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【コラム】マーダーミステリーの「三刀両毒」問題

マーダーミステリーにはよく、可哀そうなくらいに満身創痍の被害者が登場する。キャラAが毒を飲ませ、キャラBが頭を殴り、キャラCがナイフで刺し、キャラDが首を絞め……と複数の登場人物がそれぞれ何らかの動機をもって別々に手を下した結果、そのような不憫な仏さまができあがる。

被害者のそのような状態を、中国のマーダーミステリー界では「三刀両毒」というそうだ。専門の用語が作られるくらいによくあるということである。

マーダーミステリーのシナリオを作る側としては、複数のキャラに容疑がかかるようにしたい。被害者に恨みを持つ者が複数いて、それぞれが手を下すという展開は作者にとって都合がいい。

ご都合主義の産物、「コナン君がなぜか行く先々で事件に遭遇する」みたいなものだが、それ自体は特に悪いことではない。問題は、作り方がまずいと登場人物の自白大会になってしまうことだ。

例えば、早い段階で死因が胸の刺し傷であると特定されてしまうと、胸を刺す以外の方法で犯行に及んだプレーヤーは容疑を逃れるべく「毒を飲ませたのは俺だ」「首を絞めたのは私よ」などと次々にぶっちゃけ始めかねない。これはかなり無粋な展開だし、犯人にとってかなり辛い。

自白大会を避ける方法の一つは、サブミッションで縛ることである。自分の行動を暴露すると達成が難しくなるようにサブミッションを設定すれば、安易な自白は慎むだろう。例えば、自分は殺し屋で、それが他のプレーヤーにバレてはいけないというサブミッションが課されていれば、被害者の死因が後頭部への衝撃だとわかったところで、「毒を飲ませたのは認めよう。だが殴ってはいない」などとは言いにくくなるだろう。「なぜ毒を用意できたのか」「被害者との関係が薄い君がなぜ毒を飲ませたのか」などと問い詰められて殺し屋であることがバレてしまうかもしれないからだ。

マーダーミステリーの面白さは、各々が何らかの秘密を抱えており、これを言えば犯人特定に近づくが、同時に秘密も暴露されてしまう……というジレンマにある。ジレンマはゲームとしての面白さを生み出す。システムの自由度が高いのがマーダーミステリーの特徴の一つではあるが、どのようなシステムを採用する場合でもゲームとして楽しめることは大切にしてほしいと思う。

ノートに「スキ」をしていただくと、あるボードゲームの中国語タイトルと、それに対応する日本語タイトルが表示されます。全10種類。君の好きなあのゲームはあるかな?