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【イリスのゲーム・制作記録①】 自分好みの戦闘をつくろう編

ごあいさつ

本記事はVer 2.0公開(2020年12月)以前に執筆したため、現行のバージョンと少し差異があります。ゲーム公開当時の情報を残すため、内容はそのままにしています。

こんにちは。RPG『イリスのゲーム』の作者です。

この記事は作者のゲーム制作の動機、制作で意識したこと、反省点など、過去を振り返るために作成しました。

要するにほぼ自分の為ではあるのですが、ノウハウを残すことでゲームを作成する方への一助になればと思い、記事を作成しようと思った次第です。
もちろん本作が好きだという方、なんとなくノリで来た方も大歓迎です。

表題に「①」とある通り、記事は何個か続きますが、しばらくおつきあい頂けると幸いです。

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本題に入る前に思い出話

作者が「プレスターンバトル」に触れたのは、もう7,8年近く前の事である。このシステムは、近年(※)の女神転生シリーズに採用されている戦闘システムの名称だ。

※別に近年ではない

この「プレスターンバトル」というシステムでは行動権というものが存在し、1つの行動(攻撃・スキル・アイテムなど)をするたびにこの行動権を消費していく。

このシステムで特徴的なのは、敵の弱点を突く・クリティカルヒットを行うといった特定のアクションを行うことで行動権が増える仕組みだ。うまく戦略がハマると攻撃しながら行動を増やすことが可能なのである(無限ではない)。

つまり擬似的に「ずっと俺のターン!」が味わえるシステムなのだ。

だがこのシステムは敵側にも適用されており、こちらの弱点を突かれると一気に形勢が逆転されるケースも珍しくない。攻勢時は敵を一網打尽に出来るが、油断するとあっという間に全滅させられるというスリルがある。

この敵を蹂躙する爽快感・死と隣り合わせのバランスは当時の自分にとってかなりの衝撃だった。

これまで自分がプレイしていたRPGの戦闘は、ドラクエといったゲームに代表されるようなLvを上げてキャラを育てボスに挑む、という素朴なスタイルの認識を抱いていたのだが、戦術を駆使して相手を完封するという体験は、それまでのRPGの価値観を覆した。

要するに「ぼくもこんなゲームつくりたい!!」と思わせるほどの完成度だったのだ。

かくして「ぼくのかんがえたさいきょうバトルのゲームをつくるぞ!」という野望が始まった。

そして「レベルを上げてボスに挑むぞ!」という子供は死んで、「敵をハメ殺してボロクソにたおすぞ!」という屈折した思考の人間が生まれた瞬間でもあった…

どんなゲームを作ろうか?

まずエターならない(※)ことを第一目標としていたので、あまり凝ったシステムは作らないと決めていた。

※エターなる…ゲーム制作が頓挫することを指す言葉/ゲーム制作者の敵

自作戦闘は誰しも憧れるものだが、身の丈に合わないゲーム制作はエターなるリスクが非常に高い。
だが自分が遊んでいて面白くないゲームを作っても意味が無い。

そのため、ツクールMV(※)デフォルトのシステムをある程度踏襲しつつも、自分の理想とするシステムに近づけるよう、自分がやれそうな範囲で努力することにした。

※本作のゲーム制作ツール「RPGツクールMV」のこと

幸い、RPGツクールMVには有志の方々がすばらしいプラグイン(※)を作成して下さっているので、これを利用しない手はない。

※既存のシステムを拡張できるRPGツクールMVに搭載された機能

…という事で、プラグインを探しつつ、自分の理想とする戦闘を目指していった。

コマンド入力って ちょっと面倒じゃないですか?

偏見はあるかもしれないが、昔のゲームはどうもコマンドの数が多い。
ここで言うコマンドとは、通常攻撃、魔法や特技、アイテムなど、戦闘中の行動手段を指している。

ゲームによっては魔法・特技でカテゴリが分けられており、目的の技を選ぶだけで手間が発生する。
序盤に習得するスキルは、威力や使い勝手の観点から終盤には使われなくなるため、スキル欄に存在するだけで鬱陶しい。
アイテムなんて、大量の所持品の中から目的のブツを探すだけでしんどい。
というか、そもそも威力の低い通常攻撃っていらなくね??

ああもうめんどくせえ!

