採用方法の選び方について

はじめに

ここで説明するのはある場面においての採用戦略の考え方についてです。
特定の業界や方法を否定するものではありませんので、あらかじめご理解ください。

採用活動の際に使用する人材サービスは大きくわけて3つあります。
『求人媒体』『人材紹介』『人材派遣』
この中で人材派遣は直接雇用ではないため、今回のテーマには含まないのと紹介予定派遣は”人材紹介”に含んでお考え下さい。

さて、先日私が投稿したこのポストについて、私が何を言いたかったのか解説いたします。
ちなみにこのポストについての反省点として、状況の説明が不足していたと思います。
この会社の場合、
今まで募集を打ち出していたわけではなく、今回が初手になります。
そして5人を同じタイミングで採用することを計画しています(完全に同日入社というわけでなくても良い)。
最後に中途採用です。
付け加えるのは以上です。
(もちろん採用方法を検討する上で、会社規模、募集職種、必要経験、ペルソナ、その他諸々、考慮すべき条件は様々ありますが、今回の判断基準にそれほど大きく影響しないため割愛します。)

どこが間違っていたのか

答えは『人材紹介会社を選択しようとしていたこと』です。
この場合の募集は”人材紹介”ではなく、”求人媒体”を利用すべきだと考えます。
それを解説するためにまずはそれぞれの特性と人材紹介においてのプロセスを解説いたします。

それぞの特性

『求人媒体』

【コスト目安】
1ヶ月(4週)掲載で50~100万円
課金型の商材もある(多いのはクリック課金型)

【メリット】
採用が上手くいけば費用的に割安となる

【デメリット】
採用出来なくても費用がかかる
条件的に弱いと埋もれやすい
応募者のフィルタリングがかけられない

『人材紹介』

【コスト目安】
理論年収の30~35%が一般的

【メリット】
成果に結びつかない場合、基本的に料金の発生はない
書類選考を紹介会社が行うため、プロセスの簡略化が期待できる(ただし紹介会社からエントリーがあった求職者の書類選考は行う)
短期間で退職に至った場合(企業側に責任がない場合に限る)、費用の一部を返金されることが多い(契約の内容による)

【デメリット】
年収の交渉がされやすい(募集時や面接時よりも高く交渉されやすい)
並行案件が生まれやすい
本人に前向きな意思がない応募が生まれやすい
担当者のリテラシーによって結果が左右される場合がある

紹介のプロセス

私の専門は人材紹介であるため、人材紹介の観点からどのような企業や求人に相性が良いのかというのを解説してみます。
そのため、まずは企業に人材紹介するまでのプロセスをお伝えします。

集客

スカウトメール(DB、求人媒体)
求人媒体からの応募(実案件に対しての応募)

面談

希望条件、趣向のヒアリング
面談時には求職者がリアクションした求人情報の詳細を開示し、エントリーの可否を伺う
その後、別の案件へのエントリーも働きかける

エントリー(書類選考)

基本は複数社にエントリーする
エントリー方法としては履歴書・職務経歴書を最初から送ることもあれば、自社のエントリーシート(個人情報を記載していないもの)を使用する場合もある

面接対策

回答内容のブラッシュアップ
基本的には面接担当者の特徴を伝え、どのような回答をすれば通過しやすくなるかをレクチャーする

意向確認

求職者、企業双方に意向を確認(面接の都度)

条件交渉(年収、入社時期など)

紹介会社の売上(利益)は理論年収によって決まるため、条件交渉は必須である

入社前フォロー

内定辞退を防ぐことが目的

入社

なぜ間違っていると言ったのか

この場合、考慮すべきなのは”人数”です。
5人という募集人数から見て人材紹介は適切ではないと考えます。
ただしここで冒頭で申し上げた”初手”という状況説明が不足していたことは良くなかったと思います。
本当に正しくは『5人という募集を行う際、初手から人材紹介という方法は間違っている』ということです。

その理由

その理由を考えるにあたって、複数の観点で説明いたします。

期間

募集を行う際、当然「いつまでに採用したい・しなければならない」というリミットは存在すると思います。
その場合に調整すべきポイントとして、
『年収レンジ』と『序盤で使用する予算』が挙げられます。

『年収レンジ』については”優位性がある案件”が成果につながりやすいということになるため、同業の募集相場、地域の募集相場などから目を引きやすい条件を決めていきます。
ここは求人媒体も人材紹介も大きな違いはありませんが、求人媒体は”MIN”の設定が影響しやすく、人材紹介は”MAX”の設定が影響しやすくなります。
なぜかというと、募集発見に至るまでのプロセスが違うからです。
求人媒体についてはネットの普及により、条件の絞り込みが容易にしやすく、『足切り』されないことがまずは重要となります。
これに対して人材紹介では企業を紹介するのは”人”であり人を動かすのは”組織”であるため、より条件の良いもの(売上に繋がりやすいもの)が積極的に勧められやすくなります。

