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写真額装の現場ノート #002 兼子裕代「Apparence」(Boxフレーム)

意識が外れた時に立ち現れるもの

米国カリフォルニア州オークランド在住の写真家、兼子裕代さん。日本での展覧会では過去に何度か額装を担当させていただいています。兼子さんの作品は、家族で温泉に入る様子を撮った「Sentimental Education」も神々しいほど美しくて好きなんですが、代表作といえば歌を歌う人々を撮影したシリーズ「Appearance」だと思います。人はレンズを向けられると、どうしても意識してしまうものですが、この作品の面白さは、歌を歌うことでその意識が外れ、表情や身振りに何かが立ち現れる(appear)様子を捉えているところだと多います。

ギャラリー展示と白いフレームの関係

さて、この作品を先日大阪のギャラリーThe Third Gallery Ayaでの展覧会に合わせ額装しました。と言っても、Appearanceの額装はここ数年間に開催された展覧会では、基本的に全て同じ「つや消し白塗装の木製Boxフレーム」に統一しています。

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兼子裕代展「Appearance」@The Third Gallery Aya
©Hiroyo Kaneko

白いフレームは、特に現代のギャラリー展示においては、額装に極力意味や文脈を持たせたくない場合に用いることが多いと思います。展示風景を見てみると分かるかもしれませんが、現代のギャラリーはホワイトキューブと呼ばれるように、基本的に白壁が多いです。そこに白いフレームで展示するとフレームは壁と同化し、イメージが素直に全面に出てきます。

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