…ということで出来上がったのが本作の戦闘システムである。

不要なものはとにかく削ろう

本作のシステムは、RPGにおいてあたり前の要素をとにかく削る、という方針で制作した。
実際に本作の戦闘画面を見ていただきたい。

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まず通常攻撃そのものを削り、戦闘における行動は待機を除き、すべてスキルの中に含めた。アイテムは存在すらしない。

スキルの数は6つに絞った。これには以下の狙いがある。

1.コマンド入力の手間を極力少なくする
2.全てのスキルを1ウィンドウで確認できる
3.数を絞ることで、スキルの取捨選択をプレイヤーに迫る

「1」は前節で述べたとおりテンポの良さを重視するためである。また本作は通常のRPGより難易度を高く設定しているため、ゲームの難しさ以外のストレス要素をなるべく減らしたかったのが狙いだ。

「2」については、項目をスクロールしないと全スキルが確認できないのは非常に不便であり、1ウィンドウに収まるようにしたかったのが一番の理由である。
なお厳密にはパッシブスキルがさらに下にあるのだが、頻繁に確認するものではないので利便性は問題ないと判断した。

「3」に関しては、強力なスキルすべてを使用可能にすると、戦闘が単調になってしまうからである。「彼方立てれば此方が立たぬ」といった状況は、プレイヤーを悩ませ、戦術を考える面白さが生まれる。
このような体験をぜひプレイヤーに味わって欲しかったのだ。

戦闘システムの方針が固まってきたところで、スキルの性能についてもう少し詰めていく。

MPとか気にせずバンバンスキルを使いたいよね!

ボス戦に備えるため、MP残量を気にしながらダンジョンを進むことに窮屈さを感じた経験は無いだろうか。ここで言うMPとは、スキルを使用するために必要な消費型のリソースを指している。

ローグライクゲームのようなリソース管理を主軸においたゲームであれば、それはゲームの面白さとして成り立つが、ごく普通のRPGにおいて、せっかく覚えた強力なスキルを惜しみなく使えないのはややストレスだろう。

そんなわけで、MPの概念はバッサリ消した。
MPを気にせず戦えることによって、気兼ねなくスキルを放つことが出来る。大技で敵を倒せるのは爽快だね! イヤッフー!!

…とまあ、色々述べたのだが、ボス戦前に回復ポイントがあったり、戦闘終了後に全回復するゲームもあるので、あまりリソースを気にすることなくダンジョン攻略ができるゲームも多い。

このような調整は、プレイヤーのストレスを軽減できるのでまったく問題無い。MPを無くすことによる問題は他にある。

クールタイム(CT)  ウェイトタイム(WT) の導入

MPが無くなるとどうなる?
強力な全体攻撃をぶっぱしまくるゲームになる(そりゃそうだ)。

テンポの良さを追求し、俺TUEEEEを楽しむゲームであれば問題ないだろうが、自分が求めるゲームは戦略性を重視する「ちょっと考える」ゲームである。
ならばMP以外の手段でシステムを構築するしかない。

消費型のリソース以外の手段で、スキルの使用に制約を設けるシステムを考えた結果「連発できないスキル」「発動に時間を要するスキル」を導入するのがよいと考えた。

本作では、このシステムを以下のように呼称している。
(※なおこのシステムは有志の方のプラグインを使用させて頂いている)

クールタイム(CT) …スキルの再使用に必要なターン数
ウェイトタイム(WT) …最初のスキル使用に必要なターン数

スキル使用の制約が発生することにより、コストの低い技を入れるか? それとも強力なスキルを中心にスキルを組むか? といった、戦術を考える面白さが生まれてくる。

なかなか自分の理想とするシステムに近づいてきた。
だがこの要素だけではやや物足りない。もっと自分の理想に近づけるため、もう少し他の要素についても煮詰めていく。

【余談】
ツクールにはTPという戦闘中に徐々に溜まるパラメータがデフォルトで用意されている。本作でも導入を検討したが、細かい数値管理を戦闘中に意識するのがやや面倒に感じたので不採用とした。

戦略性のあるバトルを目指す

情報は戦局を判断する重要な要素である。
本作の戦闘は、敵の行動と敵味方の行動順があらかじめ分かるのが特徴だ。

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敵味方には行動順を示す番号、そして敵の下には次の行動を表示している。

これらの情報が与える影響は大きく「素早い敵から仕留めるか?」「強力な攻撃を放つ敵を妨害するか?」といった駆け引きが発生する。

戦闘を有利に運ぶにはどのような手段を取るべきか、劣勢を覆すにはどのような一手を取るべきか、あれこれ思案するのは楽しいし、考えた戦略がハマれば快感だろう。
時にはボロ負けして戦略を練り直すのもまた一興である(え、違う?)。

なお各スキルにはアイコンが設定されており、初見でもある程度敵が使用するスキルの性質が分かるようにした。
ゲーム中では特に触れてないが、RPG慣れしている方ならなんとなく察してくれたかと思う。

こういった法則性のある要素は、ヒントになりうる情報をプレイヤー自身で見つける面白さが生まれるので、程々に入れておくといいアクセントになるかもしれない。

まとめ

だいぶ話が長くなってきたのでまとめに入る。
自分がつくりたかったゲームとは、

「テンポの良い操作性」
「ちょっと考える戦闘」
「戦略を構築するおもしろさ」

のあるゲームであり、そのようなゲームにするために、

「スキル枠の限定」
「クール(ウェイト)タイムの導入」
「行動順・敵の行動の可視化」

これらの要素で自分好みのゲームを表現した。
おおむね自分の理想とするシステムができたので個人的には満足している。

結果としてシンプルなシステムに仕上がりましたが、かなり試行錯誤の上このような形に落ち着いた感じです。

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