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【イリスのゲーム・制作記録②】エネミーをつくろう編

面白い戦闘をつくるためにはシステムだけでなく、それを活かすエネミーの設計も欠かせません。

プレイヤーを唸らせるような、そんな歯ごたえのある奴らを作りたい…!
そう考えながら設計していくと(主に作者への)ヘイトが溜まりそうなエネミーばかりが実装されていきました。

という事で今回はエネミーの設計方針について語りたいと思います。

物語のネタバレはありませんが、エネミーの取る戦術について解説があるので、見たくない方はスルーしてください。

どれだけつくる?

まず初めに、ダンジョン1エリアあたり5体のエネミーを作ると決めた。5体という数は「このあたりが妥当だろう」という感覚的に決めた値である。

少なすぎるとゲームが単調になってしまうし、多すぎるとプレイヤーの負荷が大きくなる。あと作る側も大変(重要)。

つまり適当に決めた値なのだが、結果的には丁度良い数字だったと思う。

パターンを決めて考える

いくら敵の種類を増やしたところで、似たような性能の奴ばかりではあまり意味が無い。

とはいえ、沢山のエネミーの種類を考えるのは大変な作業なので、ある程度パターンを決めて作っていった。
各エネミーの設計方針は以下のようになっている。

① 平均的なステータスのエネミー そのエリアの基準となる能力値を持つ
② 状態異常・デバフなど妨害行動を主とするエネミー とてもウザい
③ 特殊な攻撃を行うエネミー 他エネミーと組み合わさると脅威
④ 支援行動を行うエネミー 単体では脅威ではないが放置すると厄介
⑤ 強めの攻撃を放つエネミー ただし状態異常が効きやすいなど致命的な弱点を抱えている

③が少し分かりにくいが、他エネミーとのシナジー効果で脅威となるエネミーを指している。これは次節で詳しく説明する。

役割が重複したり、上記に当てはまらないエネミーも存在するが、概ねこのような構成となっている。

各々のエネミーは多種多様な特徴を持つが、長所短所を持ち合わせているという点ではほぼ共通している。強力なエネミーでも弱点を突くことで対処し易くなっている。

このような設計方針を予め立てたことで、エネミーの実装作業がかなり楽になった。

シナジー効果を意識しよう

エネミーの性能を考えるにあたって、単体ではそれほど脅威ではないが他エネミーとの組み合わせ次第で厄介になる…というシナジー効果を意識した。

前節で述べた「③ 特殊な攻撃を行うエネミー」がこれにあたる。
実際に例を挙げてみよう。

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画面上のガーゴイルは「滑空」という自身よりも敏捷の低い相手に威力が上昇するスキルを放つ。ガーゴイルの敏捷値は平均以下なのだが、右のハイドシーカーはこちらの敏捷を下げるスキルを放つので、厄介な組み合わせとなっている。

このようなエネミーに加え、強めの攻撃を放つエネミーを配置すると、

「厄介なこの敵から倒そうか…いや、コイツも放ってはおけないぞ…」

…と、プレイヤーを悩ませる状況が発生する。
この状況はとても理想的であり、戦闘を面白くする要素となりえる。

またこのような特徴から、同じ敵であっても組み合わせ次第でプレイヤーに驚きを提供できる、という面白さがある。

プレイヤーが行う戦術の対抗策をとらせよう

本作における状態異常・デバフの役割は非常に大きく、戦術次第で有利に立ち回ることが可能となっている。

だが毎度同じ戦い方で倒せてしまっては面白くない。敵を倒せる快感は、やりすぎれば退屈さを産む。

そのため、プレイヤーが取ってくるであろう戦術に対し、対抗策をとってくるエネミーを登場させた。
分かりやすい例では、

・状態異常が有効なエネミーと治療を行うエネミーを同時に出す
・HPの低いエネミーと味方をかばうエネミーを同時に出す

といったように、足りない部分を補う組み合わせを意識している。

このようなエネミーは非常に厄介だが、逆に言えば対処法が分かることで無力化することも容易であるといえる。
この性質は、本作の特徴である「パズルチックな戦闘」と非常にマッチしている。

その他の工夫として、反撃技を行うエネミーを配置することで「全体攻撃を連発しまとめて倒す」といった安易な戦法を取らせないようにしている。

総合すると、プレイヤーに対し考えなしに敵を倒すという選択肢を取らせないよう意識しながらエネミーを設計した。

【余談】
いきなり凶悪な連携を取るエネミーを出してしまっては、プレイヤーは対策を取るのが困難です。そのためプレイヤーが対策を立てやすくするために、そのような連携を取るエネミー群はダンジョンの後半に出現させています(まあ初見殺しな奴も居るけど)。

ダンジョン前半ではエネミー単体の特徴を覚えてもらい、後半からシナジーのある組み合わせを出現させ、難易度を上げる。言うなれば、練習問題から応用問題を解かせるようなゲーム性を意識しました。

さいごに

以上が本作におけるエネミーの設計方針でした。

それぞれのエネミーに細かい調整を行ったため、かなりの時間を要することになりましたが、その結果、密度の高い戦闘を提供できたと思っています。

ゲームにおけるザコ戦は「めんどうくさい」と捉えられがちですが、私はザコ戦が楽しいゲームのほうが好きです。

本作はザコ戦でも気の抜けないバランスにしました。
これはダンジョン攻略中も常に全滅する緊張感が漂うゲーム性を目指したかったため、そのような調整を行っています。

決して楽な相手ではありませんが、戦略を駆使して敵の連携の隙間を突くという体験は、プレイヤーに対しゲーム攻略の達成感を提供できたのではないかなと思います。

「ザコ戦はスルーされるもの」ではなく、ザコ戦・ボス戦を含めて総合的に楽しめるようなゲーム性を目指したいな…というのが作者の考えです。

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