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コロナ対策で米国が超金融緩和をしてもドルが買われる理由は?

※こちらはオンラインセミナー「超実践FX~マネ育トレーニング」の講演内容をベースにしています。

<マネ育相談BOXに寄せられたご質問>
今回のコロナショックに対するFRBの金融緩和は日銀やECBに比べるとかなり積極的に感じますが、それでもドルが買われるのはなぜでしょう?

中銀の新型コロナウイルス対応

各中銀の新型コロナウイルス対応をまとめました。

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ドル高VS円高

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まず、世界的なショック「有事」が起きると「有事のドル買い」の「リスク回避の円買い」の言葉通りにドル高・円高に進む傾向があります。
今回の新型コロナ懸念では実際にドル需要が拡大しました。

リーマンショック時の為替相場とコロナショック時の為替相場

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なお、リーマンショック時を振り返ると、円高のイメージが強いかもしれませんが、実際にはドルインデックス(主要通貨に対する米ドルの価値を指数化したもの)は上昇していました。
つまり、日本円も米ドルも「買われている」状態でしたが、円がドルを上回るほど買われていた為、リーマンショック後は結果的にドル/円相場は下落(ドル<円)したのです。

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そうなると気になるのは、リーマンショック時と同様にドルインデックスも円インデックスも上昇しているにも関わらず、今回のコロナショックを受けてなぜドル/円相場は上昇(ドル>円)しているかという事です。
リーマンショック時の2008年と今回とでは何が大きく異なるのか見てみましょう。

2008年と2020年の違い

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まず、2008年は円キャリード全盛期でした。
いわゆる資金の借入を金利の安い通貨(日本円)で行い、そして金利の高い他の通貨や金融商品を買って金利差の分収益を得る、という資金運用が活発に行われていました。
これは市場が安定を保っている間はいいのですが、一度金融市場に不安が広がると、そのキャリートレードを解消する動き、つまり円売りの反対である円買いを行うことが非常に多くなるため、急激な円高が起こりやすいのです。
これが、リーマンショック後の円高を後押しした、1つ目の理由と言われています。

2つ目の大きな理由として、貿易黒字があげられます。
日本は当時は貿易黒字、つまり輸出が輸入を上回る状況でした。
貿易黒字が増えると、その分相手の国から受け取る外貨が増え、それを日本円に交換するために外貨を売って円を買うことになるので、円高へとつながるのです。
そのほか、日本は対外純資産が大きいことも円高要因(金融市場にショックが起きた場合、日本の投資家が大量に売って資金を日本に引き上げる動きが誘発されやすい)と考えられています。
これらを背景に2008年当時はドル買いより、円買い圧力の方がかかりやすかったのかもしれません。

ただ、2008年以降はどの通貨も低金利になっている為、円キャリートレードも控えめになっています。
つまり、円キャリートレードが縮小すれば、有事の時もその巻き戻しとしての円買いが限定されると言えます。
また、貿易収支が赤字に転じている事も過度な円買いを抑制させ(貿易赤字は輸入超過を意味するため、輸入企業による円売りドル買い需要が優勢になることで円高が抑制される)、結果的に今回のリスクオフの局面では「ドル>円」へと動いたのでしょう。

おわりに

超実践FX~マネ育トレーニングの最新号では「コロナショックに対して米国が積極的に金融緩和をしてもドルが買われる理由は?」のタイトルで「ドル/円3月レビュー~パンデミック&中銀利下げ合戦!~」「ファンダメンタルズドリル「安全資産が全部売られてドルはどうなった?」「外為短観3月アンケート調査「個人投資家のトレードスタイルを調査しました」」「マネ育相談BOX「コロナ対策で米国が超金融緩和をしてもドルが買われる理由は?」と盛りだくさんの内容でお送りしています。

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