初から組み合った状態(合四つ)で始めるのでやぐら投げを仕掛けやすい状態が最初からできています。

かつて柔道の全日本チームも沖縄角力を体験していました。

遠い間合いから技を仕掛ける柔道の組合とはまた違う体の使い方で対海外選手のためでしょう。

■柔道

このやぐら投げ近年では柔道でも使う選手が増えてきていて特に海外選手が得意にしている印象です。
私が柔道をやっていた高校生時代(2007年ごろ)は世界柔道でも見たことはなかったです。

柔道の場合は帯か背中の道着をもって相手を引き付けて、片足を入れて投げるのは他と同様です。日本人では東京オリンピック金メダルの高藤選手が得意にしています。

海外選手ではオーストリアの Fara Aaron というやぐら投げしかやらない選手がいます。ハイライトを見るとフィジカルの凄まじさが伝わります。
帯さえ持てればあとはパワーで強引すぎる形で相手を投げ飛ばしています。相手は手が自由な分、どうしても手を畳につこうとするので見ててヒヤヒヤします。

凄すぎて逆に参考にならないレベルですが海外の柔道はたまにこういう技一つで勝負する選手がいるので非常に興味深いです。日本でこればっかりやってたら絶対怒られそう。練習では他の技も練習してるかもしれませんが一番自信のある技なのでしょう。

ちなみにYouTubeで検索するときは「front uchimata」と入力するとたくさん出てきます。柔道の普通の内股が背中を見せて投げるので、それと逆の正面からなのでfront Uchimata なのでしょう。
昔からある内股とは似てるようで全く違う技と言ってもよいので、個人的には内股とは別の技として正式に加えて欲しいと思っています。

■最後

最近グラップリングで立ち技の重要性が認識されるようになってレスリングなどの立ち技の技術で注目されていますが、今回のやぐら投げはグラップリングでも応用できるのでしょうか。

私個人の意見としては応用は可能ですが狙える機会自体は少ないと思います。
やぐら投げの条件として基本的に四つかもろ差しでしっかり組んだ状況を作り出さないといけないので、そこがまず難易度が高いです。

柔道や沖縄角力のように帯で相手を引き付けることが出来れば一気に容易になりますが、裸だと基本的に難しいです。

ただ技自体は日本人向きかと思います。欧米人のような手足の長いすらっとした体型より日本人ような太くて短く強い足腰の方が相手の懐に入りやすいと思います。

最初に紹介したZhumashbek 選手はキルギスですが、日本人とキルギス人は祖先が同じという説があるほど顔立ちが似ているようです。(少し都市伝説的な話ですが。。。)
なのでより日本人に近い体系のアジアの海外レスリング選手の動画から研究することも最近は多いです。
例えば検索するとき「wrestling KGZ」や「wrestling MGL」などで各国の選手の動画がたくさん出てきます。(ほんとyoutubeがある今の時代は情報収集が楽)

とまあレスリングを研究したい方はご参考にしてください。
古代から続くおそらくもっとも古い格闘技であろうレスリングをまだまだ学び続きたいですね。
あ、いつか一回くらい試合にも出たいです。

レスリング動画を見ていたら突然思い立って久しぶりにnoteを書きましたが、かなりニッチでよりマニアックな話になったので需要があるのかわかりません。

この記事が面白かったらスキなどお願いします。

ではまた。


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