見出し画像

医師が大学病院から自力で未払い残業代約160万円を取り返した体験談〜知識ゼロから始める残業代請求〜【4.3万字】

私は元大学病院勤務の医師です。

大学病院勤務時代は、残業すれど残業すれど残業代はつきませんでした。
でも、大学で「残業代」なんて言葉を口にするのはタブーです。

大学病院で週5〜7で働いても、大学からの給与は月収数万円でした。
それ故、外勤して何とか食いつないでいました。

最近何かと話題の「無給医」ではありませんでしたが、言うなれば「ほぼ無給医」、もしくは「薄給医」でした。

このような境遇にある先生も多いと思います。

『医師はサービス残業当たり前』
これがこの国の暗黙の了解、だそうです。
"Why Japanese doctor!?"なんて声もどこかから聞こえてきそうです。

『はたらけど はたらけどなお わがくらし楽にならざり ぢつと手を見る』とは石川啄木の名歌ですが、大学病院勤務医もまさにこの状況にあると言えるでしょう。

もっと言うと、これは大学所属の医師に限った話ではないはずです。
日本全国、多くの勤務医の先生がそれに近い状態にあるんじゃないかと思います。

実際、友人医師たちに話を聞いても、ネット上のドクターの声を見ても、ホワイトな職場を探す方が難しいのが現状かと思います。

私は、とあるきっかけがあって、ある時、大学病院相手に未払い残業代(未払い賃金)を請求することにしました。
(※とあるきっかけについても本編で説明しています)

紆余曲折を経て、結果、無事に大学病院から半年分の未払い残業代約160万円を取り返すことができました。
(なぜ半年分だったか、についても本編で)

その一部始終を、本noteに書きました。

内容としては、まずは「どういった流れで未払い残業代を請求し、取り返したのか」という部分について、詳細に記載しています。

具体的には、

・労働基準監督署や大学病院側との実際のやり取り
・どのように証拠集めをしてどのように請求したのか
・請求する過程で調べたこと、考えたこと

など含め、自分の持てるものは全て漏らさず詰め込んでいます。

そのほか、残業代請求の経験者として、これから残業代請求をされる方に向けて、

・残業代請求までの各ステップでの注意点や知っておいた方がよいこと
・残業代を勝ち得た後の注意点

などについても詳しく書いています。


はっきり言って、これはパンドラの箱を開けてしまうことになるかもしれません。

「医師が残業代を請求するなんて、けしからん」
「それは言わない約束じゃないか」

という意見も当然あるでしょう。
(このnoteをお読みの方はそういった方は少ないことを願いますが...)

それでも、働いたのにそれがなかったことにされるなんて、おかしいものはやっぱりおかしい。

身を粉にして働くあまり、心身ともに疲弊しているドクター、中には心身を完全に壊してしまうドクターも後を絶ちません。燃え尽きてしまうドクターだっています。

本noteが、そういったドクターにとっての、一筋の希望の光となることを願っています。

本noteは、全体で【4.3万字】の大ボリュームとなっていますので、「未払い残業代があって、残業代の請求について興味がある」というドクターにとっては、大いに参考になるかと思います。

また、忙しいドクターのためにも、色々調べたりする時間を大幅に短縮していただけるような内容となるよう、知りうる全てを詰め込みました。

4.3万字なんて、これまでの人生で最も長い文章を書きました。
もう、ほぼ本です。
魂を込めて書いたので是非読んでいただきたいです。

本noteは前半に、私が大学病院から残業代を取り返すまでの全記録、後半に残業代請求をする上で知っておいた方がいいこと、注意点等を仔細にわたって解説している、という構成になっています。

特に、前半の体験談パートに関しては、「その時どのように考えて、どのように動いたのか」を一人称目線で記載していますので、臨場感をそのままに、残業代請求の過程をお読みの皆様にも追体験していただけるようになっています。

有料にしていますが、ドクターの皆様の未払い残業代(=債権:お金を請求できる権利)はだいたい数十万〜数百万に上ると思いますので、それを取り返す参考になるのであれば、余裕でペイすると思います。

本記事には、大学病院相手に残業代を請求して取り戻した体験談(と解説)が書かれていますが、もちろん、相手が大学でなく、市中病院であっても、参考になると思います。

本記事を執筆している最中にも、「論文執筆や学会準備等で手当支払われず…岐阜市民病院で医師への残業代が未払い 4億6千万円余を追加支給へ」というニュースや、(これは病院の話ではありませんが)「24国立大法人、教員に残業代未払いで是正勧告 計15億円超」というニュースが飛び込んで来ました。

時代は少しずつながら、確実に変わってきています。
この追い風に乗って、これからどんどん医師も残業代を請求する世の中になるんじゃないかと思います。

大丈夫です。
残業代の支払いは法律に規定された義務です。

本noteは、残業代を請求しようか考えているドクターにとって、必ずや役に立つと思いますし、これを読んでいただければ、知識ゼロからでも残業代請求ができるようになります。

自分で言うのも憚られますが、残業代を請求した医師の体験談と解説で、ここまでがっつり書いてあるものは(後にも先にも?)他にないんじゃないかと思います。

残業代を請求したドクターは世にはいると思いますが、その体験や解説を4万字以上書き上げるのは、自分のように暇な人間じゃないとできないからです。笑

それでは、本編です。

【前半:未払い残業代請求の体験談】きっかけは突然に

ラブストーリーと未払い残業代請求のきっかけは、突然訪れるものです。

あれは、春の足音が聞こえようか、そんなある日のことでした。

ある時、こんな噂が医局内を駆け巡りました。

ここから先は

40,602字

¥ 1,980

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?