次に『序盤で使用する予算』の調整についてですが、求人媒体については掲載する媒体の数やサイズを変えることで調整は可能です。
しかし人材紹介の場合は紹介会社を何社にしようが、かかる費用に違いはありません。
なので人材紹介を利用する場合は出来るだけ多くの企業と契約することをお勧めします。
ただし、増やせば増やすほど業者との連絡頻度は多くなりますので、労務コストはかかることになります。

また求人媒体と人材紹介を併用すればよいという意見もあると思いますのでそれについて解説します。
結論から言えばそれが期間短縮に寄与する可能性はそれほど高くはありません。
それはなぜか。
人材紹介の集客方法は源流を辿れば”求人媒体”へ行きつくか、同時並行して求人媒体を利用している求職者が多いからです。
『潜在層』に近いか『顕在層』に近いかという違いはありますが、どちらも募集側から積極的に取れるアクションの方法は限られているのと
上記の通り並行利用している可能性が高いため、結果は変わらない場合が多いです(人材紹介の方が顕在層に近いと言われている)。

まとめると、期間にはそう違いがないのと並行して利用することで得られるメリットは多くないということになります。

利用者の”質”は変わりません。
ただし、人材紹介にしろ求人媒体にしろ『得意としているTGの層』は企業毎に違いがあるためそれは選定の際に確認、検討する必要があります。
※ここで言う質は、応募者の転職に対しての”熱量”です。
もちろん個人差がありますので、大局的に見てということにはなります。
ただし”人”という要素が介入している分、書類通過から面接実施の確率は人材紹介の方が高い傾向はあるかと思います。

労務コスト(手間)

これについては『質』の項目でもお伝えした通り、書類通過から面接実施の確率が高いため、人材紹介に分があると言えます。
しかし「応募が来過ぎて困る」という場合以外、各媒体の管理システムが発達している現在ならそれほど明確な違いは出ないはずですし、
よく言う「人材紹介は1次選考を代わりにやってくれるようなもの」というのもあまりあてに出来るものではありません。
なぜかと言うと、実際書類選考(紹介元→紹介先)で”不通過”となるケースは少なくないですし、さらに紹介会社は決定率(内定獲得率)を上げるために、複数の案件に応募する場合も少なくありません。
その際に事業内容や企業そのものに興味がなく入社の可能性が低い求職者でもエントリーを促すケースは少なくありません(面接の練習という名目の場合もあります)。
それを考えると労務コストという面で言えば、それほど差はないといえます。

コスト

条件として”20代後半の年収中央値『333万円』”を基に算出します。
人材紹介の場合では
1人当たり、333万円×35%=116万5500円(税別)となり、
1~2か月分の求人媒体掲載とほぼ同等のコストとなります。
そして例のように5人採用した場合では、582万7500円(税別)となり、
これは求人媒体を使用した場合、約半年は掲載できる金額であり、
媒体を複数使用したとしても3か月以上は可能となります。
これだけの期間があれば途中で内容(媒体選定のやり直し含む)をブラッシュアップしていくことが可能であるため採用できる確率はそれほど低くないと判断できます。
まとめると、少人数なら人材紹介に分があり、多くなるにつれて求人媒体の優位性が高くなります。

リスク

これは完全成果報酬型である人材紹介が優位性が高いと言えます。
しかし前述のように長い期間の募集が可能な場合はそのリスクの差は少なくなります。

結論

今回のように5人募集というケースでは、求人媒体と人材紹介のコスト比が”5倍”近くある初手から人材紹介を使用した形での募集活動は、必要以上に予算を使ってしまうことが考えられるため効果的なやり方とは言えません。
当然求人媒体で全く応募がないとなった場合は次点の策として人材紹介を使用することは否定はしませんが、求人媒体で反応がなかったものは人材紹介でも反応がないと考えた方がよいでしょう。
大事なのは募集内容を市況にアジャストさせることであり、逆に言えばそれさえ出来ればどの方法でも採用に繋げることは可能なのです。

最後に例外としてマッチングが非常に困難な場合が挙げられると思いますが、この場合は求人媒体も人材紹介も適切とは思いません。
その場合はヘッドハンティングやハイクラス特化のダイレクトリクルーティングなどをお勧めします(個人的にはSNSでのスカウトも有効だと思います)。

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