クライミングと肘の痛み

肘が痛いことを経験したクライマーは多いのではないでしょうか。

海外の報告では、男性クライマーは指→肩→肘の順で障害の発生率が高いです。(2022,M Jakub)

多くの肘の痛みは、登っている時は痛くない→登っている時も痛い→日常生活に支障が出る

というように進んでいく印象があります。

この肘の痛みの正体は何なのでしょうか。

多くの報告では、オーバートレーニングによる外側上顆炎とされています(https://imis.sportsmed.org/aossmimis/stop/Articles/Rock_Climbing_Injuries.aspx?WebsiteKey=22144c04-3260-4510-b318-8b5768345a42)
いわゆる「内側型野球肘」「ゴルフ肘」です。
海外では「クライマーズエルボー」なんていうふうにも呼ばれているそうです。

名前は同じ内側上顆炎でも、発生機序は異なります。
野球肘やゴルフ肘は、肘関節に対する外反モーメント(内側が伸ばされる外力)が要因とされていますが、クライミングの場合は、浅指屈筋による張力が要因であると考えられています。

Thanks visible body.

浅指屈筋はクリンプ、ハーフクリンプで強く活動する筋肉です。
上腕骨の内側上顆に付着して、2〜5指へ走行します。この付着部がキーポイントです。内側上顆に付着する筋は様々ありますが、この浅指屈筋は内側側副靱帯への付着を持ちます。(この靭帯に関しても色々ありますが、この記事ではそちらには触れずに進めます)
特に2指(人差し指)と5指(小指)の繊維は靭帯の深層へ付着し、3指(中指)と4指(薬指)は浅層へ付着します。

この深層への付着は、靭帯の硬度(張力)を高くします。

これが浅指屈筋が痛みの要因になる理由のひとつです。

もちろん、エコーで筋の評価をすると、靭帯では無く浅指屈筋そのものが傷んでる場合もあります。

浅指屈筋は野球肘の場合、肘の内側を安定させるスタビライザーとして活躍しますが、クライミングの場合は張力を与えすぎる(使いすぎる)ことによって、痛みに繋がってしまう、ということになります。

肘の内側を構成する筋は他にもありますので、また別の記事で紹介していきます。

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