見出し画像

igA腎症の原因、所見、症状、現代医学の治療、東洋医学の治療(漢方など)をまとめてみました。


igA腎症とは?

IgA腎症は、小学校高学年以降によく見られる、比較的よく知られた慢性糸球体腎炎の一種です。通常、この病気では血尿や蛋白尿の症状が現れ、これらが学校検尿で発見されることがよくあります。時折、患者は目で見て真っ赤な血尿が出ることもあります。

腎臓は体内に約100万個の糸球体を有しており、これが尿を濾過する役割を果たしています。IgA腎症では、腎臓の糸球体内のメサンギウム領域と呼ばれる場所に、IgAと呼ばれる抗体が蓄積します。これが原因で炎症が生じ、蛋白尿や血尿が発生します。

igA腎症が起こる原因は?

"IgA"は、体を細菌やウイルスから守る免疫物質の一種で、主にのどや粘膜の表面で活躍します。例えば、風邪のウイルスなどが鼻や口に侵入すると、IgAがそのウイルスに結合して無力化します。

しかし、時折IgAは血液中で凝集することがあります。これらの凝集物が血流にのって腎臓まで運ばれると、腎臓の組織に攻撃を仕掛け、炎症が引き起こります。これが"IgA腎症"の原因です。炎症によって腎臓の細い血管が損傷し、血液が尿中に漏れ出て「血尿」が発生します。

炎症が進行すると、体に必要なタンパクが尿中に漏れ出し、「タンパク尿」が現れることもあります。

多くの腎臓病は、糖尿病や高血圧など、別の病気が引き金となって発症することが一般的です。ところが、IgA腎症の独特な点は、他の病気が原因でないことです。具体的な原因がはっきりしておらず、その謎めいた側面が特徴的です。病気が進行すると、治療法が限られており、重症な場合は完治につながる治療法がないため、この病気は指定難病に認定されています。

igA腎症の所見、症状は?

IgA腎症の症状は人によって異なりますが、一般的なものがいくつかあります。まず、最もよく見られるのが血尿(肉眼的血尿)で、尿が明らかに赤色を帯びていることがあります。さらに、蛋白尿が見られ、これは通常、健康な腎臓ではろ過されないはずのものです。

症状には他にも、腹痛や腎臓領域や腹部の不快感、痛みが含まれます。血圧の上昇や、体のさまざまな部分で見られる浮腫(むくみ)も症状として現れることがあります。

igA腎症の診断方法は?


医療機関を受診すると、再度尿検査が行われます。もし血尿やたんぱく尿が検出された場合、次に進んで「腎生検」と呼ばれる手順が行われます。これは、細い針を使って腎臓の一部を取り、それを顕微鏡で詳しく調べるものです。腎生検の結果に基づいて、腎臓病の有無や、病気がある場合は具体的なタイプ(たとえば「IgA腎症」など)が確定診断されます。

尿検査では血尿が検出された場合、腎がんなどの泌尿器系のがんが原因である可能性も考えられます。そのため、尿の詳細な調査が行われ、がんの有無を確認することが非常に重要です。医師の指導のもとでこれらの検査を受け、適切な診断を受けることが必要です。

igA腎症の一般的な治療法は?

IgA腎症の一部の患者では、自然に症状が治まることがある一方で、腎機能が健康で、たんぱく尿の量が少なく血圧も安定している場合は、経過を観察することが考えられます。ただし、尿たんぱくや血圧の数値が悪い場合は、腎機能の低下が進行しやすいため、その進行度に応じて治療が検討されます。

初期の段階では、免疫の働きを抑える治療が中心となります。例えば、「副腎皮質ステロイド薬を8か月間のみ続ける治療」や「扁桃を摘出する手術」「扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用」が行われることがあります。扁桃摘出術は、扁桃に歯周病菌などが感染してIgAが増え、腎機能の低下が進行しやすくなるのを防ぐことを目的としています。扁桃を摘出することによる影響はほとんどなく、まれに味覚異常や手術後の多量の出血が起こることがありますが、IgA腎症の進行リスクに比べて効果が大きく、早期であればそれだけで完治することもあります。

最新の治療法として注目されているのは「扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用」です。ステロイドパルス療法は、副腎皮質ステロイド薬の点滴を1か月おきに3日間続けながら、2日に一度のみ薬を服用する治療法で、6か月間行います。

IgA腎症に加えて高血圧がある場合は、ACE阻害薬やARBなどの降圧薬が処方されることがあります。これらの薬は、血圧を下げるだけでなく、たんぱく尿を減らす効果もあります。また、腎臓以外の臓器の炎症やがんがあると腎機能の低下が早まる可能性があるため、これらの病気がある場合は、それらの治療も同時に進められます。

