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結婚式の主語と意味

結婚式をやろうと決めてすぐ「結婚式の主語は誰なんだ問題」に直面した。当然主役は新郎新婦だけれども、企画も新郎新婦で、場の目的は「結婚の宣言+家族に感謝を伝えること」。

仕事のプレゼンであれば主役は顧客やオーディエンスであり、私が表に立つことがあったとしても主役のサポートをするのが目的。例えば「新郎新婦が家族にこれまでの感謝を120%伝えること」みたいな目的を設定すると、私とパートナーで思っていることも違うし、両親や弟妹に対して思っていることもそれぞれ違うし、まして新婦側は家庭環境が若干複雑やし、それぞれ数回しか会ったことなくてクライアントのことを十分理解していないし、目的がブレブレになるのが目に見えていた。目的を真っ直ぐ実現しようと失敗する。そういう状況。

しかも家族は「新郎新婦を祝いたい」という思いを持ってやってくるが、祝う具体的な方法は言葉(とお金)で伝えるしかない。この状況で「祝いたい」という気持ちを引き出し「十分祝えた満足感」を感じてもらうのは至難の業。全然できる気がしない。アイデアがない。

うーん困った、難しいなーと思い、もう割り切って目的を「せめて私たちのことくらい知ってもらおう」ということにした。双方実家にあまり帰らず互いのことも十分理解してもらえてないので、せめて自分の息子娘兄姉のパートナーがどんな人か知ってもらおう。私のことを知ってもらうには私が好き放題プロデュースして喋るので十分。お茶会のノリでできる限りのご馳走をしよう。パートナーは口数少ないしやりたいことないし、私が楽しそうにしてたらそれでよいという人なので(聖人かよ)、のほほんとしていただくことにした。下鴨神社での結婚式に高台寺十牛庵でのお食事会というレア体験と、私たちが仲良く暮らしていることとそれぞれの人柄が伝われば家族は喜んでくれるような気がする。
なんかこの時点で目標ブレまくってる感じもするけど笑 これ以上考えられない〜。しつらえは私の趣味全開にしてることもあるし、話すネタはなんかあるやろ。あとはもうノリで行こ!

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ところが、最後の最後に私が頭の中でぐるぐる考え悩んでいたことは一切無駄だったとわかった。大きな前提を見逃していた。
 
私たちは愛されていた。生命が始まった瞬間から、無条件に両親から愛されていた。愛おしいと思う気持ちは一方的なもので、見返りを求めずただただ与えられる。
大きくなる過程で親のことを鬱陶しく思ったり、家族関係がうまくいかなかったこともあるだろう。親が子を愛するからといって、子が必ずしも親を愛するわけではない。そもそも親側もずっと子を愛しいと思っているわけでもなく、憎たらしいときも腹立つときもあるだろう。
そうであっても、心の底で親が子を大切に思う気持ちが消えることはない。親子や家族ってそういうものなのか、と最後に皆からひと言ずつもらったときに理解した。
愛おしい存在が何をしてもしなくても、元気で楽しそうにやってたらそれでいい。たまに顔見せてくれたらなおよし。
 
親から見た愛おしい存在の子どもが、愛おしい存在を見つけてきた。2人で一緒に生きていこうと言っている。新たなムスビが生まれることはもうそれだけでめでたい。その思いを共有する場があるだけで十分。6人のコメントを総合すると、そんな気持ちが浮かび上がった。

結婚式の主語は新郎新婦v.s.家族の二項対立ではなく、それぞれ一人一人だった。もし友人を呼ぶ披露宴ならホストv.s.ゲストの意味合いが強いだろうけど、家族のみの挙式とお食事会では少し違った。それぞれの人生の中の息子娘兄弟の結婚式という1日であり、2人が一緒に生きていくことを咀嚼し、おめでとうの言葉が伝えられたら、多分何でもよかった。
 
親にとって子どもは、存在するだけで赦されている。だったら、結婚式は虚構かもしれない。でも「場」がないと、何を考えているかが互いに伝わらない。親に愛されてることなんか小さい時から考えたこともないし普段忘れている。神様でも仏様でも人間でも何でもいいけど、結婚を宣言することで、忘れていたたくさんの愛、自分を成り立たせている力に気づく。そういう装置だとわかっていたから、結婚式が昔から世界中で行われているのだろう。ハレの儀式は全部同じような意味なんじゃないかな。
 
無条件に愛してくれる人がこの世に3人いる。パートナーにも3人いる。結婚式の1日が終わる頃に気づいて胸がいっぱいになって、なんと幸せなんだろう。と思ったら心が追いつかなくなって、涙が溢れていた。

「嬉しくて泣くのは 悲しくて笑うのは 僕の心が 僕を追い越したんだよ」
なんでもないや RADWIMPS

パートナーに出会わなかったら多分私は「君の名は。」を見ていない。RADWIMPSの詩にも気づいていない。彼は新しい世界を見せてくれる。1人では見えない世界に行ける。もうそれだけで、有難いことなんだよな。

《終わり》

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