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心はわたしの連続体で

信仰度★★★★☆

1.父の叱咤

ある時、自分なんか何一つ変わっていないなという感情が差し迫ったのです。

その折、ちょうど父がそばにいたのでその旨をこぼすと、父はバカだなと一言呟き、そしてこう続けました。

自分そのものなんてそうそう変わらない。というより、自分の変化を自分で実感することは難しいんだ。
変わるとすれば、自分を取り巻く環境が変わっていくんだ。付き合う相手が変わる。取り組む仕事が変わる。それが人が変わるということなんだ。自分ただ一人を見つめるだけでは、自分の変化は実感できない。

とまぁこういうことを言われました。聞いていた私は、自分自分うるさいなぁと思いました。

2.変わる周囲と留まる自己

組織にせよ会社にせよ、所属する年限を重ねれば、次第に立場や自らを取り巻く環境が変わり、それに伴って自分の立ち位置も相対的に変化します。それは単に自身の昇進、出世の時だけ生じるものでなく、隣のデスクに座る人が変わった場合でもきっとそうです。

そしてこれは時として自分の望みやビジョンとは裏腹に進んでいきます。

周りの景色は変わっていくのに、自分はいつまで経っても変わらず未熟なまま。そう思うと、なにか自分だけが置いてきぼりを食らったような気がしないでもないです。

3.周りの景色がどう変わるかで、自分の変化を知る

しばらくして、今度は自分の立場が少し変わりました。一般的にみれば、ある立場に上昇したといえる種類の変化です。

少しずつ、今までとは違うものが目に映るようになりました。わずかですが心に映る世界に変化が起きました。そして、かつて耳を痛めた忠告が、ここに来て、なるほどと合点がいったりもしました。


とはいえ、自分自身を見つめるならば、やはり置いてきぼりを感じていた時の自分と大して変わらない。変わらないまま一段階段を上がってしまった。そんな心地です。

天理教では、神さまは人間の心に対して、身体や、それを取り巻く環境全てを貸してくださり、反対に人間から見るならば、自らの体をはじめ、身の回りの一切は自分たちの心通りに神さまから貸してもらっている、
人間にとって真に自分のものはこの世に何一つなく、全て神様が貸してくださる恵みによって、生かされて生きているのだと聞かせていただきます。

そして自分が認知する事象、誰と会い、どんな付き合いをするかは、自らの心のありようによって定まってくるといいます。
眼前に繰り広げられる現実は、いわば自らの心の映し鏡であり、自らの心のあり様は、神さまから今何をどの様に貸していただいてるかによって省みることができるのです。

「人間というものは、身はかりもの、心一つが我がのもの。たった一つの心より、どんな理も日々出る」
おさしづ(※神さまのお言葉) 
明治22年2月14日


これが「かしもの・かりもの」と呼ばれる教えで、天理教の根幹をなす教理であります。

「かしもの・かりもの」についてはこんな記事があります。


人間の身体について、キリスト教でいうGiftとの違いという視点から「かしもの・かりもの」の意味限定をはかっているのが特徴的ですね。

記事タイトルの通り、とてもわかりやすくまとまっていますので、私のこの記事では「かしもの・かりもの」の説明は端的なものに留めます。

4.「かしもの・かりもの」の追求がフォーカスする「心一つが我がの理」

身体や身の周り一切がかしもの。このことから強調されるのは、「全てがかしものである」ということそのものよりも、その奥にある、「心だけが自分のもの」ということだなというのが最近の感慨です。

ちょうど、白い紙にあれも黒あれも黒とどんどん塗り潰していくと、最後に残った余白が際だって見えるようなものかと思います。心こそが、この世で唯一自分の自由であるのです。天理教語で表現するなら「心一つが我がの理」です。

最初の話題に戻ると、周りのもの全てが心通りのかしものならば、周りの景色が変わったと感じるということは、それは心に映る世界が変わったということです。

それに気づかない、気付きにくいのは、心が、色のグラデーションのような「わたしの連続体」であるからだと思います。周りがいかに変ろうとも、心だけはこの命がある限り「私のもの」として保持し続けるのです。

心の変化(成長といっても良いかも)は自らの心のみを見つめる中にはなかなか見えてこないかもしれませんが、心に映る世界を見つめるなかに、静かに悟れていくものだと感じますね。

ではなぜ神さまはかしもの・かりものの世界を拵えたか。借りているわれわれの自由な心はどう使うのが望ましいか。

それは互い立合い助けあいの陽気ぐらし世界を神さまが望まれたからであり、そこへ向かうような心の使い方が望ましいというのが、シンプルな答えでしょう。
これに関してはもう少し掘り下げなければと思いますので、今回は深く言及せずにこれにて留めます。また。


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