生活習慣の改善も大切です。高血圧の有無にかかわらず、「減塩」は特に意識すべきです。腎機能が低下している場合は、1日に摂る食塩の量を6g未満に抑えるよう心がけましょう。高血圧がない場合でも、食塩の摂取が過剰な場合は、高血圧予防のために食生活を見直すことが重要です。また、肥満や喫煙は、腎機能低下やたんぱく尿の悪化につながる可能性があるため、肥満解消や禁煙にも心を配りましょう。

進行したIgA腎症の場合や、扁桃摘出術を受けても完治が難しい場合は、治療の主要な目標は透析治療の開始を遅らせることです。現在のところ、IgA腎症そのものを完全に治療する方法はないため、生活習慣の改善が重要です。

腎臓は薬の成分を体外に排出する役割も担っています。したがって、腎機能が低下すると、薬の効果が強まり副作用が現れやすくなります。市販薬を含む、持病や他の疾患で使用している薬に関しても、すべての情報を担当医に正確に伝えるようにしましょう。これにより、薬物療法の適切な調整が行われ、患者の状態に合わせた最良の治療が提供されます。

igA腎症で気をつけるべき事は?

IgA腎症の管理にはいくつかの気をつけるべきポイントがあります。例えば以下になります。

血糖値の管理: 血糖値を一定の範囲内に保つことが重要です。適切な食事療法、運動、および必要に応じて医師が処方した薬の使用を通じて、安定した血糖値を維持することが必要です。

血圧の管理: 高血圧は腎症の進行を加速させる可能性があります。医師の指示に従い、血圧を適切な範囲に維持することが重要です。降圧薬や生活習慣の変更がその手段になります。

脂質管理: 高コレステロールや高脂血症は、腎症の進行を促進する可能性があります。食事や薬を通じて脂質を管理し、良好なコレステロール値を維持することが重要です。

タンパク質の摂取: タンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけることがあります。医師や栄養士の指導に従い、適切なタンパク質の摂取量を調整することが大切です。

薬物の使用: 医師によって処方された薬物は、正確に使用し、定期的に検査を受けることが必要です。特に降圧薬や腎機能をサポートする薬は、適切な管理が重要です。

定期的な検査: 定期的な血液検査や尿検査を受け、腎機能の変化をモニタリングすることが必要です。定期的な医師のアドバイスを受けることも重要です。

健康な生活習慣: 喫煙や過度のアルコール摂取は腎機能に悪影響を及ぼす可能性があるため、これらの習慣を控えるか、止めることが望ましいです。

これらのポイントは、IgA腎症の進行を遅らせ、腎機能を保護するために重要です。個々の状況によっては、医師や医療専門家の助言を受けながら、適切な対応を行うことが大切です。

igA腎症の予後は?

IgA腎症の予後は一般的に厳しいものであり、診断から20年後には約半数の患者が透析や腎移植が必要になるとされています。実際、日本では透析が必要な患者の10%から20%がIgA腎症が原因であるとされています。しかし、近年では日本から生まれたIgA腎症に対する治療法の進歩により、予後の改善が期待されています。

igA腎症の東洋医学的な考えは?


東洋医学において、「腎」は単なる臓器だけでなく、生命の根源や体の基本的なエネルギー源を指す重要な概念です。腎臓は体の本質を支配し、生殖・成長・発育・エネルギーの蓄積などの重要な機能を担っています。

腎虚は、腎臓の機能が低下し、体のエネルギーが不足している状態を指します。これにより、疲労感や冷え性、尿の変化などが腎虚の典型的な症状となります。

IgA腎症では、免疫複合体により腎臓に損傷が生じ、結果として腎機能が低下します。この進行に伴い、腎虚が発生することがあり、腎臓のエネルギー不足によって体の調和が崩れ、さらなる症状が現れる可能性があります。東洋医学では、IgA腎症に対処する際には腎臓の機能を回復させ、体のエネルギーを補うアプローチが重要とされます。

東洋医学を取り入れるメリットは?

