Sibelius←→Finaleのデータ変換を検証①

 楽譜作成にはSibeliusかFinaleを使用している方が多いと思いますが、それぞれのデータをやりとりしたい場合のMusicXMLを介した変換についてサクッと検証していきます。まずはSibeliusで作成したスコアをFinaleで読み込んでみます。このあとFinaleの方で修正をし、完成したものを逆にSibeliusで読み込んで双方向の変換について検証してみたいと思います。
(まだ制作途中ですので記譜、レイアウトの不備は御容赦下さい。生楽器の編成になっていますが、この後Logic Proに移して製作する為アーティキュレーション、発想記号等はちゃんと書いていません・・・実際に演奏で使用する楽譜とは違う記譜をしている部分もあります。)

DAW←→楽譜制作ソフト間のデータのやりとりも、気が向いたら検証するかもしれません。

作業環境
PC Mac Book Pro 13inch
OS Mojave 10.14.6
Sibelius Ultimate バージョン2019.5 build 1469
Finale 26.2.2.493

 Sibeliusで作成した元のスコアとMusicXMLでエクスポートしたファイルをFinaleで読み込んだもの(問題点の箇所に赤で番号を振ってあります。)
それぞれのPDFを載せておきます。パッと見てだいぶ見た目が違うのがわかるかと思います。それでは順を追って説明していきます。

ページの余白

印刷して比べてみたところ反映されていないようです。下の余白に関してはSibeliusには五線の間隔の自動調整機能がある為、ページごとに変わるので仕方がないのですが左右と上の余白は反映して欲しいところです。
(ページのレイアウト関連については改めて深掘りしたいと思います。)

テキスト

 まず目につくのはタイトル(※1)だと思います。位置が随分ずれているのは指定方法が違うのに加え上記の余白も変わっているのでしょうがないのですが、装飾のアンダーライン指定が消えてしまっています。(太字設定は反映されています。) あとサイズが随分違うのはSibeliusの『テキストスタイルの設定』が反映されているようです。書き出した場合は初期値が反映され、後からテキスト>フォーマットで調整したものは反映されていないようです。こちらは『テキストスタイルの設定』でサイズを変更するようにして、個別にサイズ等を変えたい場合は新規のスタイルを追加で対応可能でしょう。

作曲者名(※3)のようにヘッダーで設定したものがフッターになってしまう原因と対応策は後ほど調べてみます。 スコア上で非表示にしているパート譜用のヘッダー、フッターは入力し直す必要がありそうです。

小節番号、リハーサルマーク

 元のスコアでは1小節目とリハーサルマークの振ってある小節以外の全ての小節に番号を振っていましたが(※2)、変換後は1小節目以外の段頭のみの表示となっています。Fineleではリハーサルマーク部分で非表示にする設定はないので同じ表示にするには各セクションごとに小節範囲を設定の上「範囲内の最初の小節番号を非表示にする」と「間隔を指定」をチェックして「1小節ごと」にし、「選択範囲の最初の小節番号」をセクションの最初の小節番号に設定する必要があります。長い曲では同じ表示にするのが意外と面倒かもしれません。
 リハーサルマーク、テンポ記号等のスコアでは一部の段に表示し、パート譜では全パートに表示するテキストをSibeliusで「大譜表テキスト」と呼んでいます。Finaleでは「発想記号カテゴリの設計」の「カテゴリ用表示セット」で設定するのですがスコアでの表示位置は反映されていません。Finaleの初期設定「最上段の5線」が生きているので各パートには表示されます。(スコアだけでは確認できませんが)

変形図形、ライン

Finaleでは変形図形、Sibeliusではラインと呼ばれる8va---- ,8vb----,スラー,クレッシェンド,デクレッシェンド等の図形をドラックで割りつける為、正しい位置に書かれていないものをよく見かけます。(特に終点)Sibeliusでは範囲を指定した後に割りつけるので基本的には正しい位置に割り付けられます。当然こちらの元のスコアでも位置は確認してありますが8va---- ,8vb----の終点はうまく変換できないようです。あと最後の小節の音がオクターブずれてしまいます。(※4)のようにタイで繋がっていれば元の楽譜を知らなくても気付きやすいですが(※10)のように繋がっていない場合は音形によって正誤はわかりません・・・今回は8vb----しか出てきませんが、8va----でも同様です。
(※9)の様なピアノのグリッサンド等は音符なしで記入することもありますが変換した際に消えてしまいました。Finaleで書く場合は非表示の音符へ割り付けられるのですがSibeliusでは音符を非表示にするとグリッサンドも消えてしまいます。符頭、譜尾を非表示にすると休符が表示されてしまいます。休符を非表示にしても消えてしまいます・・・(対応策検討中です)

楽譜用フォント

 楽譜用フォント( 音符、音楽記号、他)はそれぞれのソフト固有のフォントに変換されます。ただ一部の文字コードでは(※5)のように文字化けしてしまいます。38小節目のTrumpetパートに書いてあるフォルテピアノの様に読めても極端にサイズが変わってしまったりもします。変換先で元のフォントに指定し直しても文字化けは治らないので、新しい発想記号として作り直す必要がありそうです。

コードネーム

そもそもSibeliusとFinaleではコードネーム表記の仕組みが大幅に違うので互換性を保つのは難しいと思うのですが、Sibeliusの表記は
メジャー〜は ma,MA,maj,M,△から、マイナー〜は m,mi,Mi,min,-から選ぶ仕組みになっており、併用することはできません。変換した場合も(※6)のようになります。Sibelius→Finaleの場合はサフィックスを編集し直す必要があります。(※8)の様に割付位置がずれてしまうこともあります。(こちらは原因を確認中です。)
コード表記に関してはFinaleの方が遥かに自由度が高いのでFinale→Sibeliusの場合はさらに問題点が増えると思います。有名なところではSibeliusでは分数コードのベース音を下に書く設定がないので(C/Gの様な表記のみ)下に書いたベース音は変換するとただのテキスト情報になってしまい、移調等に対応しません。コードに関してはFinale→Sibeliusの回にもう少し詳しく検証いたします。

パーカッションマップ

読み込んだ状態ではドラム譜(※7)が全て音高がずれてました。確認するとスコアマネージャー内の「記譜スタイル」が標準になってます。こちらをパーカションにするか楽器をドラムセットにすると音高は正常な位置に戻りますがxの符頭のものが以下の感じに化けてしまいます。

文字化け

再生音もデタラメです。パーカッションマップを弄ってみても正しい表示にならないのでノートナンバーを確認してみました。36で入力しているKickが変換直後はなぜか71で鳴ってます・・・パーカッションマップを適用すると今度は64で鳴ります???パーカッションマップに64を追加して符頭を弄ってみても、それ以降に入力したものしか反応しません。Sibeliusのパーカッションマップの動作も若干怪しい部分があり問題の切り分けも難しいので残念ですがいったんこれについては諦めます・・・とりあえず見た目を正常にするだけでしたら、パーカッションマップを適用しない状態で5度下げれば良いのですが当然再生音はデタラメです。単純なものは入力し直した方が早いかもしれませんが、どうしても長く複雑なドラムを変換しなければいけない場合はMidiで書き出してパーカッションマップを設定かなと、今の所は思ってます。(Finale→Sibeliusの変換の結果も気になりますね)

ざっと気づいた点を書いてみましたが、一筋縄ではいかないことをおわかりいけたでしょうか?そのほかにも符幹の長さ連桁の角度等も結構違いますがこの辺はもう少し分かりやすい譜例がある時に検証してみたいと思います。


 



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