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エクスパンス-巨獣めざめる- シーズン1(2015年/アメリカ) ネタバレあり感想 硬派なSF描写で描かれる、23世紀の太陽系を取り巻く巨大な陰謀と、それに立ち向かう人達の物語。


※2019年7月25日に『趣味と向き合う日々』に掲載した感想記事の再掲修正版です。


硬派な演出で描かれる宇宙を舞台にしたSFドラマ。 

本来シーズン3で打ち切られてしまう予定が、ジェフ・ベゾスが原作のファンだったらしく、アマゾンに拾われアマゾンプライムの独占作品としてドラマシリーズが復活したという面白い背景のあるドラマです。


〘エクスパンス-巨獣めざめる-〙

(The Expanse)

エクスパンスS1

画像引用元:Amazon https://www.amazon.co.jp

シーズン2の感想記事はこちら↓↓↓


以下、シーズン1全体のネタバレを含む感想記事です。

 

■ストーリー
 

23世紀の太陽系では地球と火星が一触即発状態で超険悪。

そこにベルターと呼ばれ内惑星系から劣った扱いを受ける人々による勢力"OPA"も加わり、太陽系が戦火に包まれそうなギリギリの状況の中、更に未知の宇宙文明に由来する兵器の存在が示唆され始めいよいよ世界が大混乱へ。

 

 

■内容
 

政治劇と探偵ミステリー、そして宇宙を舞台にした冒険活劇風の3つのストーリーラインを軸に、地球と火星、小惑星帯のギリギリの均衡関係を崩そうとする謎の勢力と、その陰謀に迫るSFドラマ。

特に冒険要素が強く、近未来かつ技術的に繋がりのありそうなリアリティある世界観を堪能できます。

 サブタイトルの巨獣についてなのですが、一応シーズン2辺りまで観れば何を指しているのかは分かるかもしれません。そもそも原作小説の第1巻の和訳タイトルが”巨獣めざめる”だったらしいので、シーズン2以降の物語でもこのサブタイトルが継承されているのはちょっと違和感を覚えるかも。

 

 

■感想(ネタバレあり)
 

物語の面白さはもちろんなんですが、昨今のSFドラマやSF映像作品と比較しても、このドラマの持つリアリティは群を抜いたものがあると思います。

それは宇宙船の航行する挙動であったり、真空や無重力空間の演出や、戦闘に使用される火器類の描写、とにかく今と地続きの世界である事を感じられるようなリアルな見せ方が多くて、ここが一番個人的に魅力に感じる部分でした。

そこに映る未来世界のあらゆる要素に説得力を持たせている感じで、だからこそ外宇宙文明の齎した謎のプロト分子の異常性が異常に際立つんだと思います。

シーズン1ではプロト分子は終盤も終盤まで登場しないので、あくまでそれは謎の一端として機能しているんですが、それもまた、現実の延長に在りそうな世界で起きた未知との遭遇というワクワク感に繋がりましたし。



全10話構成の中で政治、捜査、冒険の三要素が描かれるので、非常に密度の濃いドラマだと思います。 

刑事のジョー・ミラーは、行方不明の少女ジュリーを捜索する内に、彼女の不自然な失踪に疑問を抱き、その謎を追います。

ミラーは映画”ミスト”の主人公役で有名なトーマス・ジェーンが演じています。
 国連所属の政治家アヴァサララは、火星がひそかに開発したとされる新技術と、その裏にある新兵器の存在を知り秘密裏に調査を始めます。

ドラマ”24”シーズン4でテロリストの妻やってた人。
 氷運搬船カンタベリー号のクルーであるジムと4名の仲間は、救難信号を発していた謎の船の救助作業中にカンタベリー号を所属不明のステルス船に破壊されます。

帰る船を失ったジム達は救いを求めて宇宙を彷徨う内に太陽系内の対立構造に巻き込まれ、それを阻止するべく陰謀に立ち向かいます。

ジム・ホールデンとその仲間達が三軸ある物語のメインになっていると思います。
 

 

異なる三者の物語とそこに配置された一見関連性の無さそうなそれぞれの謎が、エピソードが進むにつれどんどん一つの陰謀に繋がっていくのが最高に面白いです。思い返すとシーズン1はしっかり目な群像劇なんですね。

 三人の主人公がそれぞれ追っていた謎の先には、太陽系外から飛来した新種の生命体とそれを用いて人類救済を謳う組織がありました。

 この新種の生命体はプロト分子と呼ばれ、シーズンを重ねる毎にどんどんその異常性を発揮していきます。シーズン1はプロト分子そのものを追う物語なのであまり活躍しませんが。

 


特にジム達カンタベリー号の生き残りを描いたパートが好きでした。

後に火星軍所属の船を拝借しロシナンテ号と名付けて、この船でプロト分子に立ち向かうようになりますが、 とにかくシーズン1での彼らはひたすら冒険していて、そこが良いんですよ。往年のスタートレック感と言いますか。

ロシナンテ号が物語を主導しているとも言えます。
 

 ジムと共に旅するクルーもとても個性的です。

実は元OPAでどう考えても日本人な名前のナオミ・ナガタちゃん、主人公サイドに居ていい感じでは無い狂気をチラつかせる謎の男エイモス、元火星軍で仲間思いのアレックス。

序盤でもう一人いた医療担当が早々に超電磁砲の餌食にされ死んでしまうので、残りのクルーも突然死ぬんじゃないかと中盤辺りまでヒヤヒヤでした。

 


小惑星エロスが舞台になる最終盤で、ようやくロシナンテ号のクルーと刑事ジョー・ミラーは合流し、話が繋がった事をビジュアル的にも示してくれます。

この二者の対比も中々面白いです。
 

ただ、この辺りになるとアヴァサララの格落ち脇役感が少し漂っていました。

エロスは既に星全体がプロト分子の実験場であり、ついでに言えばもうプロト分子の覚醒に巻き込まれ、星全体が完全に手遅れ状態。あちこちに未知が蔓延る魔境に。

終盤の展開は、このエロスからの脱出に焦点が当たる為に、ジムとジョーの二人の活躍が増える一方、その裏で頑張っているアヴァサララの影がどうしても薄くなっちゃいます。

アヴァサララもプロト分子の実験に国連事務総長が関わっていた事を暴いたり、めちゃくちゃファインプレーしてるのに。

ただ、シーズン1で控えてた反動がえぐかったのか、 シーズン2以降のアヴァサララはマジでおもしろいキャラに豹変してて好きです。

 


最終盤はエロスで起きている異常事態はとりあえず置いといて、とにかく脱出!!という話なので、プロト分子そのものに関する掘り下げはかなり薄かったと思いました。

プロト分子はこの物語の謎の根幹であり、地球と火星の戦争の火ぶたを切りかねないほどの力を秘めた存在なのに、その恐ろしさは殆ど伝わってこない、けどちょっとやばそうだよね程度の演出になっていたと思うんですよね。  

 

 

■〆
 

個人評価:★★★☆☆

 

レールガンの描写であったり、星間航行する船の飛び方であったり、とにかく何かとリアリティを感じられるSF作品です。

その中で三人の主人公が、一見するとそれぞれ全く別の問題に取り組み、次第にそれがプロト分子という一つの存在に収束していく過程を追う楽しさは中々のものでした。面白いです。


あと23世紀のパチンコ屋出てくんの地味におもろい。


シーズン2の感想記事はこちら↓↓↓

ではまた。


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