IgA腎症において、東洋医学を取り入れることにはいくつかのメリットが考えられます。ただし、東洋医学は西洋医学とは異なる視点やアプローチを持つため、個々の患者によって効果が異なる可能性があります。

個別化されたアプローチ: 東洋医学は全体的なバランスや個々の体質に注目します。患者の症状や体調を総合的に評価し、その人に合った治療法を提供するため、個別化されたアプローチが可能です。

症状の根本原因へのアプローチ: 東洋医学では、症状だけでなく、その背後にある根本原因にも焦点を当てます。体のエネルギーの流れやバランスが乱れていると考え、それを整えることで症状の改善を目指します。

予防と健康維持へのアプローチ: 東洋医学は病気の治療だけでなく、健康維持や病気の予防にも注力します。生活習慣や食事、ストレスの管理など、総合的なアプローチを通じて全体的な健康を促進することが目指されます。

身体と精神の一体性へのアプローチ: 東洋医学では身体と心のつながりが強調されており、精神的な状態と身体の調和を取ることが重要視されます。IgA腎症で出る症状がストレスや精神的な要因に由来する場合、このアプローチが有益とされています。

ただし、個々の状態によって適したアプローチを見つけるためには、医師や東洋医学の専門家との相談が重要です。自己判断せず、専門家のアドバイスを受けながら統合的なケアを検討することが大切です。


以上のような点から、東洋医学を取りれるメリットがあります。

東洋医学で考えるigA腎症にアプローチできるポイント


IgA腎症に対する東洋医学のアプローチは、体のバランスを整え、エネルギーの流れを調和させることが中心です。これにはいくつかのポイントがあります。

まず、東洋医学では腎臓が体の本質や基本的なエネルギー源を司ると捉えられています。この視点から、IgA腎症へのアプローチでは、腎臓の機能を強化し、腎虚を改善することが重要です。これには、食事や生活習慣の調整、鍼灸療法、漢方薬が活用されます。

高血糖による気と血の不調和を整えるため、体を温める食材や治療法も取り入れられます。適切な食事は個々の体質や症状に合わせ、体を温める効果が期待されます。

また、経絡(経絡系統)を刺激する鍼灸療法や指圧療法は、エネルギーの流れを促進し、体のバランスを取り戻す役割を果たします。適切な運動も重要であり、エネルギーの循環を促進し、全身の調和を助けます。同時に、深呼吸や気功などの呼吸法もストレスの軽減や気の流れをサポートします。

最後に、心身の調和を重視します。ストレス管理や心の安定が総合的なアプローチの一環となり、心身は一体であるという考え方が反映されます。

これらのアプローチは個々の状態や体質に応じて調整され、専門の東洋医学の医師と協力しながら個別の療法を選ぶことが肝要です。東洋医学と西洋医学の組み合わせた総合的な治療が有益とされ、患者の健康管理に役立ちます。

その他のigA腎症の治療法

鍼灸

鍼灸治療は、IgA腎症に対する伝統的な東洋医学の治療法の一つです。この治療法は、体内のエネルギーのバランスを整え、特に腎臓の機能を強化し、IgA腎症の症状や状態を改善することを目指します。

鍼灸治療では、経絡や特定のツボを刺激することで、気と血の流れを調整し、腎臓のエネルギーを活性化させます。これにより、腎虚の状態を改善し、尿の排泄や余分な水分の排除を促進します。

治療は症状の緩和だけでなく、浮腫や高血圧といった合併症にも効果が期待されます。特定のツボの刺激により、水分代謝や血圧の調整が行われます。鍼灸治療は全身の調和を重視し、患者の個別の状態や生活環境にもアプローチします。治療の進捗や体の反応に応じて、セッションが継続的に行われます。

ただし、鍼灸治療は継続的な管理が必要であり、通常は複数回のセッションが必要です。最適な治療プランを見つけるためには、医師との連携が重要であり、西洋医学の治療と併用されることが一般的です。患者と治療者とのコミュニケーションが密に行われ、個別のケースに合わせた総合的なアプローチが求められます。

漢方

IgA腎症に対する漢方治療では、伝統的な東洋医学の視点からアプローチがされます。治療の要点を簡潔にまとめると次の通りです。

漢方治療では、まず腎臓の陰の不足を補充し、腎臓機能の回復をサポートします。同時に、湿熱や血瘀といった体内の異常なエネルギーのバランスを整えます。

治療は全身の調和を重視しており、患者の体質や症状に合わせて総合的なアプローチが取られます。これにより、他の臓器や体のエネルギーのバランスも調整されます。漢方薬は通常、定期的に調整され、患者の体調や症状の変化に合わせて適切な処方が行われます。これにより、最適な治療効果が得られるようになります。

漢方治療は西洋医学の治療と併用され、総合的な医療ケアが重要です。よく使われる漢方には柴苓湯などがありますが、漢方は患者の体質に合わせて組み合わせるため、漢方薬店などに相談してみると良いでしょう。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/64/1/64_10/_pdf

東洋医学的にigA腎症の治療を始める場合は?

東洋医学的治療は、体質の調査から始まり、陰陽のバランスを整える食事療法や漢方などを用いて体全体の機能を改善します。健康管理と生活指導も重要であり、個々の症状や体質に合わせたアプローチが必要です。そのため専門家への相談が重要になってきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?