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親密さの舞台裏:若者のカジュアルな関係が明かすコンドーム使用の真実

割引あり

この研究は、18〜29歳の若者728人を対象に、様々な種類の関係におけるコンドーム使用パターンを調査しました。
主な発見として、コンドームの使用は関係の種類よりも、親密さのレベルに大きく影響されることがわかりました。

調査の結果、以下のことが明らかになりました:

  1. コンドームは膣性交で最も頻繁に使用され、オーラルセックスでは最も使用頻度が低かった。

  2. 一部のカジュアルな関係(例:フレンド・ウィズ・ベネフィット)では、コミットメントのある関係と同程度のコンドーム使用率が見られた。

  3. 関係の特徴は主に「コミットメント」「セクシャリティ」「親密さ」の3つの要因に分類された。

  4. 親密さ(パートナーとの面識や事前の準備など)が高いほど、関係の種類に関わらずコンドーム使用率が高くなる傾向があった。

この研究結果は、若者向けの性教育や健康介入プログラムの改善に役立つ可能性があります。
特に、様々な種類の関係について教育し、パートナー間のコミュニケーションを促進することが重要であると示唆されています。

今後の研究では、より客観的な測定方法や長期的な調査を行うことで、これらの発見をさらに深めることができるでしょう。

Godinho, C. A., Pereira, C. R., Pegado, A., Luz, R., & Alvarez, M. J. (2024). Condom use across casual and committed relationships: The role of relationship characteristics. PloS one, 19(7), e0304952.


はじめに

性感染症の世界的課題

クラミジア、淋病、梅毒、トリコモナスなどの治療可能な性感染症(STI)に毎日100万人近くが感染しており、性感染症は依然として世界的な公衆衛生の重要な課題となっています。
さらに、HIVは引き続き大きな脅威であり、2021年だけで150万人が新たに感染し、65万人がエイズ関連で死亡しています
若年成人は特に脆弱で、性感染症診断率が最も高くなっています。

コンドーム使用のパラドックス

コンドームは性感染症を予防する最も効果的な方法の一つですが、その継続的な使用率は驚くほど低く、世界的に見ても50%前後かそれ以下です。
さらに懸念されるのは、コンドームの使用率が時間の経過とともに低下する傾向にあることで、特に若い成人の間では、以前の世代よりも性感染症が脅威でないと認識されている可能性があります。

カジュアルな性的関係の複雑さ

一般に信じられていることとは異なり、カジュアルな性的関係(casual sexual relationships: CSR)は均質なカテゴリーではありません。
一夜限りの関係からフレンド・ウィズ・ベネフィットのような継続的な関係まで、幅広い出会いがあります。
これらの関係は、感情的関与、親しみ、性的親密さの点で大きく異なります。
このような微妙な違いを理解することは、さまざまな関係のタイプにおけるコンドーム使用のパターンを理解する上で極めて重要です。

関係の特徴がコンドーム使用に与える影響

研究によると、コンドームの使用はパートナー間の関係の性質に大きく影響されます。
感情的な近さ、コミットメント、親密さなどの要因は、コンドーム使用の減少と関連しています。
しかし、ほとんどの研究は、コミットメントされた関係とカジュアルな出会いにおけるコンドーム使用の比較に焦点を当てており、カジュアルな性的関係内の多様性を見落としています。

バランスの取れたアプローチの必要性

現代の人間関係の複雑な状況と、それが性的健康習慣に与える影響を考えると、より幅広いタイプの人間関係におけるコンドーム使用を調査することが急務です。
本研究の目的は、コミットメントされた関係と様々な形態のカジュアルな性的関係の両方におけるコンドーム使用パターンを記述することであり、同時に特定の関係特性がこれらのパターンをどのように媒介するかも調査することです。

方法

参加者

この研究には当初972人が参加しましたが、最終的には18~29歳の若者728人(M=22.56、SD=3.01)をサンプルとしました。
大多数(67.9%)は女性で、55.1%が大卒。
G*Powerを用いた検出力分析の結果、信頼度95%、検出力80%で、中規模から小規模の効果(f = 0.15)を検出するには492人のサンプルサイズが必要であることが決定されました。

デザインと手順

この横断研究は、様々なプラットフォーム(電子メール、WhatsApp、Facebook)を通じて配信されるオンライン調査を利用。
参加者は、ヨーロッパ系ポルトガル語を母国語とし、少なくとも1回の性経験があること。
データ収集は2021年7月19日から2022年1月19日まで、Qualtrics®プラットフォームを使用。
本研究は、研究者の所属する学部の倫理・擁護委員会の承認を得て実施。

測定

質問票は主に4つのセクションで構成:

  1. 社会人口統計データ: 年齢、性別、交際状況、宗教、学歴、職業。

  2. 簡単な性歴: 最初の性体験の年齢、性交渉相手の数、相手の性別、性的指向。

  3. 過去1年間の交際歴: フックアップ、フレンド・ウィズ・ベネフィット(FWB)、ブーティ・コール、ワンナイト・スタン ド(ONS)など、コミットした性的関係およびさまざまなタイプのカジュアルな性的関係(CSR)に関する情報。

  4. 現在の関係: 交際の種類、期間、パートナーの性別、性交渉の頻度、コンドームの使用など、参加者の現在または直近の交際に関する詳細な質問。

関係の特徴

参加者は、各関係のタイプについて10個の関係の特徴を-3(まったくない)から3(まったくある)の尺度で評価。
これらの特性は、コミットメント、感情的・性的独占性、感情的関与、パートナーの知識、出会いの事前準備、親密さ、性的関与、繰り返し、性的満足度など。

コンドーム使用

コンドーム使用は3つの異なる尺度を用いて評価:

  1. 最後の出会いにおける使用

  2. 最近1ヵ月間のさまざまな性行為における使用頻度

  3. 前月のコンドームなしでの出会いの割合

データ分析

データ分析はIBM SPSSを用いて実施。
以下の分析を実施:

  • 研究完了者と脱落者を比較するためのANOVAおよびカイ二乗検定

  • 性生活歴と現在の関係を記述するための記述統計とANOVA

  • 反復測定ANOVAによる性行為間のコンドーム使用の差異の特定

  • カジュアルな性的関係における関係特性の構造を調べるための探索的因子分析(EFA)

  • 関係タイプ間のコンドーム使用の違いが、EFAで特定された因子によって説明できるかどうかを調べるための、JAMOVIを用いた媒介モデル

EFAの結果、カジュアルな性的関係特性の因子適合性は許容できることが判明(KMO=0.86、バートレット検定:χ2(45)=1618.35、p<0.001)。
1以上の固有値とscree plotの検討に基づいて因子が抽出されました。

結果

脱落分析

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